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「名前……、か…。」
『久しぶり、だね。凛君…。』


昔はとても仲が良かったのに、どこかぎこちない会話。どうしてこうなっちゃったんだろう。

近くで見る凛君は随分大きくなったと実感させられる。同じくらいだった身長も、今では頭一つ分以上違う。月日の流れは計り知れないほど早い。小さい頃は一緒に居ても何も思わなかったけど、今は近くにいるだけでとてもドキドキする。彼は大人の男性により近づいたのだ。


「岩鳶に通ってたんだな」
『うん、家から一番近かったから。知ってると思うけど、ハルもマコも一緒だよ』


ハルとマコ。二人の名前を聞いた途端、凛君の眉がピクリと動いた。もしかして言ってはいけない単語だっただろうか。マコはともかく、何よりハルと言ったのはまずかったかもしれない。


「名前は、相変わらず変わってねえな」
『うそ?これでも結構大きくなったんだよ』

会話をしているうちにいつの間にかぎこちなさがとれて、自然と話せるようになっていた。それがまた嬉しくて、ついつい昔を思い出して語ってしまう。


「いや、変わってねぇよ…あの時と何も」


ポンポンと頭に重さが乗ったと思えば、愛しいものでも見るかのように目を細めた凛君が私の頭を撫でていた。ハルのものでもない、マコのものでもない、紛れもない凛君の手。実はこうして彼に撫でられたのは初めてだ。


『そういう凛君は、大人になったね』
「そうか?」
『うん、凄く大人びて、カッコよくなってるから私ビックリしちゃったよ』
「……っ!」
『あんまり大人びてるから、私よりも何歳も年上に見えるかも』

凛君の鋭い歯と歯がこすれ合うのを感じる。彼自身の拳は強く握られて、表情も強張り出した。…な、なにかいけないことでも言っただろうか…。怒ってらっしゃるとか。まさか老けたねと言われたと思っているんだろうか。違う、弁解させて欲しい、私は大人の色気が出たねと言いたいのだ。何かを言おうとしてもうまく伝えられないままあたふたしてしまう。

『あの、老けたとかそういうんじゃなくて、ただ純粋に大きくなったねって、…言いたくて』
「いや、分かってるって」


凛君が困ったように笑う。そして、何かをごまかすように、私の髪を乱暴にかき乱した。まるでペットを愛でるようなそれに、なすがままになる。

「引き止めて悪かったな、江ならもうあいつらんとこに帰ったぞ」
『え、嘘。ありがとう』

そうだ、凛君に言われるまで気づかなかったけど、私の本来の目的はコウちゃんを探すことだった。彼との再会が衝撃的過ぎて忘れていた。

「気をつけて帰れよ」

そう言い残して凛君はすぐ歩き出した。その背中は逞しくて、どこか切なかった。

凛君。

またあなたと話せて嬉しかったよ。こんな形で再会するとは思ってなかったけど、話してみてとても安心したよ。

貴方は変わってなんかいなかった。私と接する態度は変わってなかった。


きっと、今の凛君の態度には意味があるはずだ。

多分、ハルとの確執が消えないだけなんだ。その消えない感情のせいで気持ちを整理しきれないのだ。

いつの日か、彼らの確執が消えますように。

そう願うことしか、今の私にはできない。
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