落ちる音


あぁ…。かったりー…。
なんで夏ってこんなにあっちぃんだ。


こんな日はアイスでも食べたいもんだ。
誰か買ってきてくんねーかな…。そうだ、良にメールでもすっか。
…ってか携帯取り出すのもめんどいしいいや。

うっとおしい蝉の鳴き声も聞こえなくなるほどにこの暑さには参っていた。



部活をサボって、屋上の日陰で涼もうとしたが、こんなに暑いのは誤算だったと今更ながら後悔している。
仰向けに寝て、異常なほどに青い空を見上げる。



次々と流れ出てくる汗に何の処置も施さず、ただ時が流れるのを待っていた。



ガチャ



乾いた空気味屋上の重いドアが開く音が響いた。
誰かが来た。


こんな時間には、自分以外には屋上にこないので少し驚いてしまう。
まぁ、そんなのは気にしないような大雑把な性格であるのは自覚しているようだ。



「…あー、やっぱり外も暑いな…。」



心地のよい高音が耳を通り抜けた。
ってことは女か…。


自分が今寝ているところはその女がいるところはからは見えない。
つまりは俺の存在に全く気づいていないと言うことだ。



体勢を変えずに、次に出る女の声を待った。
何か、面白い独り言でも言ってくれれば暑さも少しは和らぐのではないか。
と考えたのである。


「さすがに誰も、いないよねー…。よし、帰ろう。」



案の定、その女は屋上を出ていこうとした。
なんだ、つまんねー。


それにしても、この声の持ち主は一体どんな女だったのか一目見てみたいものだ。
そんな好奇心に駆られて、こっそりと覗いて見ることにした。


一つの音も立てずにそーっと覗くと女の後ろ姿しか確認することができない。


まぁ、いいか。


諦め良く、再び寝転がろうとすると、女のポケットからポトッっと何かが落ちた。思い切り目を細めてそれが何かを確認すると、どうやら学生証のようだ。これがなければいろいろと厄介らしい。それをバスケ部の面々から聞いていたので、居ても立っても居られずにそれをとって、既に階段を下っていた女に声をかけた。



「おい…。落としたぞ。」


何時もの俺ならこんなに親切には振舞わない。
女が振り返った時に、やたらといい匂いが鼻を掠めた。


「あ…、スミマセン!ありがとうございます。」



ぱっちりとした目に、薄ピンクの唇、光に照らすと薄く茶色になる長髪。
そして何より、その姿からは考えられないような胸の大きさ。
その容姿は、俺の心を玉砕するにはピッタリだった。



一目惚れなんてあり得ない。
あれだ、こりゃきっと暑さのせいだ。


だか、確かに音が聞こえたのだ。

恋に落ちる音。