だんだん暑くなってきた。しかし夏はまだまだこれからだ。
『西谷先輩、ストレッチ手伝います』
「おう、サンキュー」
私が体育館に入ったころには、既に西谷先輩は練習着に着替えていた。私はストレッチしている西谷先輩に近づいて、両足を開いていた彼の背中を押す。
『先輩は、バレー好きですか?』
あらゆるバレー関係者に聞けるだけ聞いて回る。この質問に意味なんてないかもしれない。私はこう聞いたところで、その人の気持ちが変わるわけではないし。でも、ただ聞かずにはいられなかった。
「あったりめえだ!好きでなきゃこうしてやってねぇよ!」
西谷先輩がこっちを見ながら、ニカっと白い歯を見せながら笑った。田中先輩には聞かなくても分かる。体が、表情がバレー大好きだぁぁぁって言ってるもの。
『私も大好きです!』
「だよな!」
近くで見ていると分かる、西谷先輩の腕には沢山の青あざがある。最近できたものや、随分前に出来たであろう青あざ。所々に散りばめられていて、練習を休んでいた間にも自分で特訓していたんだなって分かった。本当にバレーに前向きな人だ。
『西谷先輩、…カッコイイっす!』
田中先輩のマネをしながら言ってみた。
「おぅ、ありがとな!」
「おつかれさまー」
西谷先輩のちょっと照れた顔を見ていると、そこへ武田先生が体育館に入ってきた。
「集ごー…、えっ!?」
「紹介します。今日からコーチをお願いする烏養君です」
武田先生と同時に入ってきたのはまさか話した事がある、坂ノ下商店の金髪お兄さんだった。そしてその人が今日から臨時コーチになろうとは思ってもみなかった。ところで烏養さんと言う苗字、何処かで聞いたことがある。それもごくごく最近。
「彼は君達の先輩で、あの烏養監督のお孫さんです!」
驚愕の声があがる。その声に混じって私も驚いた。通りで聞いたことがある苗字なわけだ。烏養監督とはまさしく数年前、烏野高校を全国へ引っ張ったあの名監督だ。
「時間が無ぇんださっさとやるぞ!お前らがどんな感じか見てぇから6時半から試合な!」
きびきびとした、体育館に響き渡るような声で指示を出す烏養さん。それにしても唐突な。西谷先輩が増えたとはいえ明らかに人数が足りない気が…。そんな私の不安をすぐさま取り除くように
「相手はもう呼んである!」
高々とそう言ってのけた。
「烏野町内会チームだ」
私たちは今日、町内会チームと戦うらしい。また、戦ったことのないようなチームと戦えるのはとてもわくわくしますね。