ひよこが駆け巡る!





私の家に向かう途中の、ちょっと明るい星空の下。少し先を歩く真っ黒なジャージを着た彼の背中を追う。そして、私はその大きな背中を見て思った。

『私、影山君の背中、好きだなぁ』
「あ?なんだよ急に」
『程よい筋肉でー、逞しくて、でも一番好きなところは暖かそうなところかな?』
「暖かそうってなんだよ」

確かに自分で言っておきながら何を言っているのか分からなくなってきた。急に私は何を言っているのだろう。

『もう、思いっきりギュッてしたいくらい!そのくらい影山君の背中が好き』
「……。」
『あぁ!!ごめん引いちゃった?』
「別に、そんくらいで引かねえよ。ただ、まぁ…嫌じゃねぇけど」

普段感情はあまり口にしない影山君が、小さな声でそう言ったのを聞き逃さなかった。当然私は嬉しくなって、勢いに任せて影山君の背中を両手で触った。

「…!なんだよ急に」
『んー、やっぱり暖かいね』

ほんのちょっとだけど、彼の背中は暖かくて安心する。この大きな背中で頑張っているのをずっと見てきた。きっと頑張る背中だから好きになったのだろう。本当にこのままいっそ抱き着いてしまいたい。しかし、それをしてはいけないと思う心はまだ残っている。それをしたらさすがに影山君を不快な気持ちにしてしまうだろう。

抱き着きたい衝動に駆られながらも我慢して、さすったり、ポンポンと軽く叩いたりしながら彼の背中を堪能していると、いつの間にか私の家の前に着いていたことに気づいた。

『あ、私の家ここなの。今日は送ってくれてありがとう!』


私は少し名残惜しかったが、彼の背中から手を離して家の玄関の方向へ歩いていく。そして影山君の方へ向き直ると、かろうじて玄関の灯りで表情が分かることに気づいた。

いつものクールな感じじゃなくて、少し照れてるみたいな表情だ。影山君もこんな表情するんだ。また意外な一面を知った。

影山君は、バレーが大好きで、身長が高くて、直感で生きていて、ちょっと不器用で、人と話すことは苦手かもしれないけど、本当はとても優しい人だということは私は知っている。
実際こうして文句を言わずに送り届けてくれるあたり、本当に優しい人なんだと思う。


「そんじゃ、俺は帰る」
『か、影山君!』

照れ隠しをするように目線を合わさず、既に合宿所の方向へ足を向けていた影山君を慌てて呼び止める。

「あ?」
『おやすみなさい』
「…おやすみ」


なんだか付き合いたての彼氏彼女みたいな雰囲気になってしまった。そもそも私は誰かとお付き合いをしたことがないので、実際はどうなのか分からないけど、付き合うってこんな感じなのかな。

そう考えると心がモゾモゾした。

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