「秀次さん」
「なんだ」
「隈、すっごいよ」
「うるさい」

珍しくラウンジにいた秀次に声をかける。こちらにチラリと目線を向けた秀次も目元に見えた隈に思わず眉間に皺が寄る。秀次の目元を指さす私から目を逸らしてその場から立ち去ろうとする秀次の腕を掴んで慌てて引き留める。

「いやいや、まじで。いつから寝てないのさ」
「………」
「秀次?」
「3日くらい大したことない」
「あるわ!たいしたことあるわ!バカじゃないの!?」
「うるさい。耳元で騒ぐな」

大丈夫だと言い張る秀次から三日寝ていないと聞いて思わず大きな声が出た。よく見れば目元の隈がひどいだけではなく、顔色も最悪だ。見るからに病人みたいな顔をしていうるのにも関わらず、秀次は大丈夫だと言い張る。

「ご飯は?」
「……食べてる」
「ご は ん は ?」
「……昨日は食べた」
「昨日のいつ」
「……朝」
「はい、アウト。行くよ」
「は、行くって、おい!」

寝てないだけではなくごはんも食べてないという秀次の手を掴めば眉間に皺を寄せてあからさまに嫌そうな顔をする。そんな秀次に構うことなく腕を引いて私の部屋へとまっすぐ向かい、扉を開ける。ベッドに秀次を無理やり寝かせて布団をぶん投げる。乱暴?知るか。

「わっ、ぷ!おい!梓!」
「はい。横になって目閉じて」
「梓!」
「さっさと寝ろ!」
「………」

怒ったような声を上げる秀次に私の声も荒くなる。普段自分に向かってこういう口を利かない私のいつもと違う様子に秀次が口を噤む。しぶしぶ目を閉じてベッドに横になる秀次に逃げ場はないぞと言わんばかりにじっと見つめる。少しするとすぅすぅと寝息が聞こえてきてやっぱり三徹で平気なわけないだろ、と私はため息を零した。

「ん…」
「おはよ」
「…何だこれは」
「えっ…ご飯ですけど、え?何に見えてんの?目大丈夫?」
「そういう意味じゃない」

少しして目が覚めた秀次が机の上を見て眉を潜める。机の上には私と秀次の二人分の食事が並んでいる。勿論それは秀次が寝ている間に私が作ったものだ。食わないなんて言わせないからな、と思いながら箸を渡すと私の目を見た秀次は大人しく箸を受け取って食べ始めた。最初こそ箸が進んでいない様子だったが徐々に食べるペースも上がってきた。腐っても男子高校生、お腹がすかないはずがない。

「おいしいでしょ」
「…あぁ」

私も秀次に倣って箸を進める。うん、我ながら今日のご飯もおいしい。私がいたずらに笑いかけると、秀次は私をちらっと見て頬を緩めた。秀次が笑う事なんて普段ないから何となく嬉しくなって私の頬も緩む。あまりにも緩んでいる私の表情に秀次が首を傾げる。何でもない、と笑いかけて箸を進めた。


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