メンタルは存外女子の方が強い

3年生になった雛。新1年生を追い出した事件以降陰口が止まらなくて頭を抱える。「最悪だ……」「悪口が?」「私のせいでバレー部が悪く言われてることが!!」「あ、そっち?別に平気だろ。本気でやる気がある奴はちゃんと来るよ」って縁下の前で机に突っ伏してる。

陰口、悪口、とは言っても大半が雛に対するものばかりで「バレー部の男達を独り占めしたいから1年生を追い出した」とか「自分は一切仕事をしないでバレー部といつも遊んでる」とか「2年のマネージャーも本当は追い出すつもりだ」とか、聞く人が聞けば鼻で笑ってしまうようなものばかりだけど噂に尾ひれは付き物で、あっという間に新1年生の間ではバレー部の3年マネージャーがヤバいと言われているらしい。

「どうしよう…!後輩がそんな先輩いる部活なんて辞めますとか言い出したら…!」って頭を抱える雛に「噂ごときに狼狽えすぎだろ。お前がそんなヤツじゃねぇことくらい俺らが一番よく知ってるしな」って西谷が親指をぐっっと上げるから「の、のやぁ〜〜!」って感動の涙。

「とまあ、おふざけはその辺にして」「悪魔かお前」「ほら西谷が泣いちゃった」「ノヤさああん!!意識をしっかり持てぇぇ!」「俺はもうダメだ…!後は頼むぜ、龍…!」「の、ノヤさあああああん!!」「なにこれ?」って2年ズが体育館で準備しながらわいわいしてて、そんな姿に「…良かった、元気そうで」って谷地が安心したようにホッと息を吐く。

「とんでもない女だって言われてるからね」「何なら谷地さんも辞めさせられる1歩手前って聞いたけど」「あ、有り得なくもなさそうなのがまた怖い…!」って1年ズもわいわいするけど心の中では雛を心配してるから可愛いよね。

そんなある日谷地がお昼に中庭を通りかかったら「マジであの女ムカつく」「バレー部の3年でしょ?」「他校の人達とも仲良いらしいよ」「やば!ほんとはウチのバレー部の情報流してんじゃね?」ってある事ない事大声で喋って雛を侮辱するような発言で盛り上がる1年生に遭遇してしまって最初は(こ、今年の1年生こわぃぃ…!)って震えてたんだけど、あまりの言いようにさすがに怒りが湧き上がってくる。

とうとう悪口が度を越して酷くなってきて、我慢できずに1年生の子達の前にバッと飛び出してしまって谷地自身もびっくり。でも黙って聞いてられるはずも無くて「〜〜ッ雛さんは!!そんな人じゃありません!!確かに、ちょっとふざけすぎて、縁下さんに怒られることもありますけど、それでも…!私のことも、バレー部のことも大事にしてくれる大好きな先輩です!!雛さんが許しても、私が許さないから!!」って大声で啖呵切るから1年の子達もびっくりして目を見開いてる。

それからすぐにバツの悪そうな顔でそそくさ逃げて行くから、へなへなと座り込んじゃう。(やばいやばいやばい…!私明日刺されたらどうしよう…!)ってガタガタ震えてたら「やっちゃん!!」って雛の声がしてハッと顔を上げる。

「雛さん!?ハッ、す、すみません…!私なんぞが生意気を…!」って謝ろうと思ったらガバッって勢いよく抱きしめられてびっくりする。「ほんっっっとに、嬉しかった。へへ、嬉しすぎてなんかもう、泣きそう。ほんとに、ありがとう」って耳元で雛の泣きそうな声がするから胸がぎゅっと苦しくなって谷地も雛をぎゅううっと抱きしめ返す。

「わたしは、雛さんが楽しそうにバレーをしてるところを見るのが好きなので…!あんな、影でコソコソ言うような人達、気にしないでください!」って谷地が笑えば「うん…!ありがとう」って雛が嬉しそうにふにゃふにゃ笑う。

もちろん中庭なんていうどの教室からでも見えちゃうような目立つ場所で大騒ぎしたもんだからバレー部も、全然関係ない人達も、先生達も皆見てたもんだから『バレー部はあんなにも素敵なマネージャーがいて幸せだな』って益々羨ましげな目で見られるようになるし、盛大に目立ちまくってしまった谷地はしばらく雛の影で顔を真っ赤にして隠れてる。

雛は今までにも増して谷地に激甘になるか結果的には良い方向に働くね。状況が状況なだけに手は出せないけどバレー部の皆のメンタルを心配していた武田は本気でホッとするし、後から話を聞いた烏養が「そういうのは男子より女子の方が強いんだぜ、先生」って笑うんだよね。

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