ざわざわと周りの声で意識が浮上する。ゆるり、と瞼をあげるけれど眩しさに思わず顔をしかめる。何度か瞬きを繰り返してぼんやりした頭で状況を把握しようと辺りを見回す。隣では密が寝ていて、キッチンには臣くんが立っていて、スーツを着た社会人組と制服姿の学生組がわいわいとご飯を食べていた。

「朝…?」
「ん…なまえ?」
「おはよ、密」
「おはよ。寝れた?」
「うん。ありがと」
「そっか、よかった」

密と 二人でかけていたブランケットが床にぱさりと落ちる。肌寒さに目を開けた密がぼんやりした顔で私を見る。顔を見合わせて二人でクスクス笑う。あんなに怖い思いをしたのに、こんなにゆっくり眠れるなんて思わなかった。

「あれ?やっぱり部屋出ちゃった感じ!?」
「げ、一成…」
「げってひどくない!?かなしみ〜!」
「私の方が悲しいっての。部屋戻るの嫌だあ…」

再度眠り出した密の隣でぼうっとしていると、横から一成がひょっこり顔を出す。思わず口から出た声に一成がケラケラ笑って私の頬をつつく。その手を払って隣で横になる密の上にぐでーっと覆いかぶさる。下から重い、なんて失礼な声が聞こえてくるけど知らない。

「うー…何でこんなことに…」
「何かお悩みかな?」
「あず姉えええ…」
「おやおや、随分顔色が悪いね」
「あず姉の知り合いに霊媒師とかいないの…」
「うーん…。霊媒師か、どうかは分からないけどその手の類に詳しい人はいるよ?」
「…え、ほんとに…?」
「ほんと。その顔色じゃ、何かあったんだね」
「その通りです…」

密のお腹にぐりぐりと頭を押し付けていればぽん、と頭を撫でられる。顔をあげればあず姉が立っていて、私の顔色を見て目を丸くしていた。そんなに自分の顔色が最悪なのかと思ったのと同時に自分の部屋であんなことが起きればしょうがないかとも思った。色んな人と交流のあるあず姉ならもしかして、と半ば諦めながら事のあらましを話せば少し考えるような素振りのあと、にっこりと微笑んだ。

それからはあっという間で、その日中に約束を取り付けてくれたあず姉に連れられて向かったのはお洒落なバー。CLOSEと札がかかっているにも関わらず扉を開けて中に入るあず姉の後ろを恐る恐る付いていく。出迎えてくれたのはとんでもなく綺麗なお姉さん。ようこそ、と言ってふわりと抱きしめられる。物凄くいい匂いがした。すごい。

「何があったか、話してくれる?」
「え、っと…実は…」

お姉さんが出してくれたココアの入ったマグカップをぎゅっと両手で握りしめてぽつりぽつりと今までにあったことを話していく。うんうんと相槌を打って、時には背中を撫でながら話を聞いてくれるお姉さんに甘えてぽろぽろと言葉が、涙が溢れてくる。

「そう…怖かったわね」
「…ごめ、なさい…」
「いいのよ。そうね…なまえちゃん。その女性が部屋に現れた前の日、どこかに行った?」
「前の日、ですか…。友達と、遊びに行って、公園に行って…、?」
「それ、どこの公園か覚えてる?」
「天鵞絨駅の裏の路地を抜けたところにある公園です…。…あれ、?なんでそこに行ったんだっけ…」

お姉さんに聞かれたことに答えているうちに段々とその日の出来事が頭の中に蘇ってくる。けれど、何故その公園に向かったのか。その公園で何をしたのか、何があったのかは全く思い出せず、ずきずきと頭が痛むだけだった。そんな私のの手を取ってお姉さんがふわりと笑う。

「今から、その場所に行きましょうか」
「…え?」





全てが分かるまであと少し


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