魅力的
部活にはゆんちゃんと一緒に行った。マネージャー初日。
先輩のマネージャーにさっそく仕事を教えてもらう。一年のマネージャーは今のところゆんちゃんと私だけ。今後どうなるかは、顧問の先生次第だ。
私はいち早くマネージャーの仕事を覚えようと真剣に話を聞いていた。物品が不足したら足す事や、救急バックの中身の確認など。
一つ一つの仕事は大変ではないけど、問題は仕事の量が膨大ということだ。北一のバレー部は部員も多いから、その分だけドリンクを作らなければいけないし、いろいろ洗濯をしなければならない。
膨大な量の仕事量を聞き、意識が遠のきそうになった。運動部に関わるのは今回が初めてで、体力のない私にこなせるか分からない。夏本番になったら、選手よりも先に熱中症で倒れてしまいそうだ。
広い体育館を一回りして、マネージャーの仕事の説明は終盤に入っていた。
その時、選手は試合練習に移っていた。私は何故か真っ先に及川君の姿を探した。何故かと言うか、この中で知っているのは及川君くらいしかいないだけだけど。
及川君はまだ入部したての一年生だというのに先輩方を差し置いて試合に出場しようとしていた。心の中で彼にエールを送る。
昨日聞いた話だと及川君はセッターと言うポジションらしい。聞いたことはある。チームの司令塔というか、確かそんな存在だと言われた気がする。とにかく、彼の試合っぷりを見たい…!
いざ、試合が始まってみると、やはりルールはまだ完璧に分かっているワケではなかった。どうして今のが相手チームのポイントになったのか分からなかった。まだちょっと分からないことも多いけど、やっぱりどう見たってバレーは魅力的だ。
『やっぱり、バレーっていいね』
「そんなに虜になっちゃったの?」
『うん!見てて凄くハラハラする』
「名前が何かに夢中になるなんて珍しい事あるんだね」
言われてみれば。私には勉強しか取り柄がなかったから、何かに夢中になるということは少なかった。今まで夢中になったことと言えば、絵を書くことや歌うことくらい。でもそれはあくまで自分の趣味の範囲内だった。だから、こうしてバレーに夢中にさせてくれた及川君には感謝している。
夢中にと言ってもバレーを知ってからまだ2日目だから、これからもっともっと魅力に気づいて行くんだと思う。
そして、私を驚かせる出来事はその試合中に起こった。それは及川君のプレイスタイルの事。彼は先輩方に負けず劣らずのバレーを魅せていた。
ギャラリーから上がる歓声に、及川君はやっぱり凄い人だったんだと分かった。特にすごいのはサーブだ。的確且つ威力のあるサーブを放っては点数を稼いでいた。身長はまだ他の先輩たちよりは断然低い彼だけど、才能は十分にあった。
及川君のバレーが途轍もなく輝いて見えた。全部、全部、希望の光みたいに輝いて見えた。これは私の贔屓目もあるかもしれないけど、違う色のオーラを纏った彼のプレイスタイルに目を奪われたのは事実だ。
それでも彼のバレーには何かが足りないと思った事は胸の中に閉じ込めておこう。
その理由が分かるのはそう遠くはない未来の話。
「(あ……)」
ふいにプレー中の彼と目があった。一瞬だけだったけど、彼は笑った気がした。