※トリップネタ※
※『そして私は海賊になった』の続き※
「宴だァーーー!!」
そんな声と共にガチャンと音を立てて乾杯をする。ワイワイと楽しそうな空気にふにゃりと表情が緩んだのが分かった。
グイッと手に持っていたグラスを傾ければ、鼻をくすぐる柑橘の匂いの後にぴりりと喉を熱が流れる。
「おいしい…」
「そりゃよかった。名前ちゃん、お酒飲んだことねェって言ってたからちょっとアルコールは弱めにしたんだけど、大丈夫そうだね」
「えっ!?これ、サンジくんがつくったの…?」
「勿論。俺ァ、この船のコックだからね」
ひょっこりと私の後ろから顔を覗き込むようにして現れたサンジくんがふわりと笑って料理の盛られたお皿を渡してくれる。
料理はサンジくんが作っていると知っていたけれど、まさかお酒まで彼が作っているなんて…!と目を丸くする私に彼はいたずらっ子のように笑った。
「すごいね、サンジくん…」
「お褒めいただき光栄です」
綺麗で美味しい料理とお酒に思わず感嘆の声を漏らせば、彼はまた嬉しそうに笑って恭しく一礼をする。
なんだろう、彼の所作が一々綺麗でドキドキしてしまう。お酒のせいなのか、彼のせいなのか。ちょっとだけ頬が熱くなって、思わず片手で頬を押さえる。
そんな私を微笑ましげな目で見ていたサンジくんだったけれど、少し離れた場所にいたナミに呼ばれると途端に目をハートにして駆け寄っていってしまう。
「へェ、酒飲めんのか」
「たぶん…?」
「多分って…。飲んでんじゃねェか」
「アルコール弱めってサンジくんが言ってた」
なら酒じゃねェな、それ。なんて失礼な事を言いながら私の隣にドサリと腰を下ろしたゾロは大きなジョッキに注がれた透明なお酒を、まるで水を飲むように飲んでいた。
それをジッと見つめていれば、視線に気付いた彼が首を傾げる。
「ンだよ」
「すごい、なあと思って…」
「そんなに気になるなら飲んでみるか?」
「いいの?」
パチパチと目を瞬かせる私に彼はケラケラと笑ってジョッキを差し出してきた。受け取ってみれば両手で持っても少し重いくらいで、口から驚きの声が零れた。
恐る恐るジョッキに鼻を近づければ、私の飲んでいたお酒よりもずっと強いアルコールの匂いにくらりと目が回りそうになる。ちろりと舐めるように一口飲めばカァーっと喉が焼けるように熱くなった。
「う…」
「なんつー顔してんだ」
「飲める、けど…あんまりおいしくない…」
「これの美味さが分かんねェなんざ、まだまだガキだな」
小さく唸りながら口を離せば、彼は愉快だと言わんばかりにまた声を上げて笑う。私の手からジョッキを奪っていった彼はまたそれをガブガブと飲んでいく。
それを横目で見ながら自分のグラスを傾ければふわりと柑橘の匂いが口の中を満たしてくれる。うん、私には甘いお酒が合ってるのかもしれない。
なんて思いながら、こくりこくりとお酒を飲んでいれば段々と眠くなってくる。
「ん、ぅ…」
「おい」
「ねむ、い…」
「ったく。ほんっとにガキだな」
呆れたように笑って私の頭をぐしゃぐしゃと撫でたゾロにガキじゃないよ、と返そうとしたけれど落ちてくる瞼に逆らうことが出来ずにずるずると体から力が抜ける。
ぽすりと彼の膝の上に落ちた頭を上げようとするけれど、そんな力はもう残っていなくて。
「いま、どく…から…」
「眠ィなら寝とけ。どうせすぐには終わんねーよ」
「ん、…うん…?わか、ったぁ…」
もぞもぞと動く私の頭をもう一度乱暴に撫でた彼の声はもうほとんど聞こえていなかった。あとで、謝ろう。なんて思いながら賑やかな声を背に眠りの海へと落ちていった。
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