◇1

旅立つには最高の日だ。

雲ひとつない空を仰いで、おろしたてのスカートをくるんとひるがえす。
たっぷりの布が動くたび波打つこのワンピースは、ばーちゃんが今日のために縫ってくれたものだ。
色は私の大好きなイエロー!
気持ちが弾むにつれて港へ続く一本道の足取りも軽くなる。駆け足になればなるほど気持ちの良い風が体中を吹き抜ける。

今日は旅立つには最高の日だ。
ただ、一つだけ気にかかる「点」を除けば。

「こらっ!おとも!!」

雲一つないはずの空に浮かぶ小さな「点」へ声を張り上げれば、頭上から黒いかたまりが羽をはばたかせ降りてくる。そして伸ばした私の腕に止まり、意気揚々 「カァ」と一鳴きしたのだった。
「やっぱりおともね?ついてきちゃダメって言ったじゃない」
素知らぬ顔で首をかしげるカラスの『おとも』は、数年前家の近くでケガをしていたのを手当てして以来どこへ行くのも一緒の、私の相棒。
でも今回ばかりは連れていくわけにいかない。
「いい?今日は遊びに行くんじゃないんだから。ハンター試験は危険なの!怪我したり、最悪死んじゃうかもしれないんだよ!ばーちゃんのところに帰りなさい!」
そう言い聞かせ、おともを空へ放つ。高く舞い上がるシルエットを見送り、よし、と気合いを入れて地面を蹴った。
……なのに、まただ。
あの「点」は私の忠告なんてお構いなしに再び後を追いかけてくる。
「もーっ!危なくなったり、はぐれたりしたら絶対帰りなさいよ!いいわね?!」
やけっぱちでそう叫んだら間延びした鳴き声がまた一つ、空から返ってきた。



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