すよすよと眠っていた名前が1時間ほどして、突然ぼふんと音を立てて元の姿に戻った。たまたま名前の両隣に座っていた爆豪と瀬呂の膝に名前の頭と足が乗っかる。そして、その瞬間をバッチリ見てしまったのは切島と上鳴、麗日と八百万。
「ん、ぅ…」
「畜生…!俺が隣に座ってれば…!」
「いや、これ結構アウトだろ…」
八百万と出掛けていた名前の服装は白いサマーニットにデニムのショートパンツ。つまり、爆豪は名前を膝枕しており、瀬呂の膝には名前の素足が乗せられている訳だ。上鳴がそんな2人を見てダンダンと机を叩いて悔しがるが、瀬呂としては気が気じゃない。
個性のせいなのか、ただ単純に名前の寝起きが悪いだけなのか。未だすうすうと寝息を立てる名前が身じろぐ。器用に爆豪と瀬呂の膝の上で寝返りを打つ名前だったが、爆豪の腹部にほぼくっつくようにしてすうすう眠る名前に爆豪がプルプルと震え始める。同時に自分の膝の上で同級生の素足が動く様子に瀬呂の頬が赤く染まる。
「いい加減起きろ!!!このアホ女!!!」
「う、わっ!?わ、っ…ったあ…!」
「わ!名前ちゃん大丈夫!?」
切島と上鳴が爆豪の様子にやばいと思った時には既に遅く、爆豪の声が共有スペースいっぱいに響き渡った。驚いて飛び起きた名前がソファから落ち、麗日が慌てて駆け寄る。腰を思い切りぶつけた名前が腰を擦りながらゆっくり立ち上がり、爆豪と瀬呂の間に座る。
「えっと…どういう状況…?」
「名前ちゃん、なんも覚えてへんの?」
「うーん…百と出かけた所までは覚えてるんだけど…」
「本当に1個も覚えてねえじゃねえか」
「え、なになにそんなに何かあったの」
「何かも何も割と大きな事が起きてたんだよなあ」
「ええ…説明プリーズ…」
八百万と出かけたはずの自分が共有スペースで眠っていたことの理由が全く分からない名前が首を傾げる。そんな名前に麗日が驚きの声をあげ、切島が名前の言葉に呆れたような声を発する。切島の表情に不安になったのか、隣でケラケラ笑う上鳴に焦って視線を移すが上鳴は説明するどころか楽しそうに笑うだけだった。
八百万や瀬呂から何が起きたのかの説明を受けた名前は両手で顔を覆って項垂れた。記憶がなくてよかったのか、悪かったのか。体が縮むなんてどこぞの名探偵だ全員の記憶消えろ、と心の中で思いながら大きくため息をつく名前に麗日がトドメを刺す。
「でも、可愛かったよ?」
「恥ずかしすぎる…死にたい…」
「爆豪に懐いてたぞ、お前」
「…は?私が?爆豪に?マジ?」
「何だその目は!!!」
「こんな叫んでる男に?私が?というか、この凶悪面と幼女って絵面やばくない?」
「よし殺す」
「うわあああ!急に爆破しないでよ!危ないなあ!」
「うっせえ!!!黙って殺られろ!!!」
「嫌に決まってんじゃん!」
更に大きなため息をつく名前に切島が苦笑い気味に声をかければ、その言葉に名前が大げさに反応する。入学した時から今まで名前が爆豪とよく口喧嘩、と言う名の軽口の応酬をしていることはクラス全員の周知の事実だった。そして、またいつものように名前が爆豪を挑発するような言葉を発すれば、それに爆豪が反論をする。いつもの調子で始まった鬼ごっこに全員がまた始まった、と肩を竦めた。
「まあでも、戻ってよかったね!」
「一時はどうなる事かと思ったけどな」
「名前さんも元気そうで何よりですわ」
「で?瀬呂、名字の生足はどうだったよ」
「いや、あー…アレだな。うん」
「くっそ!!!やっぱり俺が隣に座ってればよかった!!!」
鬼ごっこをする二人を見て、麗日が嬉しそうに笑う。切島や八百万も無事に名前が元に戻ったことに安心していた。上鳴だけは先ほどの瀬呂のポジションを羨んでいるようで物凄い勢いで噛み付いていた。瀬呂も満更でもなさそうな顔で返事を濁すもんだから、上鳴の怒りの声は大きくなる一方だっだ。
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