恋に囚われて、深まって


毎日続く夏の日射しは、容赦なく私を突き刺していた。余りの暑さに誰もが気だるい表情を浮かべている。太陽という惑星が灼熱の炎を纏いながら、想像も出来ないような歳月の中で燃え続けてきたということを、噴き出しては流れていく汗をもって実感した。

その太陽が今日は幸運なことに少しだけ姿を隠している。絶好のお祭り日和である。


人混みの中こちらを見つけ歩いてくる西谷君の浴衣姿は、見慣れているいつもの姿とは違いとても新鮮で、夏祭り特有の明かりが手伝っているせいなのか輝いて見えた。いわゆる「三割増し」どころの話ではなかった。しかるべき場所にはしかるべき服装があり、夏祭りといえば浴衣。

これぞ日本の美。浴衣を考えた昔の人は偉大だ。日本に生まれてきて良かったと、これほどまでに喜んだことは久しぶりだ。

「わりぃ、遅くなっちまった!」

遅くなったと言いながら、西谷君は待ち合わせ時間通りにやってきた。私はというと、恥ずかしい話、緊張のせいで十五分も前からここに来ている。

「西谷君…浴衣すごく似合ってる…。」

なんという普通コメント。もっと気の利いた言葉が世の中にはたくさんあるはずなのに。語彙力のなさに日頃の勉強不足を恥じた。彼の浴衣姿は想像以上に似合っていた。持っているうちわなんかが更に彼を引き立たせていた。

「お前の方が断然似合ってるぜ!」

彼はいつでも恥らず、私の欲しい言葉をくれる。西谷君に褒めてもらいたくて、こうして一生懸命おめかしをしたし、可愛い浴衣選びにも力を入れた。彼の無邪気に笑ったその顔は、私の乙女心に火を付ける。


「どこから行く?」
「まずは腹ごしらえ、だな。肉だ肉!肉食いてぇ!」
「私も食べたい!」

食べ物屋さんや射的などを楽しみ、屋台一週くらいした時、遠くで太鼓の音が鳴り始めた。

「そろそろ花火が始まるみたいだな。見に行くか?」
「うん」
「俺、穴場知ってんだよ!」

私達は祭りの喧騒がかすかに聞こえる、河川敷近くの公園にいた。どうやらここが西谷君が言う"穴場"らしい。その公園は、公園にいる人達の笑い声が時折聞こえる以外は、静かだった。もっとも、さっきまでいた祭り会場のど真ん中に比べると、ということだが。

すでに日は沈み、辺りは夜の闇に包まれているが、日中太陽に温められた空気がいまだにくすぶっているようだ。夜の闇は花火の光を照らすのに十分な暗さにまでなっていた。

そして、上がった花火。

「凄い大きいね、西の……」

花火気を取られ時頬に感触があった。すぐそこには西谷君、距離はなくなっていた。

「…来年もまた来ような」

今度は照れ臭そうに笑う西谷君に、私まで頬を赤く染め上げた。

単語
お祭り、浴衣