突然の彼女の報告に部室が異様な盛り上がりをみせていた。
「まじかよ!!!いつの間に!?」
「誰だ!相手は!!」
食い気味に迫ってくる田中と西谷に、彼女はすっかり怯んでいた。
『えっと、皆さんにはあまり関係がない話かと…』
「関係なくねぇよ!!これは俺たちにとって一大事だ」
「相手はどこのどいつだ!?」
『…え、たしか、や、野球部です』
烏野高校野球部と言えば、歴史こそ長いが万年甲子園に出場できない中堅校だ。
「告白されたのか!!」
『は、はい』
「けしからんそいつの名前は!?」
『啓久くんです!!』
聞かれる質問に対して答える彼女はなぜ自分がこんなにも質問攻めにあっているのか分からなかった。
『あの、…ほんとにいとこの話に興味あるんですか?』
興奮気味な二人に対して恐る恐る聞き返す名前の言葉に、ポカンとする部員たち。
「は?」
『あれ、違いました?』
いとこ、とは。
実は数分前に田中が聞いていた話は、一部にしかすぎず、その話には前後があった。
谷地との正しい会話の内容はこうだった。
『一昨日ね、久しぶりに親戚で集まって食事会開いたの』
「食事会!すごいね」
『それで、私、同い年のいとこがいるんだけど、その子最近すごく綺麗になってて、何かあったの?って聞いたら彼氏ができたんだって!』
「お、大人だ」
『いとこは、中学校の時はバスケ三昧でショートカットだったし、男前な子だったから、突然の変化にびっくりしちゃった』
「恋をすれば女の子は変わるんだね」
『ねー。まだ、そのこと自分の両親に言ってなかったらしくて、どうせなら今言った方がいいんじゃない?ってアドバイスしたら、着いて来てって言われてね、両親に彼氏ができたって報告したら、すっごく驚いてたよ』
「確かに突然だったら驚くかもしれない」
『そこで私が、もう高校生になったんだから、そりゃあ彼氏くらい作るよ!って言ったら、お父さん複雑そうな顔してて』
「自分の愛娘に彼氏ができるって報告されたら複雑な気持ちになるのかなぁ」
『そうなのかもしれないね』
というのが正しい会話内容だ。要するに田中は早とちりをして勘違いをしていたのである。
そのため、彼女は自分のいとこの話なのになぜこんなにも食いついてくるのか分からなかったのである。
「じゃあ名前ちゃんに彼氏できたんじゃなくて?」
『私ですか!?そんな、私にはまだ早いです』
予想もしていなかった質問に戸惑いつつも、自分にはその意思がないことも伝えた。そしてなにより彼女にとって重要なことは別にあったのである。
『それに、今、皆さんとバレーできるだけで私とっても幸せなんです!』
その言葉だけで、部員たちは和んだとか、癒されたとか。
(たーなーか??)
(すみません!!!!!!)