『(急げー急げー!)』
青城との練習試合も終わり、今日も今日とて颯爽と体育館に向かう。幸い今週は掃除当番に当たっていないので、直で体育館に向うことが出来た。
鼻歌を歌って音符を撒き散らしながら歩いて行くと、目の前に影山君が歩いていた。
『影山君、今日も早いねぇ』
「そうか?」
『うん。そういえば私がどんなに早く行こうとしても、影山君に勝ったこと一度もないなぁ。すぐ練習着に着替えて自主練してるよね』
「普通だろ」
影山君の準備のスピードにはびっくりする。同じクラスなんだけど、いつ影山君がいなくなったか全く分からない。でも、今日はまだ制服姿の影山君見ることができた。
二人で体育館まで行くと、予想通りまだ誰もいない。私がネットの用意をしていると、素早く練習服に着替えた影山君は、いつの間にかその手にボールを持っていた。そして自分がいるコートの反対側に置かれたペットボトルに狙いを定めていた。
影山君の放ったサーブがペットボトル目掛けて飛んで行く。これ当たっちゃう!?そう思ったらどこからともなく現れた翔陽君がボールをレシーブした。
「おい!今当たりそうだったのに何してくれてんだ!」
「もう一回っ!」
物凄い音を立ててのレシーブだったので、気になってしまい、私は作業を止めて二人のやりとりを見ていた。すっかり仲良くなった(?)ように見える二人は毎日のように口論になる。喧嘩をするほど仲がいいと言うし、二人は相当仲がいい部類に分類されるだろう。本人たちはなかなか認めてくれないけど。
しかし、今回影山君は自分のサーブ練習がしたいらしく、レシーブを受けたい翔陽君はしぶしぶながらよけていた。
そして、影山君が再び精神統一にはいった。翔陽君は口を尖らせて影山君のサーブを横で見守る。そして、勢いよくサーブを打った。
__…次の瞬間。
見知らぬ誰かが、影山君のサーブを華麗にレシーブした。息を飲むような静かなプレーに私は目が奪われた。こんなに静かで綺麗なレシーブってあるんだ……。さっき翔陽君のド派手なレシーブを見たばかりだから度肝を抜かされた。
『あ、あの……。どちら様ですか?』
「ん………。ん!?女子ぃ!潔子さんの他に女子だとぉ!?」
『はい、女子です!』
見知らぬ誰かさんが、どうやら喜んでくれてるみたい。この人も潔子先輩のファンなのかな?だとしたら…、とても気が合いそう!
「何年生だ」
『一年生です!』
「おーそうかそうか。んじゃ後輩だな!」
なかなかフレンドリーな先輩だ。少なくとも好印象を与えてくれる。そして、目線が他の誰よりも近くてなんだかドキドキする。
『はい、えっと…』
「西谷夕だ」
『じゃあ西谷先輩ですね!』
「………。」
『せんぱい…?』
名前を呼んだ途端に固まってしまった。何かマズい事を口走ってしまったのだろうか。そういえば田中先輩の時もこんな感じだった気がする。
「うおっぉぉ!女子の後輩に"先輩"って言われんの夢だったぁぁ!!」
そうなんですか!ちょっと田中先輩と同じ匂いがする。本当の匂いじゃなくて、同じ雰囲気だと言うことだ。そういえば、西谷先輩はこの体育館に何か用があってここにいるんだろうか。