※モブ視点
※下ネタ?注意
◇◇◇
このコンビニでバイトを始めてから二年が経った。未だにクレーム対応は苦手だが、通通常業務に関しては問題なくこなせるようになった俺にはココ最近楽しみなことがある。
「すみません、ありがとうございます」
そう言ってふんわりと笑った女の子につられるように笑みが零れる。そう。俺が楽しみにしてるのは、最近このコンビニによく来るようになった女の子の存在だ。
商品を渡す時にはお願いします。受け取る時にはすみませんとありがとう。きちんとお礼が言えて、ついでにとびきり可愛いその子に会うのがバイトに出勤する時の俺の楽しみだった。
「私パペコ!」
「二個食うのかヨ。デブんぞ」
「靖友とシェアハピする」
「俺いらねンだけど」
そんな彼女が、男を連れてコンビニに来た時は思い切りショックを受けた。そりゃあれだけ可愛かったら彼氏の一人や二人いるだろうなとは思ってたけど、まさかあんなに目つきの悪いヤンキーみたいな男を連れてくるなんて思わない。
アイスが入ったケースの前できゃっきゃっと笑う彼女にやっぱり可愛いなあ、なんて思っていたら思い切り彼氏に睨まれてしまう。いや待って怖すぎじゃない?
「すみません。これお願いします」
そう言っていつものように商品を置いた彼女のふにゃりとした笑顔につられて、俺の表情も緩む。先程まで一緒にいたはずの男はふらりとどこかへ行ってしまって今は彼女一人だけ。カゴに入れられた商品をスキャンして、合計金額を伝えようと顔を上げてビクリと肩が跳ねた。
「これも買っといてェ」
「えぇ…家にあるじゃん」
「ねーヨ。昨日使ったろ」
「この間買ったのにもう無いの!?」
そして目の前で繰り広げられる会話に今度こそ俺はショックで倒れそうになった。カゴの中に乱雑に入れられたのはコンドーム。そして、会話の内容から察するに昨日使って無くなってしまったから買い足しておく、と。
恥じらいもなくしょうがないなぁ、と呟いた彼女に動揺を悟られないようにカゴの中のコンドームに手を伸ばす。落ち着け。落ち着け俺。俺は店員。ただの店員だ。コンドームだろうと何だろうと、客は客だ。
心頭滅却すれば火もまた涼し。あれ、これ違うな。ショックで半ば放心状態の中、マニュアル通りに仕事が出来たのは二年間働き続けた成果だろう。これで新人とかだったら間違いなくどっかでミスしてた。
「ありがとうございます」
「あ、りがとうございましたぁ…」
袋に詰めた商品を彼女に渡して、お釣りとレシートを返す。いつもはウキウキしてしまうその動作も、ギロリと睨みをきかせる彼氏の前じゃ一挙一動に気を使う。怖い。この子の彼氏超怖い。
発した声が震えないように努めた結果、ぎこちない挨拶になってしまったがもう致し方あるまい。だって怖すぎる。えっ、俺あの彼氏さん一人で店に来られたら怖すぎて泣くんだけど。絶対顔覚えられてんじゃん。だってさっき超見られてたもん。超怖ェ!
「別に今日買わなくても良かったんじゃない?」
「ア?これから使うんだから今日じゃなきゃダメだろ」
「昨日もしたじゃん…まだすんの…」
「なァにカマトトぶってんのォ?昨日だってそう言ってノリノリだったじゃナァイ?」
「うるさいばか。帰ったらアイス食べるの」
「ふゥん。あっそォ」
するりと彼女の腰に手を回して店を出る間際にチラリと俺を見た彼氏の誇ったような顔と、わざと聞こえるような声で話された内容に今度こそ俺の心は砕け散った。
…いやこれ次に来た時が気まずすぎるだろ。俺、ここのバイト辞めようかな。