ひよこが駆け巡る!





みんなが解散した後、私と翔陽君、そして影山君と田中先輩で坂ノ下商店に向かった。暗い夜道を、少しの灯りを頼りにして坂を下っていく。

「中華まん?さっきサッカー部の奴が買ったのが最後だ!そんで今日はもう終了!!」

坂ノ下商店では、あると思っていた中華まんがなかった。あぁ今日は売り切れちゃってたのか。ないと分かってトボトボと来た道を戻る。コンビニ近くにないからなぁ。今日はあきらめるしかないか。ごめんよ翔陽君、私が誘ったばかりに。

「……おら!」

それを見兼ねた店番のお兄さんが、商品であるぐんぐんバーをひょいっと投げてくれた。それも私たち一人一人に。それを受け取ってみんなの目に光が戻った。

「それ食って寄り道しないで帰れ!そしてちゃんと飯を食え!!」
「あざ〜す!」
『あ、ありがとうございます!』

このお兄さんはなんだかんだ言って私たちのこと気にかけてくれている。金髪で怖いけど、根はいい人なんだろう。私たちが店を出て行こうとしたとき、突然店の電話が鳴った。今時珍しい黒電話で年季を感じる。電話の邪魔までしまいともう一度お礼を言ってから、静かに店を出て行った。

「それにしてもよぉ、あの優男のサーブ凄かったなァ。ってか何名前ちゃんに馴れ馴れしく触ってんだよ!!」

ぐんぐんバーを食べながら、今日の試合を振り返り始める田中先輩。優男とはおそらく及川さんのことだろう。

『でも、凄く(撫でられるのが)気持ちよかったですよ!』
「気持ちよかったァ!?お、俺も…」

行き場をなくした田中先輩の手。私の頭の前あたりでうろちょろしている。

『あの、もしかして田中先輩も撫でてくれるんですか?』
「お!?おう!」

及川さんに撫でられて気づいたけど、私は撫でられるのが好きみたい。まさかそんなんだからヒヨコとか言われちゃうのかな!?

田中先輩はぎこちなくも、まずは私の頭に手を乗せる。そして徐々に撫でる力を強くしていった。不器用ながらも大切にしてくれるような撫で。及川さんのは少し強引で痛い瞬間もあった。しかし、田中先輩は優しい上に更に心地良い!

『あ、田中先輩に撫でられるのも好きかも…。』
「………おぅ、それは良かった!」

ギルティ……!!!なんて田中先輩の心の叫び声には気づけずに、目を細めた。うんうん、撫でるの上手いなぁ。菅原先輩に並ぶ撫での上手さだが、やはり少し優しすぎる。もうちょっと全体を撫でるようにしてくれたら更に良くなるだろう。

って私は評論家か。

前 |23/226| 次