目が覚めたら、真っ白な部屋に立っていた。扉には「キスしなきゃ出られない部屋」と記されていて、隣には不思議そうな顔の三角。

そう言えばこの間、談話室でキスしなきゃ出られない部屋ならざるものがあるとかないとか話をしていた人達がいたっけ。隣にいるのが三角だからか、こんな非現実的な状況でも比較的落ち着いていられる。

「キスってほっぺでもいいの〜?」
「うーん。口って書かれてないしいいんじゃない?」
「じゃあ、はい」
「ん?私がするの?」

扉の文字を見て三角が首を傾げる。確かに口に、とは書かれていないから頬でも問題はないだろう。そう返せば私の身長に合わせて三角がしゃがみ込んで、頬を私に向ける。てっきり三角が私の頬にしてくれるものだと思っていたから少し驚いた。

「なまえがしてくれたら俺もしてあげる」
「1回で開くと思うけど…」
「俺がしたいからいいの!」
「はいはい、動かないでね」

私を見上げて笑う三角にまあ、いっかと笑って三角の肩に手を置く。目をつぶって待つ三角の顔を見た瞬間、今まで平気だったのに急に恥ずかしくなってくる。

睫毛長いんだな、とか、肌綺麗だな、とか。じわじわと顔に熱が集まるのが分かって、三角の頬への口付けが少し躊躇われた。いつまでたっても何もしない私を不思議に思ったのか三角がぱちりと目を開ける。

「どうしたの?」
「あ、いや、えっと…」
「顔赤いよ〜?だいじょーぶ?」
「だ、大丈夫!大丈夫だから目閉じてて!」

三角が突然目を開けたせいで、いつもよりも近い距離で三角と目が合う。何で、何でこんなに、ドキドキするの。私のタイプでも何でもないのに。頬にキスするくらい、何てことないと、思ってたのに。

意を決してゆっくりと三角の頬に唇を寄せる。あと少しで触れる、その瞬間ぱちりと目を開けた三角と再度目が合う。驚きで身を引こうとしたけれど、後頭部に回った手がそれを許さない。

近づいてくる三角の顔がスローモーションのようにゆっくり見えて、ぎゅっと目を閉じる。ちゅ、と音を立てて頬から三角の唇が離れる。後頭部に触れていた手が離れたけれどその場から動けない。

「なまえ?」
「な、なん、なんで…」
「びっくりした?」
「そ、そりゃ…びっくりするでしょ…」
「顔真っ赤にしてるなまえ、可愛かったよ?」
「はい…?」

私の動揺なんてものともせず扉に向かって歩いていく三角をすぐに追いかけることなんて、できなかった。いつもの柔らかい目じゃない、スッと細められた目に見つめられて胸が締め付けられた。なんで。なんで、私に、そんな顔、するの。

胸が締め付けられる理由は?


頬へのキス→親愛と厚情


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