時は経って、ぞくぞくと町内会チームの皆さんがやってくる。
それに伴って作ったドリンクを名前スペシャルと命名しよう。(本当はただ水にスポドリの粉を混ぜただけだけど)
いよいよ試合が始まろうとしていたけど、町内会チームの方の人数がどうしても足りず。困った事態が発生したなぁと思いながら、開いていた体育館の扉を締めに行こうとした時、外に誰かがいるのを発見した。
『あ、アサヒ先輩』
「君は、えっと…」
『名前です』
「あっ、アサヒさんだっ!!!」
体育館の柵からアサヒさんを見つけた翔陽君の興奮した叫び声。
「あっ、おっ、俺はそのっ!」
「なんだ遅刻か、ナメてんのか!ポジションどこだ!」
「あっ、えっWS…」
「人足んねぇんだ!さっさとアップとってこっち入れすぐ!!」
烏養さんの圧力に圧倒されたアサヒさんが困った顔をした。
『アサヒ先輩、私、先輩のバレー見てみたいです。きっと…凄いスパイクを打つんだろうなぁ』
「い、いや、俺なんて…、」
『バレーは、嫌いですか?』
私は真っ直ぐ彼の目を見て聞く。逸らしてはいけない。逸らしては本当の気持ちなんて聞けないから。
「分からない……。分からないんだ」
『でも、試合したいと思いませんか?』
「うん、まぁ…。思うよ…。」
余計な意味を持たない真実の言葉に、ニコリと微笑む。
『じゃあ、その思いをぶつけてこればいいと思います!』
「まだ、自信はないけど、その、ありがとう」
落ち着いた様子のアサヒさんは、心の底から笑った気がした。
早くアサヒ先輩に思い出してほしい、そこに立てる喜びを。
分かち合う仲間がこんなにもいるのだから。
そして始まった試合を見ていて、アサヒ先輩の今までの苦しさや葛藤が垣間みえた。辛いことがあって、逃げ出したくなることがいっぱいあったのに、ちゃんとバレー部に戻ってきてくれた。
それは紛れもなくアサヒ先輩がバレーを大好きな証拠。
心からの大好きって、言葉に出さなくても通じるものなのではないだろうか。
諦めないで続けて来てよかったと思う瞬間があるなら、続けたいと思う。どんなに苦しい練習でも耐え抜いてみたいと思う。またスパイクを決めたいと思うからトスを呼ぶ。ボールはまだ落ちていないから繋がなければいけない。
仲間が繋いでくれたボールを自分から諦めるなんてそんな自分勝手な事をしちゃいけない。
"もう一度トスを呼んでくれ!エース!"
バレーは何も難しいルールじゃない。大まかに言えばボールを繋げばいいんだ。ボールを繋ぐためには仲間との信頼と連携が必要になってくる。何事にも気持ちは大事で、チームプレーは絆を深める。
アサヒ先輩は仲間を信じて、もう一度トスを呼んだ。越えられなかった壁を超えた瞬間だった。
アサヒ先輩がトスを呼んだ瞬間、名も知らぬ感情が押し寄せてきて泣いてしまいそうになった。自分なんか、彼らの苦しみの半分も知らないのに。彼らの想いの強さが心を揺さぶった。
そんな彼らはカッコイイ。
それはもう、泣きたくなるくらい、最高にカッコイイ。仲間っていいな。
『…いいなぁ、皆』
信じるって素敵な事で、何よりも大切なこと。
信じることから始めよう。裏を返せば信じなきゃ何も始まらない。
『潔子先輩!』
「どうしたの」
『私、やっぱりバレー大好きです!!』
「そうだね……私もだよ」
だから、私も皆を真っ直ぐ信じてみようと思うのです。