お前達はいつもそうだB終

「新郎新婦が揃ってゲストをほっぽり出すなんて、前代未聞だわ!分かってるの?レオリオ!」
「ハイ!スミマセン!」
教会に着くとスタッフの女性が数人がかりでなまえに張り付き、ドレスの草や汚れを懸命に取り除いていた。当の本人はがっくりと背中を丸めていて、その横でレオリオは長身の背筋をさらにピンと伸ばし、直立不動。
今や物を教える立場の2人がまるで叱られる生徒のようだ。
「貴女もよ、なまえ!せっかくのドレスをこんなにして。どうして式の間くらいじっとしてられないの!」
「チードルさんごめんなさぁ〜い」
そして彼らの『先生』――チードルは目を吊り上げ容赦なく苦言を呈し続けていた。

「……なんで今日の主役が延々詰められてるんだよ」
キルアが嘆いた通り、我々が着席してしばらく経つが上座で繰り出される小言は止まる気配がない。
「チードル。もうそのへんにしておけ」
見かねたミザイストムが彼女を諌めたことにより、大幅に進行の遅れた披露宴がようやく再開した。

「で、何やってたっけ?」
「では改めまして友人代表の……」
「げ、そうだった」
司会のアナウンスを聞くなり斜め前のキルアがくしゃりと顔を歪め、項垂れた。
「オレ達スピーチの途中だったんだ」
キルアの隣に座っていたゴンが立ち上がる。ワンテンポ遅れて、キルアも渋々立ち上がった。
「やいレオリオ!なまえ!」
そんな時、ざわつく会場に一際大きく響いたのはハンゾーの声だ。

「せっかくゲストが揃ったんだ、もう一度チューしてみせろー!」
「はぁぁ?!」

その声に呼応して、晴れ渡る空には割れんばかりの歓声と拍手が巻き起こったのは言うまでもない。


「幸せな音色ね」
隣の席に座るセンリツはそう呟き微笑んだ。
「そうだな」
「ふふ、貴方の心音のことよ」
「……よしてくれ」
物腰柔らかな口調で不意をつかれて思わず息を吞む。
「こんなに喜んでるなら最初から素直に参列してあげればよかったのに」
そんなセンリツの言葉は聞かぬふりをして、オレはそっと彼女から視線を背けるしかできなかった。

視線を逃がした先、高砂の席では、レオリオに抱き上げられたなまえが照れくさそうに呼吸を整え、彼の頰に手を添えていた。
彼らの前には見覚えのあるブーケとペンダント。
花屋に見繕ってもらった、ジューンブライドに相応しい色合いのブーケ。そしてペンダントはクルタの伝説にある御守りを模して誂えさせたものだ。
あの御守りはクルタの守り神をかたどった台座に病気平癒や安産、豊猟、他にも願いによって付ける石を変える。
かつて軍艦島で拾った火難除けは赤い石。二人へ贈ったのは――藍の石。邪気を払い、持つ者の幸福を願う石だ。

友の行く末がどこまでも幸せであるように。そう祈って。

「おい!よそ見してんじゃねーぞクラピカァ!!」
「誰のためにもっかいしたと思ってんのぉ?!」
「さーんかーいめ!さーんかーいめ!」
「テメーはそろそろ黙ってろハンゾー!!」

6月の陽光に包まれ祝福を受ける二人の姿は、やがてここにいる全員の『未来の過去』となり刻まれてゆくのだろう。
胸を張って言える。
この時間を選び取ったことに後悔はないと。
今が過去になっても。この瞬間が自身の中で生涯燦然と光を放ち続けると。

END




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