※ちょこっと背後注意※
「ぬわんっっって素敵なんだぁぁああ!!」
グランドラインでも有数の美女達が暮らす島にやってきた私達麦わらの一味。次に向かう島がこの島だと分かった時から予想はしていたし、こうなる確信もあった。
だから当然、心の準備もしていた…はずだった。
どれだけ心の準備をしていようとも、どれだけ彼の性格を理解していようとも。やっぱり自分の彼氏が綺麗なお姉さんを見て目をハートにしている姿は見ていて楽しいものではない。
「あれ、いいのか?」
「いいんじゃないんですかぁー」
「いいって顔してねぇじゃねぇか」
舷に肘をついて、手のひらに顎を載せる。尖らせた唇から漏れるのは不満を凝縮した唸るような音。隣に立っていたウソップが苦笑いで私を見るからべぇ、と舌を出して返してやる。
サンジくんが楽しそうにしている姿を見るのは大好きだし、彼が幸せなら私も幸せな気持ちになる。彼の性格は分かってるつもりだし、それを理解した上で交際をしているのも事実だ。
彼の行動に制限をかけるような面倒な女になる気は毛頭ないし、彼の気持ちが私から揺らぐことは無いと自信を持っていることも確かだ。
「サンジくんのばーか」
小さく呟いた声は誰かに聞かせたかった訳じゃない。ただ、私だけを見て欲しいなんていう醜くてどす黒い感情を吐き出したかっただけだ。
そりゃあ確かに?綺麗なお姉さんがいたら綺麗だなって思うし?おっぱいだって大きかったら見ちゃうよ?分かってるけど、分かってるけどさぁ。
こんな事で不貞腐れてしまう自分の子供っぽさに嫌気がさして、我慢していたため息が零れる。
途端にぐりん、と音がしそうな勢いでこちらを見た彼と目が合う。驚いて反射的に顔を逸らしてしまい、何だか悪い事をしている気分になってくる。
どうしようかと内心焦っていればふわりと背後から抱きすくめられて、嗅ぎ慣れた彼の匂いが鼻をくすぐる。
「ごめんね。ちょっとだけ、意地悪しちまった」
私のこめかみに優しくキスを落としてクツクツと喉を鳴らして笑う彼に、無意識に唇が尖ったのが分かった。
なぁに、それ。私がヤキモチ妬いてるの、分かっててお姉さん達に声かけてたの。
「…私の方が、可愛いもん」
「そりゃそうさ。どんなに美しいレディも名前ちゃんの前じゃ霞んじまうよ」
「…私のことも、可愛いよって褒めて」
「勿論。名前ちゃんがもう言わなくていいって思うまで言うよ」
彼の腕の中で体の向きを変えて、彼にぎゅうっと抱きつく。胸元に額をぐりぐりと押し付ければ彼がクスクスと楽しそうに笑う。
髪の毛を梳くように頭を撫でていた手が後頭部に回って上を向かされる。不貞腐れるように突き出していた唇に彼が触れるだけのキスを落として、またクツクツと喉を鳴らして笑う。
惚れた弱み、好きになったら負け。昔なら笑い飛ばしてたその言葉も今ならその通りだと強く思う。
「さんじくんの、ばか」
「ははっ、今俺もそう思ってた。馬鹿な俺の事、許してくれる?」
「…ちゅうしてくれたら、許す」
「仰せのままに。愛しい愛しいマイプリンセス」
私の言葉に目を大きく見開いた彼が甘く微笑んで、私の唇に優しく触れる。
後頭部に回された手に顔の角度を固定され、もう片方の手が耳を撫でる。酸素を求めて開いた口の隙間からぬるりと差し込まれた舌が、まるで生き物のように口内を蹂躙する。
必死に彼のシャツの裾を掴んで背伸びをすれば、それに気付いた彼が少しだけ上体を屈める。踵が地面に着いたかと思えば、今度は倒れそうな程に背中が反らされて益々息が苦しくなる。
名残惜しそうに離された唇からは銀色の線が伝って、ぷつりと切れた。直後、産まれたての子鹿のように震えていた足から力が抜けてがくりと崩れ落ちそうになる。
「おっと、大丈夫かい?」
「…さんじくんの、ばか」
「じゃあ…今度は、どうしたら許してくれる?」
腰が抜けて立てない私を優しく抱き上げて怪しく微笑んだ彼にずくりと腹の奥が疼いた。
彼の首に腕を回して耳元で答えを呟けば仰せのままに、と彼が歩き出す。するりと腰を撫でた手に、また腹の奥が疼いたのが分かった。
.