鈍すぎな
こいつとのやり取りは飽きない。
コロコロと表情が変わる。明るくて、人懐こくて。
俺とは正反対の性格。
だからこそ惹かれたのかもしれない。
こいつとは、長いこと同じ班で巨人を狩ってきている。
だからもちろん気になることがある。
一体こいつは俺のことをどう思っているのか。
そんなことなかなか聞けることではないし、どう聞けばいいのか分からない。
が、今は都合のいい事に二人きりだ。さて、どうやって聞き出そうか。
「おい、名前」
「はい!もしかして、飲み物おかわりですか?」
何故そうなる。まぁ、慣れた事だからいいが。
「いや、違う…。聞きたいことがあるだけだ。」
「私に、…ですか?」
「お前以外に誰がいる」
「はっ、そうでした!」
どこまでボケなんだ、こいつは。
よく今まで生き延びたな。…生き延びてもらわなきゃ困るのだが。
「それで…、お前年上の男はどう思う?」
まずは、これからだろう。
これを言ってもこいつの場合はどんな質問をしても勘づきはしないと思うが。
「年上の男性ですか…。んと、恋愛対象としてですか?」
「あぁ、」
名前が急に黙り出した。
俺は巨人を削ぐ時よりも体が強張っている。
というかこんな変な雰囲気の空間にいるよりだったら巨人を狩っていた方がマシだ。
バカか、俺は。
こんなことを聞くんじゃなかった。
「好きであれば歳なんて関係ありませんよ!」
パアッと笑顔になった。
これが20歳の笑顔なのか…?
「あ、もしかして兵長好きな女性でもいるんですか?」
興味深々に聞いてくるが、お前は俺の気持ちを一つも分かっちゃいない。
そして、"もしかして"はこいつの口癖になりつつある。
もしかしてじゃねぇ、いるんだよ目の前に。その言葉が喉まできかけた。
「あぁ、いる…」
「えっ、えっ、誰ですか!美人さんですか?」
「一言でいうならばマヌケだ。」
「マヌケ!?」
「それで、アホで鈍くて…。」
「なんか私みたいな人ですね…」
マヌケでアホで鈍いなんて自覚があるのか。
「一緒にいて飽きねぇ奴だ」
「わぁ、そんな人いるんですね!も、もしかして…。」
とうとう顔を赤く染め上げた。やっと気づいたか。
「ハンジさんですか?」
「ちげーよ!俺が好きなのはな…!」
駄目だ、こいつに言葉で伝えても伝わらない気がする。
俺は名前の元に歩を進めた。
肝心のこいつは俺の前でクエスチョンマークを浮かべていやがる。
「どうしたんですか?兵長……っ!」
俺をどう思っているかなんて知らない。
「アホ、マヌケ…。お前、鈍すぎ」
俺よりも一回り小さいこいつを抱き締めた。今だに言葉の意味を理解していない様子だ。
5秒後。
ボッと音が聞こえるくらいに、顔を真っ赤に染め上げた。
やっと気づきやがったか。
すると、無言で抱きしめ返されたので、俺と同じ気持ちだという合図だろうか。
今はそんなことを考えている暇などない。
俺もただ無言で、小さい名前を力一杯抱き締めた。