喧嘩をした。私と、あの三角が。あの幸ちゃんが言葉を失ってすごい顔でこっちを見ていたのはちょっと面白かったけど、正直楽しんでる場合じゃない。

喧嘩の理由は私が我儘だったから。普段なら、デートの最中に「さんかく〜!」と走り出す三角には慣れていたし、それすら愛おしいと思って見ていた。けれどその日は何故か突っかかってしまった。

三角のさんかくに対する特別な思いも全部、知ってたはずなのに。売り言葉に買い言葉。珍しく怒った様子の三角とその場で口論になってしまった。素直になれない私も悪いとは思う。

でも、デートの時くらい私を見てくれたっていいのに。そう思い始めたら、どんどん悪い方向に考えてしまう。きっと、仲直りしようとしても素直にごめんねなんて言えない。

「なまえ」
「っ…なに」
「ごめんね」
「何に謝ってるの」
「なまえにさみしい思いさせちゃったから」
「別に寂しくないし。三角のあれはいつもの事でしょ」

ほら、素直じゃない。可愛くないなあ、私。なんでこんなに冷たいことしか言えないの。自己嫌悪でじわりと目に涙が滲む。三角に背を向けて、顔を伏せる。

そんな私の小さな抵抗は三角には効果がなくて。腕を引かれて正面から抱きしめられる。三角の胸に顔をうずめれば、優しく頭を撫でられる。

「さんかくも大事だけど、なまえも大事なたからものだよ」
「……うそつき」
「なまえにきらわれたら、俺さみしいよ」
「……バカじゃないの」
「うん、ごめんね」

私がどれだけ冷たい言葉を吐いても全部受け止めてくれる。三角が私を大事にしてくれてることなんて、知ってる。うそつきって言ったけど、嘘なんかじゃないって知ってる。

「……私も、ごめん」
「うん。これで、仲直り、だね」
「ん」

相手が謝ってしまえば、なぜか自然と謝れるようになるのは何でなんだろう。私の顔を見て嬉しそうに笑う三角を見て、やっぱり三角には怒った顔よりも笑顔の方が似合うな、としみじみ思う。

「カズが言ってた通りだった!」
「三好さん?」
「カズがね、なまえちゃんはさみしかったんだよって」
「寂しくないから!」

また、あの男は余計なことを言ったようで。人の感情の変化に敏感なところは三好さんのすごいところだと思うけど、そういうことは言わなくていい。三角の言葉を半ば遮るように声を荒らげた私に三角がふんわり笑った。

「うそつき」


ALICE+