お前達はいつもそうだA
「そうだよな、なまえ」
肩から退けた手を口元に当て俯き、やがて天を仰いでレオリオは笑い出した。
「なあクラピカ。オレがなまえと結婚しようと決めたのは、こいつとならずっと一緒に夢を追い続けられると思ったからだ。……そして同時に、例えそれが叶わなくなったとしても。この先どんなことが起こっても、オレはなまえと結婚したことを絶対に後悔しない。そう思った。だから籍を入れることを『選んだ』んだ」
濁りのない言葉だった。
今だけではない。2人の紡ぐ言葉はいつもそうだ。初めて会ったハンター試験の地下道で夢を語った時から、誰かを殺すことを望んだオレの傍らで彼らは誰かを救うことを望んでいた。
あの頃から、二人の爪先は常に前を向き、瞳は今と未来を見つめ続けている。
「お前はどうだ?お前が選ぼうとしてるのは、今が過去になっても後悔しないと思える『選択』か?クラピカ」
どうしてそんなふうに生きていられる。
「お前達は、なぜこうも変わらずにいられるんだ」
「お互い様じゃん」
突如ポツリと落ちてきた一言に全員が声の主、キルアへと向いた。
予想外に注目を浴びた様子のキルアは照れ隠しにうっすらと顔をしかめて両手を頭に乗せ、ゴンの方へ体を傾けた。
「なまえとリオレオが短絡的なとこも、クラピカが色々考えすぎて空回ってんのも。オレからしたら変わってねーなーって感じだけど。な、ゴン」
「たしかにね」
これまで静観していたゴンが輪の中に入ってきた。ゴンはにこりと笑顔を見せ、オレの手を引いて教会の方へ歩を進め始めた。
「クラピカも分かってるでしょ?どんな理由があってもレオリオとなまえはクラピカと友達止めようとするわけないって。オレ達ずっと仲間だよ。だから、一緒にお祝いしようよ」
ゴンの手は最低限の力しか込められておらず、その気になればすぐに振り払える。振り払えば、ゴンは決して深追いしないだろう。
「……再三忠告はしたからな」
オレはそう小さく呟き、逃げ場のない諦念とともに息を吐いた。ゴンの手を外す気には、なれなかった。
草を踏んで作られた5本の足跡が、教会へ向かって一本の道となって伸びてゆく。
これは直前までオレが手放そうとした道。すんでのところで指先に引っかかった、かけがえない仲間と歩く道だ。
「ったく。オレとなまえがいくら言っても手応えなしだったくせに、ゴンが言ったら聞くのな」
「おーい!さっさと戻ってこーい!」
「いつまで待たせんだー!!」
レオリオの悪態に混じり、待ちくたびれた会場のブーイングが聞こえたのを受けて花婿と花嫁は手を握り一足先に駆け足で戻っていった。
「クラピカの言ってること、オレは間違ってないと思うぜ」
二人が通り過ぎた草の匂いがまだ残る中、入れ替わるように今度はキルアが歩調をゆるめ、オレの横に並んだ。
「でも……それならオレも、式に出る資格ねーしな」
「キルア」
「ま、あんま難しいこと考えなくていいんじゃねえの?だってそもそもアイツらが考えてねーんだもん」
軽く肩をすくめたキルアが唇の端をほんの少し上げ、視線を外す。
彼の眺める先では風に膨らんだ白いドレスがタキシードと寄り添い、淑やかに青空を泳いでいた。
←back・next→
dream top
INDEX