飲み物を買いに海の家まで来た。そこまでは何もなかった、のだが飲み物を買って皆の元に戻ろうと足を向けた時だった。

「ねえねえ、一人?」

お決まり、と言わんばかりのセリフで声をかけてきたのは如何にも、な感じの男の人二人。こういうのは相手にするだけ無駄だとシカトを決め込もうとしたけれど、腕を掴まれてはそれも叶わない。

「離してください」
「めっちゃ可愛い水着だね」
「顔も可愛いし、俺結構好みかも」

どれだけ素っ気なくしてもニヤニヤと笑う男達にどうしようか、と思っていると聞き慣れた声が耳に入る。

「おい、俺の連れになんか用か」
「ひっ…!こ、こいつ…O校の兵頭じゃねえか…!」
「つ、連れがいんならそう言えっつーの!」
「撤退早すぎ…だったら初めから来んなよ…」

私の肩に手を置いて男達をじろりと睨む十座に表情を引き攣らせて足早に立ち去った男達に思わず呆れた視線を向けてしまった。確かにフリーに見えた私にも非はあるのかもしれないが、あの手のタイプは連れがいると言っても引き下がるタイプではないことをよく知っている。

「大丈夫すか」
「うん、ありがと。助かった」
「っす」
「にしても、さすが十座だね。あの人達絶対高校生じゃないのに十座のこと知ってたよ。有名人だ」
「いや、んなことないっす」
「ま、でも穏便に済んでよかったよ。ケンカとかになってたら私、止めれる自信ないしね」
「さすがにこんな人が多いところでケンカはしねえ…多分」

男達が立ち去るのと同時に私の肩に置いていた手を下ろし、私に向き直る十座にお礼を言う。ナンパしてきた男達はどう見ても大学生で明らかに私と同じくらいの年代だったにも関わらず十座を知っていた。つまり、その手の界隈では十座の知名度は中々、ということだ。

どうせ有名になるならこれからはMANKAIカンパニーの兵頭って感じで有名になってくれたらいいんだけどなあ、なんて思いながら十座の手を取って先ほど飲み物を買った海の家に足を向ける。不思議そうな顔をしながらも手を振り払うことなくついてくる十座に小さく笑みが零れる。

「かき氷、奢ってあげる。お礼にね」
「お礼されるような程のこと、してないんで…」
「いいのいいの。こういう時はお姉さんに甘えなさい。何味がいい?イチゴ?」
「…っす。あざっす」
「うんうん。練乳もかけてもらおっか。すいませーん」

くるりと振り返った私の言葉に視線を迷わせる十座の頭に背伸びをしてチョップをいれる。とは言っても身長差のせいで私が背伸びしても届くのは頭じゃなくて額、なんだけど。イチゴ、と言えばわかりやすく目が輝いた為、財布を取り出して海の家のおじさんに注文をする。

「さーてと。今日は一日十座と一緒にいよっかな」
「?俺なんかより、太一とか…摂津とかといた方が楽しいんじゃ…」
「どんだけ万里嫌いなの。眉間、シワすごいよ」
「嫌い、ってわけじゃ…ない、っす」
「ま、十座と一緒にいたら変な男達も寄ってこないだろうし?」

かき氷をしゃくしゃくと食べる十座の隣で背中を伸ばしながら口を開けばスプーンをくわえたまま十座が首を傾げる。万里の名前を出すのにちょっとだけ渋る所とか、ちょっとだけ嫌そうな顔をする辺り、やっぱりお互い相手のことをライバル視というか気に入らないのかなと笑いながらそれを指摘すれば、気まずそうな表情に変わる。

「なまえさんが…それでいいなら俺は別に、」
「あ、ほんと?じゃあ今日一日よろしくね」
「っす」

空を見上げて太陽の眩しさに目を細めていれば隣から十座の声が聞こえて視線を向ける。少し考えるような素振りの後、ぽつりと呟くように口を開いた十座に再度お礼を言えば少し照れたような顔でかき氷を食べ始めた。

夏空と有名人とかき氷


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