『ちょっと早めに着いちゃったから待ってるね!』
なんて連絡が来たのはさっきの話。何をどうしたら待ち合わせの時間より一時間も早く着くンだヨ。もう少しゆっくりしてから家を出ようかと思っていたけれど、もう着いているのならオレも行った方がいいんだろう。
ジャケットとカバンを引っ掴んで靴を履き、家を出てスマホで葵にメッセージを送る。
『今家出た』
『どっか店入っとけ』
高校でも大学でも男から声をかけられやすい葵が駅前を一人で彷徨くなんて愚の骨頂。ナンパしてくださいって言ってるようなモンだ。
すぐに既読が着いてOK!とスタンプが送られてくる。可愛らしい文字で書かれたやすくん、の文字に何となくムズムズする。明らかに俺にしか使えないそのスタンプを嬉しそうに笑いながら買ってた葵を思い出して頬が緩みそうになった。
『この間一緒に行ったカフェにいる!』
少しして送られてきたメッセージを見て、そのカフェへと向かう。店内へと入り、席に案内しようとする店員に「待ち合わせなンで大丈夫っす」と返して店内を見回す。すぐに奥の方の席でスマホを眺めながらストローを咥える葵の姿を見つけて歩み寄れば、こっちを見た葵と視線が合う。
「靖友!」
パァッ、と花が咲くように表情を輝かせた葵に一瞬だけ体が固まる。な、ンだヨ…あの顔。可愛いすぎじゃナァイ…?
オレの顔を見た瞬間に、あんなに表情輝かせるとか。どんだけオレに会えたの嬉しかったンだヨ。マジで可愛い。
座っている葵の前に立ったまま動かないオレに葵がキョトンと首を傾げる。その動作すらも可愛く見えてしまって胸の奥がぐぅっと膨らむ。
「ほんと、ふざけんなヨ」
「んえっ!?な、なに!?い、いはひ!ほっへ!ひはい!」
胸の中をぐるぐる巡るムズムズする感じを吐き出すようにため息を吐いて、葵の頬をぎゅっと抓る。ぱちぱちと目を瞬かせてから痛い、と表情を歪ませる葵にもう一度ため息を吐いて手を離す。
「な、なに…急に…痛かった…」
「オメーが悪ィ」
「な、なぜ…」
どさりと葵の向かいに腰掛けて頬杖を付き、戸惑ったような顔で抓られた頬を手で覆う葵を見る。納得いかないような顔をしながらストローを咥える葵にクッと笑みを零せば、益々葵は不思議そうに首を傾げる。
いンだヨ。オメーは分かンなくて。オメーが可愛いことなんて、知ってンのはオレだけでいいンだから。