私の場所−2
海南戦の翌日。
優の手には昨日の試合の余韻がまだ残っていた。
水戸は横を歩きながら、少し探るように声をかける。
「……なぁ、ひとつ聞いていいか」
「うん、何?」
「……昨日の清田のプレー、すげぇって思った?」
軽く笑うように聞いた声は、冗談みたいでいて、どこか探る響きがあった。
振り返った彼女の目は真剣だった。
「小さい頃から、アイツはバスケが上手かった。私、勝てなくて。今だって海南でレギュラーだし、正直……羨ましいよ」
そこで一度言葉を切って、深く息を吸う。
「でもね――それでも応援したくない。昨日すっごく悔しかった。この前言ったけど、私が応援するのは湘北。……そして、洋平くんだから」
その瞬間、水戸の足が止まる。
彼女を見つめる瞳に、驚きと熱が混ざった。
「……お前……」
言葉を探す代わりに、彼はぐっと距離を詰めた。優の肩を引き寄せると、強く抱きしめる。
夕暮れの路地裏。周囲のざわめきから切り離された、小さな世界。
「……バカ。そんなこと言われたら、俺、もう抑えられねぇよ」
耳元に落とされた声が震えていて、胸の奥にじんわり広がる。
抱きしめられた体から伝わる鼓動の速さに、優の顔も熱くなる。
「……洋平くん……」
「清田とか幼馴染とか、関係ねぇ。俺の隣にいてくれるのは、お前だけでいい」
そっと、背中を撫でる掌が優しい。
その一方で離してくれない強さに、彼の独占欲がはっきりと伝わってくる。
優は小さく笑って、彼の胸に顔を埋めた。
「……うん。私の場所は、ここだもん」
水戸の喉から、小さく安堵したような笑い声がこぼれる。
抱きしめる腕の力が、さらに強くなった。
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