じゃあ私はこれで、と二人に背を向けて帰ろうとした私は二人の驚きの声で足を止めた。
「あれ、私なにかしました!?」
「あ、いや…そういうのじゃないけど…」
困ったように眉を下げて、というよりかは何と言ったらいいのか分からずに言葉を探している様子で諸伏さんが人差し指でぽりぽりと頬を掻く。降谷さんなんかは驚いたように目を見開いて固まっていて、果たして私は一体どんな不味いことをしてしまったのだろうかと息を飲んだ。
「その、さ。昼飯って、食べた?」
「?食べてないですけど…あ、もしかしてお礼って食事ご馳走した方が良かったですか!?」
「違う違う!そういうんじゃないよ!さすがに高校生に飯奢れなんて言わないから!」
個人的には食事を奢るのもアリかと思ったが、よく知りもしない奴と食事なんて普通嫌だろうし、高校生の小娘に食事を奢られるというのは大学生の男の人としてはアリなのかナシなのかも分からない。リスキーな手段を選ぶより堅実に行くべきだと判断したうえでの図書カードだったのだが間違えていたのか。
勢い良く頭を下げて何でも奢りますと言わんばかりに鞄から財布を取り出そうとすれば、違うから!財布出さないで!しまって!と諸伏さんに必死に止められる。どうして止めるんですか。これが違うとなると一体何だというのだろうか。諸伏さんの言わんとしていることを正しく理解できずに眉間に皺が寄っていくのが自分でもはっきりと分かった。
「何食べる?俺のおすすめはオムライス」
「僕はパスタにしようかな。ヒロは?」
「俺はドリアにしよーっと。天野さんは?」
「えっ、あっ私は…じゃあ、オムライスで…」
言葉の真意を図りかねたまま二人に連れられてやってきたのは、細い路地の奥にある小さなレストランだった。おしゃれな音楽と、部屋の隅に置かれた大きな本棚とコーヒーのいい香り。お店の店主さんと知り合いなのか、慣れたように一番奥の座席に腰かけて二人がメニューを開く。
未だに状況把握のできていない私のことなんて気にも留めずに二人はきゃっきゃっと楽しそうにしている。ボケっとしながらそれを見ていれば二人の視線がくるりと私に向く。ろくにメニューを見ることなく諸伏さんのオススメだというオムライスを頼んでテーブルの上の水を一口飲んだ。
えっ、これどういう状況?あっ、オムライス凄いちょう美味しそういい匂いする。