飲み物を買いに海の家まで来た。そこまでは何もなかった、のだが飲み物を買って皆の元に戻ろうと足を向けた時だった。

「ねえねえ、一人?」

お決まり、と言わんばかりのセリフで声をかけてきたのは如何にも、な感じの男の人二人。こういうのは相手にするだけ無駄だとシカトを決め込もうとしたけれど、腕を掴まれてはそれも叶わない。

「離してください」
「めっちゃ可愛い水着だね」
「顔も可愛いし、俺結構好みかも」

どれだけ素っ気なくしてもニヤニヤと笑う男達にどうしようか、と思っていると聞き慣れた声が耳に入る。

「はーい、そこまで。俺の可愛い彼女チャンに何か用?」
「万里?」
「なんだよ男連れかよ」
「あったりまえだろ。むしろ、コイツが彼氏いないように見えた訳?…ってえ。何すんだ」
「なんで煽ってんのバカか」
「チッ…おい、もう行こうぜ」
「ったく、あいつらみたいなのがナンパなんて百年早えっつーの」

声と同時にふわりと体に腕が回ってきて、ガッチリ抱きしめられる。肩と腰に腕が回ってしまっている以上動かせる場所は首から上と足だけだ。加えて、肩に顎を乗せられてしまっては振り返ることも出来ない。というよりこれで振り返ったらキスしてしまう。それはちょっと避けたい。

男達の言葉に煽るような返事をする万里の足を踏みつければ小さな声で反論の声が上がる。同じように小さな声で怒ればへいへい、と言うように肩を竦めてみせる。万里のさっさと立ち去れよ、と言わんばかりの視線に耐えられなくなったのか舌打ちをしながら立ち去った男達に万里がべえっと舌を出す。

「んぐっ。…助けてくれるのはありがたいけどもう少し穏便に助けられないわけ?」
「助けてやっただけありがたいと思え。つーか、一人でふらふらしてんじゃねえよ」
「飲み物買いに来ただけじゃん」
「何のために俺らがいると思ってんだ。呼べばいいだろ」
「ええ…だって遊んでたし…」

男達が見えなくなったのと同時に私の体に回っていた腕が離れて、代わりに鼻を掴まれる。助けてくれたのはありがたいけれど相手を煽るような発言はケンカに発展しかねないからやめて欲しい、とジト目で万里を見るけれど、万里は私が一人で飲み物を買いに来たことにご立腹のようで怒られた。

「別に一緒に買いに来るくらい大したことじゃねえよ。お前があーゆーのに引っかかってる方が迷惑だっつの」
「うっ…それは…ごめんなさい…」
「分かればいーんだよ。ほら、さっさと行くぞ」
「あ、うん。万里、」
「なんだよ」
「ありがとね。助けてくれて」
「っ…!…おー」

ビシリと頭をチョップされて、素直に謝ればポンポンと頭を撫でられる。私の方が年上のはずなのに、なんだか年下扱いされてるようですこしムカつくけれど今回ばかりは私に非があったし、万里が助けてくれたことに変わりはない。

そう言えば、まだちゃんとお礼を言ってなかったなと思い歩き出した万里を引き止める。不思議そうな顔で振り返った万里にお礼を言って、笑いかければ一瞬固まった後、そっぽを向いて素っ気ない返事をされる。その耳が少し赤くなっていたのは暑さのせいか、照れているのかは聞かないでおいてあげようと思った。

挑発と不満と紅潮


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