百万粒の僕の天使
『…涼太君、あの女の人と付き合っちゃえば良かったのに』
「一体何のことっスか?」
出会って早々涼太君に向かって静かにそう呟いた。。何のことって昨日のことに決まっているだろう。
自分でも唐突だったとは思う。ただ、涼太君の何食わぬ笑顔を見た瞬間、途轍もなく悲しくなったのは確かだ。
情けない。私はもっと寛大な女だと思っていたのに。いきなりこんなことを言われてワケがわからないだろう。豆鉄砲を食らったような表情で私を見ていた。
『とぼけないで…。昨日一緒に歩いていた女の人は誰?』
「見てたんスか。あ、あれは……」
『ほら、すぐ答えられない…。』
今すぐにでも泣きたかった。あぁ、やっぱりそうなんだ。
「いやっス!俺は名前がいいんス!名前しかいらない」
『じゃああの女の人は誰…?』
「あの人は、何というか、俺の姉貴というか」
……涼太君のお姉さん?
よくある展開に驚いた。まさか自分がこんな展開に持ち込むとは思ってもいなかった。
どおりで彼女は美人だと思った。そういえば涼太君のお姉さんもモデルのお仕事してたんだった。涼太君との話の中でお姉さんのことは聞いたことはあったけど実際に見るのは始めてだった。
つまりは私の早とちりだったというわけだ。恥ずかしい…。顔から火がでそう。あぁ本当にやらかしてしまった。これじゃあ面倒くさい女決定だよ。
謝って許してもらえるわけないよね…。
『涼太くっ、ごめ…』
「いいんス。怒鳴られた時はショックだったけど可愛い嫉妬じゃないっスか」
優しく頭を撫でて頭にキスをしてくれた。
「はい、これ。ちょっと早いけど付き合って一年記念のプレゼント」
『……えっ?』
「内緒で姉貴と買いに行ってたんスよ。女の子って何を喜ぶのか聞いてたんス。」
『涼太君…。』
「ちょっとお二人さん。お取り込み中悪いけど……。」
私たちはここが教室だとすっかり忘れていた。さっきまで少し大きめの喧嘩をしてしまった。クラス全員がこちらを見ていたことに全く気付かなかった。
「あ、これには、その……」
『わ、わけがあって………』
どうしよう、みんなにバレてしまった。これまで隠してきた隠し事が、私の行動によってすべて台無しになってしまった。
「私たちが気づいてないと思った?クラスみんなが知ってるよ?」
「『えっ?』」
「おめぇーら全然怒りきれてないし、ケンカしてるお前たちの顔すっげぇ情けないぞ。」
嘘、私たちの演技は完璧だったハズ。私は涼太君と目を合わせて吹き出した。
私たちのこと、みんなにバレてたんだ。
「んじゃあこれからは遠慮なく思いっきりイチャイチャしよう、名前!」
「程々にしろ!」
クラス全員のツッコミを受けて、みんなが笑った。
このクラスにとっても私たちにとっても、また一つ思い出ができた。