飲み物を買いに海の家まで来た。そこまでは何もなかった、のだが飲み物を買って皆の元に戻ろうと足を向けた時だった。

「ねえねえ、一人?」

お決まり、と言わんばかりのセリフで声をかけてきたのは如何にも、な感じの男の人二人。こういうのは相手にするだけ無駄だとシカトを決め込もうとしたけれど、腕を掴まれてはそれも叶わない。

「離してください」
「めっちゃ可愛い水着だね」
「顔も可愛いし、俺結構好みかも」

どれだけ素っ気なくしてもニヤニヤと笑う男達にどうしようか、と思っていると聞き慣れた声が耳に入る。

「なまえさん!遅くなってすみません!…ってあれ?」
「咲也!もー!遅い!」
「あ?んだよ、このガキ」
「こんなガキより俺達と遊ぶ方が楽しいって!」

パタパタと駆け寄ってきたのは咲也。私の隣に立つ男達に目を向けた後、キョトンとした顔を私に向けてくる。咲也に関してはこの顔が演技なんだか、本気で言ってるのか分からない。けれど、咲也が来たことで掴まれていた手が緩む。チャンスだ、とその手を振りきって咲也に駆け寄って合わせろ!と目で訴えればさすが演劇バカ。私の意図に気づいてスッと立ち振る舞いが変わった。

「この人達、知り合いですか?」
「ううん、知らない。急に話しかけられた」
「すみません、僕の彼女がお世話になりました。なまえさん、行きましょう!」

さり気なく私を背中に隠して男二人と向き合う咲也に男達がたじろぐ。ペコリ、と男達に頭を下げてまくし立てるように話すと私の手を引いて颯爽とその場から立ち去る。呆気に取られたのか男達は反論することもなければ追ってくることもない。少し離れた場所で咲也の足が止まって、はあああ…と大きなため息が聞こえた。

「ふっ…くくっ…。ありがとね、咲也」
「ナンパなんて初めて遭遇しました…。あんな感じで大丈夫でしたか…?」
「うん、バッチリ。気づいてくれて良かった」
「なんだか舞台に立つ時より緊張しました…。ってああ!すいません!手…!」
「繋いだままだったね。まあ、いいんだけどさ」

目に見えて緊張した、という顔をする咲也に笑いかけるとふにゃりと咲也も笑う。聞けば、至さんみたいにスマートな大人をイメージしたらしい。確かにいつもの咲也と違ってちょっぴりドキッとしたし、男達から離れた後のギャップにもちょっぴりドキッとした。

「かっこよかったよ」
「ええっ!?」
「今日は一日私の騎士になってもらおうかな」
「俺でよければ任せてください!」

突然立ち止まった私に咲也が「どうしたんですか?」と振り返る。振り返った咲也をまっすぐ見つめて笑えば驚いたように手を顔の前で振って「そんなことないです!」と慌てる。そんな咲也の手を取って言った私の言葉に咲也は一瞬目を瞬かせた後、いつもの太陽のような笑顔で頷いた。

太陽と笑顔と騎士様


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