飲み物を買いに海の家まで来た。そこまでは何もなかった、のだが飲み物を買って皆の元に戻ろうと足を向けた時だった。
「ねえねえ、一人?」
お決まり、と言わんばかりのセリフで声をかけてきたのは如何にも、な感じの男の人二人。こういうのは相手にするだけ無駄だとシカトを決め込もうとしたけれど、腕を掴まれてはそれも叶わない。
「離してください」
「めっちゃ可愛い水着だね」
「顔も可愛いし、俺結構好みかも」
どれだけ素っ気なくしてもニヤニヤと笑う男達にどうしようか、と思っていると聞き慣れた声が耳に入る。
「俺っちの彼女に何か用っすか?」
「あ、んだよお前」
「何何?君の彼氏?」
「その手、離してもらっていいっすかね」
「ちょ、太一…!わ、あ!」
「俺っちの彼女はお触り禁止っすよ!」
「チッ…おい、行こうぜ」
「彼氏持ちなら初めからそう言えっつーの」
横から私の手を掴む男の手を掴んで、まっすぐ男達を睨みつける太一の横顔にドキリとする。男達が不機嫌そうに太一を見るけれどそんなのお構い無しに男の手を私から引きはがすとそのまま私を引っ張って正面から抱きしめる。背後から男達の声と立ち去る足音が聞こえて体を離せば焦ったような表情の太一と目が合う。
「大丈夫だったっすか!?」
「え、あ、うん…」
「手!赤くなってるじゃないっすか!」
「これくらい平気だよ」
「やっぱり俺っちも着いてくればよかった…」
「いやいや、太一が助けてくれたおかげでこの程度で済んでるんだもん。ありがとね」
「そんな…!ってああああさっきはごめんなさいー!」
「えっ、なにが…?」
「彼女、とか…その、抱きしめたり、とか…」
「時差すごいね。顔真っ赤だよ」
「み、見ないでほしいっすーー!!」
掴まれていた私の手を取って赤くなった場所をするり、と太一の指が撫でる。大丈夫、と言っても項垂れる太一の頬を両手で掴んで無理やり視線を合わせる。ありがとう、とお礼を言えば徐々に頬に赤みが増していく。そして、何かを思い出したかの様にぶわりと顔を赤くする太一にそれを指摘すれば両手で顔を覆ってしゃがみ込んでしまった。
「さっきの真剣な顔、かっこよかったよ。ああ言うのをギャップ萌えって言うのかもね」
「えっ!?本当っすか!?」
「うん。きっと女の子にモテるポイントの一つだね」
「よっしゃー!この調子でモテポイント増やして行くっすよー!」
「うんうん。頑張って」
「…まあ、でも俺っちはなまえちゃんにモテなきゃ意味無いんすけどね」
「何か言った?」
「なーんでもないっす!ほら!万ちゃん達待ってるっすよ!」
「あー確かに。早く行こっか」
しゃがみ込む太一に向かって声をかければパッと顔を上げてキラキラした目で見てくる太一の頭をふわふわと撫でて笑えば、立ち上がって両手を突き上げていた。これでこそ太一だよなあ、と思いながら天を仰ぐ太一につられて空を見る。真っ青な空に浮かぶ白い雲をぼんやり見ていれば太一が何かを言ったような気がして太一を見る。太一は少し頬を赤くして顔の前で両手を振って何でもない!と言った後、私の視線から逃げるように私の手を引いて歩き始めた。
夏の空と暑さと片思い
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