/遅咲きの運命/


また連絡先を交換して、名残惜しくもその日は別れた。家に着いたのは12時頃だっただろうか。彼との再会があまりにも印象的すぎて、その後の出来事はあまり覚えていない。

京治君は車を持っているらしいので、今度乗せてもらう事になった。持っているといっても親のお下がり(?)と聞いた気がする。なんにせよ、車を運転する京治君かぁ…。と妄想してる場合じゃなかった。

私たちはこの3年、もっと詳しく言えば3年半ほどがっつり会っていなかったわけで、でもお互いの隙を埋めるのにはそう時間がかからなかった。半年も待っていた小学校から高校1年生までの期間なんて、比じゃない程に会った。

前にも言ったが、私は京治君と自然消滅したあと、何人かの人と付き合った。何人かと言えば話を盛りすぎた。2人です。2人だけです。とにかく、2人の男性とおつきあいさせてもらいました。

彼らは優しくて、とてもいい人たちだったけど、やはり京治君には敵わなかった。別れるのは自然の流れでそう苦労はしなかった。あまりにも京治君が理想で、すべて京治君を基準にして考えてしまった。

『京治君…』
「…?」
『好き〜………』

やはり会っていない分、愛情表現は過剰になってしまう。思い切って甘い言葉をはき出しながらガバッと彼に抱きつくと、彼は何の戸惑いもなく抱きしめ返してくれた。

まだ、私たち同士ではそういったことをした事がなかった。所謂健全なお付き合いってやつだ。
実際私まだその体験を済ましておりません。はい……。


彼は髪にキスをしたり、首筋にキスをしてきたりと、まぁいろいろな所に唇を落としてきた。くそぅ、愛しいです。
一定のキスが終わると、今度は髪を梳いてきた。案外これが好きだったりする。

私は嬉しくなって、下からジッと京治君を見上げる。

「名前がこんなに甘えてくるなんて思わなかった」
『私だって甘えたい時くらいあるよ。暫く会ってなかったから、その分を早く埋めたいの』
「ねぇ、それワザとやってる?」
『それって?』
「上目遣い」

え?ワザとって上目遣いのことですか!

『い、いえいえいえ!滅相もございません』

私は慌てて京治君から離れる。なんか自分でやってて恥ずかしくなってきた。


「やめちゃうんだ」
『京治君があんな事言うからだよ!』

京治君ってSっ気があると思います。今まで気づかなかったけどM属性ではない。確実に。

「おいで」

なんだかんだで、飴と鞭の使い方が上手いなぁ。もっともっと触れたくなってしまうじゃないか。
もっと彼に寄り添っていたくて、言われるがままに抱きつきに行く。

こんな時間が今までの何倍も幸せだ。

小学校3年の時に出会った。
最初はぎこちなかった態度も、小学校6年生になる頃にはすっかり慣れていた。

_まだ小さな蕾は、大きくならない。


中学校になって、会える時間がめっきり減った。恋を知るにはまだ小さすぎた心が徐々に大きくなっていった。

__想いと言う蕾が膨らんだ。しかしまだ咲かない。

高校生になって付き合い始めた。会う期間は本当に少なかったけど、膨れ上がった蕾が咲く気配を見せた。

そして、高校2年生の時。

___その蕾は急に萎み始めた。まだ咲いてもいないのに、その命を終えようとしていた。

そのまま大学生になって、会いたいと願い続けた。それなのに相手が何処にいるか分からないもどかしさは、蕾を再び刺激した。

_____その時、互いに真実の愛に気づいた。


待つということがこんなにも苦しいことだとは思いもしなかった。会えないということがこんなにももどかしいものだとは思いもしなかった。すべてがまだ精神が幼いが故に犯してしまった過ちだとこの時初めて気づいた。

_______だから再会した時、蕾は大輪を咲かせた。

『京治君、夏になったらもう1回私の実家に行こうよ』

知らず知らずのうちに出ていたその言葉。

『また、あの丘に行ってさ、 のんびりしたいな』

桜吹く季節につまった思い出が、薫風に乗って私達の元へ。一面雪景色になる季節に過ごした思い出が、朔風に乗って私達の元へ。

「行こう。2人だけで」

2つの風が合わさったその時、私たちの物語は紡がれ始める。

すべてが始まったあの丘が、私たちをいつでも待っている。