ひよこが駆け巡る!





『東京かぁ。行ったことないです…!』
「ふふ、中々行く機会ないもんね」

初めての東京…!

宮城県から出たことなんて滅多にない私にとって"トウキョウ"は未知の世界。想像では高層ビルとかマンションがいっぱい立ってるイメージ。

『潔子先輩が居てくれて本当に良かったです。私一人じゃマネージャーできる自信ないですし。あぁ、潔子先輩が引退したらどうしよう…。一人じゃなんも出来ないですよ、私!』
「そうだ…。それも考えなくちゃ…」
『……?』

潔子先輩がとても静かに呟いたので、あまり聞こえなかった。まさか、後に潔子先輩がもう一人のマネージャー候補を連れてこようとは思いもしなかった。

***

今日も練習後にミーティングを行った。その内容は基本的に今度の合宿のことについて。
そして、武田先生は締めにとんでもない発言をした。

「来月になったら…期末テストあるの、分かるよね?」

その言葉を聞いた瞬間の西谷先輩、田中先輩、翔陽君、飛雄君の表情は忘れられない。何かを悟ったような目は何処を見ているのか分からない。

「分かるよね?」

武田先生の有無を言わせない2度目の"分かるよね?"に彼らは視線を逸らした。先生…どうやら彼らは現実を見たくないようです。

「テスト期間は向こうともだいたい一緒らしいので、合同練習はそれの後_という事です。」

だんだん先生の声が低くなってきています。

「_で予想ついてるかもしれないけど、赤点で補習になる教科がある場合_」

補習のせいで遠征は物理的に無理になる___。

西谷先輩、田中先輩、翔陽君、飛雄君の心が折れる音が聞こえた。赤点を避けるには勉強をするしかないようです。息が詰まるような出来事に、その四人はしばらく放心状態だった。

……大丈夫なんでしょうか…!?

この絶望的な状況を楽しんでいるのは月島君ただ一人。

『月島君はどうしてそんな嬉しそうなの?』
「え、だって面白いじゃん」

何が面白いんだろう…。そっか月島君凄く頭いいもんね!テスト上位者の紙に毎回のように名前載ってるし。羨ましい!

月島君は赤点とか知らないんだろうなぁ。私も辛うじてとったことはないけど、余裕だったとは言えない。

「狼狽えるな!テストまでまだ時間はあるんだ…」

そうだ、きっと時間が解決してくれる!澤村先輩は目を鋭くさせて皆を見回した。

「この四人抜きで烏野のMAXが発揮できるか!?いや、できない!」

皆さん、今覚えました!?これが古典で出る反語って奴ですよ?テストでは覚えなければいけない必須問題です。教科としては国語、数学、理科、社会、英語が主だ。国語は古典と現代文に分かれており、英語も2種類に分かれている。理系や文系かによって数学はやる内容が変わってくる。社会、そして理科系は一年生のうちはやる教科は一緒だ。1年生だけある教科もあれば、2年生から始まる教科もある。

「うれしいような、悲しいような」
『喜んでいいと思います!』

田中先輩が複雑な表情を浮かべていたので、一声かけておいた。

「やってやる…全員で東京行ってやる…!」
「目ぇ据わってる!!」
「こわい!!」

澤村先輩もそれだけやる気になっているんだ。私もできることはして、教えられることは教えて…、えっと、うんと…、とにかく全員が東京合宿に参加できるようにしたい。二年生の範囲は無理だけど一年生二人だったら教えることができるかもしれない。あ、でも私じゃ力不足だ。誰かに勉強を教えたことなんてないし、もしかしたら間違いを教えちゃうかもしれない。

かもじゃない、きっと焦って間違いを教えるに違いない。テンパるのは私の逆特技だ。あまり習得したくなかった特技。

ダメダメ、ここはやっぱり頭のいい月島君に習うべきだ。でも簡単に承諾してくれるかも分からないし、何より翔陽君と飛雄君に対する教え方が酷そうだ。特に飛雄君とは折り合いが悪そうだ。なんで2人はあんなに仲が悪いんだろう。

でもなぁ、うーん…。いや悩んでてもダメダメ。

こうして、この絶望的な状況を打破すべく四人強化(教科)プログラムは始まった。

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