目が覚めたら、真っ白な部屋に立っていた。あるのは扉だけ。そして唯一の脱出口である扉には『キスしなきゃ出られない部屋』の文字。その文字を見た瞬間、隣にたっていた天馬が声を荒らげた。
「はあ!?」
「うるさ…」
「なっ、!き、キスって、んな…!できるわけねえだろ!」
「私に言わないでよ…」
扉を指さして私に向かってぎゃんぎゃん騒ぐ天馬は恐らく、キスと言われて口にするものという方程式を成り立たせてしまったのだろう。これでもか、と言うほど顔を赤くしている天馬にさすが高校生だな、若いな、なんておばさんみたいな事を考えてしまった私は悪くない。
「別に口に、とは言われてないじゃん」
「…だ、だとしてもき、キスだぞ」
「ほっぺとかおでことかなら出来るでしょ?」
「…っ、で、きねえこともねえ、けど…」
「天才役者なんだから、ドラマの撮影だと思ってさ。ぱっとやって早く出よう?」
私から天馬にキスをするのはさすがに、こう、何だか犯罪臭というか何というか。仮にも成人間近の私が高校生に手を出す絵面なんてちょっと宜しくない。その点、天馬から私へのキスならまだ許される。けれど、あの天馬が素直にキスをしてくれるとは思わない。
だからこそ、今こうして天馬をその気にさせようと頑張っているのだが何かと理由をつけてやろうとしない。これだから幸にポンコツ呼ばわりされるんだぞ、と喉まで出かけた言葉を飲み込んで天馬の腕を引く。
「天馬が私にキスするか、私が天馬の口にキスするか、どっちがいい?」
「なっ…!?…〜っ!」
私の言葉に一気に顔が赤くなった天馬がわたわたと目に見えて慌て始める。少しして、意を決したように私の肩に天馬が手を置く。
「目、閉じろよ」
「ん」
言われた通り目を閉じればゆっくりと天馬が近づいてくる気配がする。額に熱が触れて、すぐに離れる。目を開ければ真っ赤な顔をした天馬が立っていて思わず笑みが零れる。
「なんだよ!これでいいんだろ!」
「うん。ドア、開いてるか確かめに行こう?」
私が天馬に想いを寄せているなんて、きっと天馬は想像すらしてない。私が一瞬だけ触れた熱にニヤつきそうになる口元を抑えて余裕の笑みを作っていたなんて、天馬はきっと知る由もない。いつかは、口に、ね?
今は、まだ
額へのキス→友情
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