「ゆーき」
「…なに」
「何でそんな嫌そうな顔するのさー」
「なまえが俺の名前をそうやって呼ぶ時は禄なことないから」
「あっ、ひどーい!」

俺の言葉にケラケラと笑うなまえ。どれだけ素っ気なくしても、どれだけ冷たくしてもいつも俺の隣にいる。 前に、なんで俺に構うんだと聞いてみたら「だって可愛い弟が出来たみたいなんだもん!」だって。俺はアンタの弟になった覚えはないんだけど。

「で?何の用?」
「ここ!一緒に行こ!」
「は?なんで俺な訳?カップル割引使いたいなら一成と行けばいいじゃん」
「もー!カップル割引使いたい訳じゃないから!」

なまえが見せてきた雑誌には最近話題になってるケーキ屋の特集が組まれてた。ケーキと同じくらい大々的に書かれてる「カップル割引」の文字。というか、甘いものそんなに好きじゃないのに何で行きたがってるの。

こう見えてもお金に関することはしっかりしてるなまえは無駄な出費を好まない。だから、話題の店に安く行けるということに釣られたのだと思ってそう言えば不満そうになまえは唇を尖らせる。

「ねえ、行こうよー」
「何で俺なわけ…他にも行きたがってる奴いたじゃん」
「…幸と行きたいの」

ねえねえ、と袖を引っ張るなまえが俺の質問にほんのり頬を染めて答える。その表情に思わず言葉に詰まって、間抜けな声が出る。

「幸、こういうの好きでしょ?」
「まあ…嫌いじゃないけど…」
「だから、ね?行こ?」
「はあ…分かったよ。いつ行くの?」

雑誌に掲載されてた店内の写真を指差して首を傾げるなまえに否定ができない。確かにこういう雰囲気のお店は可愛いし、好きだ。俺の了承の返事にぱあっと顔を輝かせるなまえにドキリとする。

なまえがどうして俺を誘ったのかを考えて行き着いてしまった一つの可能性にぶわり、顔に熱が集まるのが分かった。もしこれが本当だとしたら、どうしたらいいんだ。真っ直ぐなまえを見ることが出来ない。

何だよ、これ。これじゃあ、俺がなまえの事を好きだって言ってるようなもんじゃないか。他人からの好意に鈍感ななまえをいつもバカだバカだと言ってたけれど、これじゃあ俺の方がバカだ。

「幸?顔赤いけど、どうしたの?」
「何でもない」
「何でもないって顔じゃないよ」
「うるさい。なまえにだけは教えてあげないから」
「なにそれ!なんでー!」

俺の顔を覗き込むようにして首を傾げるなまえから顔を逸らす。逸らした顔をさらに覗き込もうと追いかけてくるなまえにぴしゃりと言い放つと余計にうるさくなる。でも、まあ、教えてよー!と俺を追いかけてくる姿を見るのは、悪くない、かもね。

君にだけは教えてあげない


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