ただ好きでいる事



『京治君、ずっと…好きでした』


友達という関係に終止符をうちたかった。もう少しで離れ離れになってしまう。卒業式まであと1ヶ月をきった。センターも終わり、センター有り推薦でとある大学に合格した。都内だからそんなに家から遠くない。

家から通うつもりだが、この気持ちを伝えずして進学できないと思い、告白することを決意した。

「ごめん。俺、名前を恋愛対象として見たことなかった」

だけど彼は、私を恋愛対象として見ていなかった。

告白ではありきたりすぎる返事。彼と一番仲がいいのは私だと思っていたから、少し期待していた。

たった一つの会話で私の恋は終止符をうった。

『あ、そっか…。いや〜、ごめんごめん。急に言われて迷惑だよね!!』

「……いや、気持ちは嬉しかったよ」
『ありがとう。これからも仲良くしてほしいな』
「うん、俺からもよろしく」

私たちはそのまま別れた。

私が次に学校に来るのは明日。大学に合格はしたが、前期試験が始まるまでは学校に通わなければならない。名目は自由登校だが、実質登校していない生徒は数少ない。それまでは学校ですれ違わなければならないが、唯一の救いはクラスが違うことだ。


私は泣いた。

明日からどんな顔で会えばいいんだろう。

でもどうせ、……大学生になったら会わなくなる。それまで彼を避けよう。

本当は最後まで、仲の良いままでいたかった。

でも、会えない方が気持ちに整理がつくかもしれないから。

今日この日をもって彼を嫌いになるのは無理だけど、徐々に心を落ち着かせて…。

だけど、暫くは無理だ。

私は高1の時から彼が好きだった。最初は友達としての交流が多かった。だけど彼の人柄に触れていくうちに、友達と言う関係だけでは物足りなくなってきた。

この想いは2年半で少しずつ育ってきた。

彼だって私のことを嫌っていない自信があった。寧ろ好きでいてくれているんじゃないかって自惚れてた。

でも、結局自惚れは自惚れに過ぎなかった。

彼は私を女として見ていなかったんだ。それが分かって、余計落ち込む。


心が痛い。顔が歪む。

どうやって家に帰ってきたか分からない。

恋は人を変えるということは間違いじゃなかった。彼のお陰で変わることができたことが沢山ある。

京治君と名前で呼ぶことができたあの日。

初めて撫でてくれたあの日。

2人で話した放課後。

今でも鮮明に覚えている。

これまでの恋は簡単に忘れられるものじゃなくて……。

今日、自分の弱さを知った。

恋に溺れていた。

そんな高校生活だった。

家に帰ったあと、私はただ1人部屋で枕を濡らした。ご飯も食べずに、枕に顔を押し付けて、嗚咽を漏らした。もう、あの頃には戻れないんだね。あの、輝いていた日々には、きっと戻れないんだ。

好きが溢れた夜。ただひたすら泣き続けた。なぜ、悲しい時涙がでるのだろう。誰かを想って泣いた時、その涙を見て嬉しいと思う人はどれくらいいるんだろう。涙はほとんどの場合、人の気持ちを落ち込ませる。嬉し涙もあるけれど 、悲しい涙の方がこの世には溢れているんじゃないかな。

泣き続けたその次の日。

私はひどい頭痛に見舞われた。顔もひどく腫れて、誰かに見せられる状態ではなかった。
それを見かねた母は、学校を休ませてくれた。

まだ気持ちは晴れない。1日で晴れる気持ちじゃない。どのくらいでいつも通りに戻れるのかな。また前みたいに戻れるのかな。

布団に横になりながら、外を見る。どんよりと曇った空は今にも泣き出しそうだ。

『……好き』

いつか好きでいさせてくれてありがとうと言えるくらい強くなりたい。

結局告白して、駄目で、落ち込んでいるのは自分の責任だ。

そもそも告白をしなかったらこんなに落ち込まなかった。だからすべて私の責任だ。

大学に入ったら新しいことを見つけて、そして京治君を忘れて、新しい恋をはじめよう。それが、京治君のためになる。落ち込んだ私なんて私らしくない。

また再開した時、笑顔で挨拶ができるように。私への罪悪感を抱かれないように、気持ちを整理して。