好きになると世界は変わる


もう11月だというのに残暑厳しく続いている今年。いくぶんか涼しくなってきているが、これも異常気象の影響もあるだろう。

モヤモヤとした空気がより一層行動を制限する。

しかし、今日の陽射しは暑いが窓を開けると空には鱗雲が流れ、秋めいた涼しい風がふいている。季節はちゃんと過ぎて行ってるんだなぁ。もうそろそろ雪が降ってくるに違いない。まだそう遠い話だけど。

暑いといえど、夕方になれば気温も下がり過ごしやすくなる。そのタイミングで彼女はやってくるのだ。

「お邪魔しまーす!」

ただいまじゃなくてお邪魔します。まだ他人行儀のようだが、これでも高校の時から付き合っている恋人である。

「真琴君のお家久しぶりかもー!」
「久しぶりって言っても3日ぶりでしょ?それに毎日会ってるし…。」
「でも、会えない間は寂しいんだよ?」

またそうやって可愛いことを……。

彼女がそういうのも無理はない。今俺たちは夫婦でもないから同棲はしていない。いつかは、いつかはプロポーズをしなきゃと思っているうちに気づけば一年が経過していた。俺、いざとなったらヘタレだったんだ。

可愛い彼女に何度もプロポーズをしようとした。でも全然、勇気がでなくて…。

「あ、そうだそうだ!真琴君誕生日おめでとう」
「はは、ありがとう」
「これね、有名なケーキ屋さんで買ってきたの。絶対に美味しいから食べて」

今日は俺の誕生日だけど、明日は名前の誕生日だ。奇跡のような一日違いの誕生日。それを聞いた時には柄にもなく運命だとか思ってしまった。実は俺もケーキとか買ってたりして。まだ出さないでおくつもりだけど。今日はケーキよりも先にもっと大事なものを渡したいから。

「ここのケーキ前から食べたいと思ってたんだ。本当にありがとう」
「真琴君生まれてきてくれてありがとう!」


ありがとうの応酬。どこかむず痒くて二人で笑った。そこから二人で雑談などをしていると、気がつけば時間は経っていて、時計は既に夜遅くの11:50を指していた。もういい時間だなと思ったのか、名前は荷物を持って帰ろうとしていた。

「ごめん、今日は楽しすぎて長居しちゃったね!そろそろ帰…」
「あ、待って名前。まだ帰らないで…!」
「ん?どうしたの」
「あと、ちょっと…待ってて」

目を泳がせながらポケットの中身を再確認する。規則的なその形は俺が随分前から持っていたものだ。今日は俺の誕生日。そして明日は名前の誕生日。これほどにいい機会はない。二人の特別な記念日にしよう。

俺は時計が0時を指しそうなのを確認して、ポケットの中からそれを出した。

「その…、ここ予約しても良いですか?」

勢いに任せ、彼女の左手の薬指を指して言ってしまった。もう…後戻りはできない。ここで断られたら、俺はきっと立ち直れないだろう。

「…っ喜んで!」

素敵な笑顔で答える名前。

「誕生日おめでとう、名前」
「ありがとう!真琴君っ!」

明日の挨拶はきっと………____。

「ただいま」

今日から俺たちは夫婦になったと実感するんだろう。


単語
誕生日、プロポーズ