目が覚めたら、真っ白な部屋に立っていた。隣には万里が立っていて、ひゅうっと口笛を吹いている。その口元が楽しそうに緩んでいるのは恐らく扉に記された『キスしなきゃ出られない部屋』の文字のせいであることは考えなくてもわかった。

「楽しそうだね」
「まーな。これあれだろ一成が言ってたやつだろ」
「そうなんじゃない」
「つめてーな。なんだよ、機嫌悪ぃの?」
「私のことからかう気満々でニヤニヤしてる万里が気に入らないだけ」
「バレてんのかよ、つまんねーな」

ニヤニヤと笑う万里に態とらしくため息をついて見せるけど、本人は全く気にしていない。それどころかもっとニヤニヤし始めるもんだから、もう嫌な予感しかしない。

普段から何かと距離が近かったり、態とらしく甘い言葉を囁いてみたりしてくる万里を嫌いになれないのは惚れた弱みだ。なんでこんな男好きになっちゃったんだろ。

「なまえ、こっち向けって」
「なによ…っ!?」

ちゅ、と音を立てて私の額に触れた唇が離れていく。額にキスをされたと理解するまでに数秒の時間を要した。時間差でじわじわ赤くなる顔を見て万里がケラケラ笑う。

「なっ、なに、なにして…」
「キスしなきゃ出られないんだろ?」
「だからって…」
「今はまだここで許してやるよ」
「は?それ、どういう…」

ぱくぱくと口を開けたり閉じたりするだけで言葉が出てこない私に万里は当然と言わんばかりの顔。戸惑う私の額をつついてニヤリと笑った万里に言葉の真意を尋ねる。

「次はここに、な?」
「な…っ!ば、っ、ばっかじゃないの!」
「ははっ!顔真っ赤だぜ、なまえちゃん?」
「暑いだけだから!黙っててバカ!」
「はいはい、そういうことにしといてやるよ」

聞かなければよかった、と思った。私の唇に指をおいてニヤリと妖艶に笑った万里にぶわりと顔が赤くなる。私のせめてもの抵抗で吐いた暴言も軽くあしらわれる。何枚も上手な万里に反撃なんて、この先絶対できない。

きっと敵わない


額へのキス→友情
※相手を可愛らしいと思う気持ちの表れとも言われてます



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