自分で自分が嫌だ



大学の夏休みは、高校の時よりも始まりが遅い。その代わり、とても長く設定されている。この間私はサークルに精を入れることにしている。

バイトを始めるのもいいけど、やはり今はサークルに集中したかった。

夏休みも中盤になり、少しずつ涼しくなってきたころ、私達のサークルはバーベキューに来ていた。そして、女の子一人だけでは気を遣うだろうという配慮があったおかげで、私の友人もバーベキューに参加できることになった。こんな風に友人や先輩とバーベキューに来たことがなかったので、私にとってはとても貴重な経験だ。これもいい思い出になるだろう。

先輩方の車を借りて少し遠出したが、幸いキャンプ場は混んでいなかった。
女子たちは料理の下ごしらえ、そして男子たちはいろいろな道具の設営をおこなっている。

そしていよいよお肉や野菜やらを焼く段階に差し掛かったころだった。

「お、蓼丸!!お前らもバーベキュー来てたの??」
「あれ、お前らも?」
「おう、あ、隣でやっていいか?」
「もちろん」

結構大人数の団体が来たと思ったら、どうやら蓼丸先輩のお友達のようだった。全国こんなに広いのに、同じ場所を選ぶ確率はどれほどのものだろうか。すごいこともあるもんだ、と他人事のように思っていると、私は突然肩を引っ張られた。

「この子、俺のサークルの期待の新人」

肩を少々強引に引っ張ったのは蓼丸先輩だった。何が起こったのか分からず焦ってしまう。

『は、初めまして』

知らない人と話をすることが苦手なわけではないが得意なわけでもない。ただ、期待の新人なんて言われて嬉しくないわけがなかった。

「初めまして〜。あ、一年ってことは、もしかして俺らの中に知り合いいたりしない?ほら、あそこにいるんだけど」

そう言って先輩のお友達は、隣でバーベキューセットを設営している場所を指さした。一人一人確認してみたが、知り合いはいない。

『知ってる方は、いない、…ですね』
「いないか〜。ま、よろしく〜」

とてもフランクな感じの人だ。話し終えると、彼は設営の準備を手伝いに行った。そして未だに肩を掴んでいる蓼丸先輩の方を見る。

『お友達ですか?』
「そうそう、学部の同期。てか、急に引っ張ってごめんね。どうしても紹介しておきたくて」
『…う、嬉しいです』

私は蓼丸先輩に紹介してもらえる人間じゃないのに。まだまだ未熟で、技術もない。でもこうして言ってもらえると、とても嬉しくなってしまうのは私が単純な人間だからだ。

「丸、そろそろ焼こうぜ」

丸、とは蓼丸先輩の同期の先輩が呼んでいるあだ名である。

「お、わりわり。じゃ、ぼちぼち始めようか」

こうして部長である彼の一斉で私たちのバーベキューは本格的に始まった。談笑しながら楽しんでいると、突然隣で大声が聞こえた。

「おー!!こっちこっち!」

どうやら、遅れてきた仲間がいるらしい。肉を頬張りながらなんとなくそちらに目を向けると、大量の袋を携えた軍団がこちらに向かって歩いてきている。まだ仲間がいたのか。

「お待たせしました」
「おせーっつの!」
「郡野さんが欲しいって言ってたお菓子なかなか見つからなかったんすよ!!」
「んで、あったのか!?」
「じゃじゃーん!ちゃんとありました!」
「よくやった!」

彼らが加わりより一層盛り上がっている。若いなぁなんて思いながら焼きそばをいただいていると、私と目があった人物がいた。

「名前?」
『あ…』
「え、何?お前ら知り合い?」
「はい、高校の時の同級生で」

私は声を出すことができず、その場で固まってしまった。明らかに不自然なことは分かっている。

「サークルメンバーで来たの?」
『うん。あと私の友達も。えと、赤葦君は?』
「………。部活の人たちとだよ」
『そっか、楽しんで!』

自分にできる精一杯の明るさで返事をする。早々に話を切り上げて、自分への精神的ダメージを減らそうとしているあたり、まだ彼への想いを捨てきれていない証拠だ。

「赤葦!喋ってねぇでこっち手伝え」
「すみません、今行きます。じゃあまた」
『うん』


こんなに至近距離で彼を見たのは久しぶりだから緊張した。今日は瑠璃奈さんと一緒にいないから、あまりダメージが大きくないらしい。客観的にみたって自分がめんどくさい性格をしているんだなって分かる。でも、好きっていうのはそんな簡単に諦められるものじゃなくて、本当に好きだから往生際が悪くなってしまうのだ。

そもそも赤葦君にとっての恋人候補になれなかった時点で、勝負さえさせてもらえなかったのだ。いい加減諦められたらいいのに。

私は自分に向けて大きくため息をはいた。