長い長い合宿を終えて、久しぶりに宮城に帰ってきた。場所によって空気が全く違う。地元の空気はやはり一番落ち着く。
帰りのバスから降りて思い切り伸びる。
バスからは次から次へとみんなが降りてくる。まだ深夜と呼ぶには明るいが、夜である。選手があくびをしたり、船を漕いでいるのも仕方がない。あんなにハードな練習をして、体力が消耗しないわけがない。
そんな私も眠いです。
しかし、今は先生の話をじっくり聞く時間だ。聞き逃してはいけない情報ばかりなので、目をぱっちりさせて、頭を働かせる。
「はい、それでは解散です。明日は休みなのでゆっくり休んでください」
「うっす!」
話も無事に終わり、遠征で持っていったものを体育館に運んで、解散となった。私にとって1週間地元を離れるということは全くないことで、若干ホームシックになりかかった。
これもいい経験になったのかもしれない。
準備を終えて、帰ろうとすると、飛雄君と月島君が互いに離れた位置で立っていた。
誰かを待っているんだろうか。
不思議に思いながら2人の間を通る直前だった。
「名前」
「ヒヨコ」
『ふぁい!』
2人に同時に呼びかけられて、心臓が爆発するかと思った。全く心の準備をしていなかったから、寿命が縮んだかもしれない。
「…帰んぞ」
先に声を出したのは飛雄君だった。これは一緒に帰ってくれるということだろう。
「僕ヒヨコに用があるんだけど、王様は先に帰っててくれる?」
「あ"?」
なんだか空気がピリピリしております。こんな巨人2人に囲まれる私の気持ちも考えてください…!
「早く話終わらせろよ」
「そんな簡単な話じゃないし、そもそも毎回毎回ヒヨコの事送ってるけど、王様はヒヨコのなんなの?」
「別になんだっていいだろ。……夜、こいつ1人で歩くのは危険だから送ってくんだよ」
「じゃあ、今日はそれ僕がやるから、先帰ってよ」
「んだと…。」
「それとも何、一緒に帰らなきゃいけない理由でもあるの?」
「…ある。でも、お前には関係ねぇ」
どうしよう。誰か、助けて………。私はどうすればいいんですか!ヘルプ!
『あ、の、2人とも?』
「なに」
「んだよ」
ちょっとだけ表情が怖いんですけど………!
『合宿で体疲れてるだろうし、早く帰ろう?』
2人の目を交互に見ながら、2人の逆鱗に触れないように、言葉を探っていく。
『月島君、お話って今じゃないとダメかなぁ』
「別に…今じゃなくていい」
『じゃあまた今度でもいい?』
「…いいけど」
『ありがとう!!じゃあ、今日は一緒に帰ろうーー!』
私は夜のわけのわからないテンションで、2人の腕を掴む。
こうして、無事(?)家に辿り着いたのでした。