「女子高っていい響きだよな〜」
「そう?」
「梓女子高だろ?どんな感じなの?やっぱ教室いい匂いすんの?」
「…公平キモいんだけど」
「うるせぇな、俺だって健全な男子高校生なんだよ。槍バカだってそうだろ」
「まぁ、気にはなるよな」

いつものように公平と陽介と三人でラウンジにいると陽介が口を開く。毎度のことながらなんの脈略もない上にくだらなすぎる内容に公平も乗っかってくるもんだから私は小さくため息をついた。男子高校生というのは女子校に夢を見る生き物なのだろうか。前に太刀川さんも同じことを言っていた。

「女子高ね…一言で言うと、動物園」
「「……は?」」
「だから、動物園」
「いやいやいやいや!」
「それはひどすぎるだろ、いくらお前がゴリラ系女子でもそれは言い過ぎ」
「後で覚えとけよ、公平」
「顔マジじゃねえか」
「口には気をつけろよ、公平」
「ハイ、スイマセンデシタ」

うちの高校を一言で言い表すなら何が一番適切だろうかと考えて思いついた言葉を率直に言う。失礼なことを言う公平を睨みつけると隣にいた陽介が若干引いたような目をしていた。公平に至っては引き攣った顔をしていて完全に私の顔が怖かったんだなと他人事のように納得してしまった。

「で?女子高が動物園ってどういう事だよ」
「どういう事も何もそのまま」
「うるさいってこと?」
「それもある」
「えっ、臭い…とか?」
「それもあるね」
「それ"も"!?まだあんのかよ!」

思い出したかのように女子校の話に戻った二人の疑問に淡々と答えていく。私の言葉にやめてくれと言わんばかりに耳を塞ぐ仕草をする二人を見てふはっ、と笑いがこぼれた。まだまだ悪いところなんていっぱいあるよと言わんばかりに笑えば二人の表情はどんどん悪くなっていく。この二人はどれだけ女子校に夢を見ていたのだろうか。

「うちの学校はバカばっかの金取り学校だから能無しのサルしかいないんだよ。だからあんなに煩いんだろうね」
「口悪いぞ、梓ちゃん」
「それぞれ好きな香水付けてるから混ざりに混ざって教室は臭いし、休み時間はギャーギャーギャーギャー騒いで、過激な下ネタは飛び交うし、品なんてあったもんじゃない」
「まじで?」
「聞きたくなかった!」
「いや、だってお前の友達可愛かったじゃん!」
「公平の目は節穴ですか?化粧で塗りたくられたベッタベッタの顔で、ほんとの顔どこだよ整形したのかよレベルの化粧してる子が可愛いと?」
「なんなの、梓は同級生に恨みでもあんの…」

学校の中でさすがにここまで言わないけれどボーダーに同じ学校の子はいないし、うちの学校の生徒と関わりがあるボーダー隊員がいるなんて聞いたこともない。まあもし仮にいたとしても私がボーダー隊員であることは学校の人に言っていないからバレる心配もない。バレたとしても、元々仲が良くなかった人達との仲が悪くなるだけだから何の問題もない。

「だって別に友達とかじゃないし。それに比べてボーダーの女の子達は最っっっ高に可愛い!!!」
「でた、梓のボーダー女子贔屓」
「お前ほんと好きな奴と嫌いな奴の扱いの差すげぇよな」
「人聞き悪いこと言わないでくれる?嫌いな人とかいないから。正しくはあんまり興味の無い人、ね?」
「それもそれで嫌だ」

学校の女子たちより圧倒的に可愛いボーダー女性陣を頭に浮かべながら口を開けば陽介がため息をつきながらこちらを見る。公平も呆れたように口を開くけど生憎私には嫌いな人なんていない。ただ、ほんの少し苦手だなああんまり好きじゃないなあと思うというだけの話だ。勘違いしないでほしい。

「でも俺らのことは大好きだもんな、梓ちゃん」
「はあ?」
「照れ隠しですか?梓ちゃん?」
「何公平まで乗っかってんの、面白くない」
「あれ、顔ちょっと赤い?あれ?」
「照れてる?照れてる?」
「うるさい!!!」

アップルティーを飲みながら公平の言葉を訂正する私に陽介が意地悪に笑いかける。確かにこの二人のことは好きか嫌いかで言われれば好きだけど、こうして面と向かって言われると何だかムカつく。何となく顔を見られたくなくてポケットからスマホを取り出して視線を落とせばここぞと言わんばかりに揶揄おうとしてくる二人から全力で顔を逸らした。


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