かみなりがこわいの

その日は朝から天気が悪かった。ぱらぱらと降り出した雨は次第に勢いを増して強く降り出した。

「あめー…」

部屋の中で窓に張り付いて外を眺めるモビーのお姫様こと、名前はしょんぼりと眉を下げていた。

今日も今日とて外で遊ぶ気満々だったらしい名前は、朝から降り続く雨がご不満なご様子。不満げに唇を尖らすその姿に船員達がからからと声を上げて笑う。

「なーにしてんだよ」
「えーすー、そとあめだよー」
「雨だな」
「あめやだねー…」
「そうだな。雨やだな」

背伸びをして窓の外を覗いていた名前をエースが後ろから抱きかかえれば、きょろりと大きな目がエースを捉える。窓の枠を一生懸命掴んでいた手はするりとエースの首に回されて、小さな体がぎゅっと抱きつく。

窓にばちばちと当たっては音を立てる雨粒をじっと見つめていると、突然視界が白く染まる。瞬間、大きな音と共に船がぐらりと揺れる。勿論、エースがその程度で倒れることはないが名前はびくりと肩を揺らしてエースに抱きつく。

「やあああああ!」
「うっわ。でっけぇ雷」
「ううう……かみなり、やだあああ…」
「ンなこと言ってもなぁ…」

ぷるぷると震えながらエースの首にぐりぐりと頭を押し付ける名前の声は今にも泣き出しそうで、あやす様にエースがその背中を優しく撫でる。

少しすると、また大きな音と共に外が明るく光り船が揺れる。徐々に間隔は短くなり、終いには終始雷が鳴り続けるほどの天候になってしまう。

「やだあああ…ふぇ……」
「ったく、また目真っ赤にして。目溶けちまうぞ」
「おめめ、とけちゃう…?」
「ずっと泣いてたらな」

エースにしがみついて離れない名前の顔を覗き込めば、ぱちぱちと瞬きをする度に大きな瞳から涙がこぼれる。

その涙を拭いながらふはっとエースが笑えば、名前がきょとんと首を傾げる。ぐりぐりと頭を撫でてもう一度その小さな体を抱き締めれば小さな腕が首に回った。

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