ひよこが駆け巡る!





改めて皆の気持ちを再確認した。三年生はみんな春高に向けて、部活を辞めずにそのまま残ってくれることになった。これほど頼もしい存在はないだろう。

私にとっては、潔子先輩とまだ一緒にいることができるという事実がとても嬉しい。これは神様が私に与えてくれたご褒美に違いない。私は目に見えない神様に感謝の気持ちを伝えるために天を仰いだ。

しっかりみんなの目標は春高へ切り替わった。また、練習頑張らないと…!
皆が高ぶった気持ちのまま練習を始めるようとすると、武田先生がドタドタと音を立てて体育館に入ってきた。

凄く焦って来たらしく、眼鏡はずれ落ち、鼻からは見事に血が出ている。多くの部員たちがその姿を見て驚きを隠せずにいた。武田先生は基本的には穏やかな人なのだが、たまにこうしてせわしなくなる時がある。

「!?」

「行きますよね!?」
「!?どこに!?」
「鼻血出てます!」
『ティッシュ持ってきます!』
「東京!!」

鼻血が出ていることにも気づいていない武田先生は、自分のことなんてなりふり構わず紙をギュッと握りしめていた。鼻血は出ているけど、目はとてもキラキラしている。これはなにかいいことが起きたときの反応だ。

「東京!?東京ってもしかして…音駒ですか!?」

この前の練習試合以来、音駒高校は烏野高校のライバル的存在として、部員に認められている。お互い仲も悪くない。

「練習試合ですか?」

そう問われた武田先生は笑顔で頷く。私はすかさずポケットティッシュを届けに行く。

『武田先生!』
「あ、わざわざありがとう。でも今回は音駒だけじゃないんだ」

武田先生が言うには、今回は梟谷学園グループという関東のグループが練習試合を取り繕ってくれたらしい。それも音駒の監督の計らいで、今年はその合同練習に参加させてもらえる事になったようだった。こんな貴重な機会、滅多にない。

いろいろしてくれる武田先生には、感謝の言葉しか出てきません。

「ただ向こうはIH予選が今週末からなのですぐってわけではないです。あと、まだ"お誘い"を頂いている段階でして、色々承諾を貰わないといけない事など細かいことはまた後でお話しますね」

ようやく落ち着きを取り戻した武田先生の長々とした説明を、集中というよりも楽しそうに聞く部員を見て、私もテンションが上がってきた。

「取り敢えず皆の意志は_」
「勿論行きます!!」

やっぱりみんなの気持ちは同じだった。行く以外の選択肢なんてない。この合宿で私たちは今よりももっと強くなれる、とそう確信した。

前 |86/226| 次