「ナツが帰って来たってぇ!?」
「…!!」
「てめぇ、この間の決着(ケリ)つけんぞ!」
そう言って、立ち上がったのは一人の黒髪の青年。
ルーシィは突然のことに驚きながらすぐそこにいる男を見た。
「……」
な、なんというか。この人……、うん。
呆然とルーシィが立ち尽くしていると、
「グレイ、あんた何て格好で出歩いているのよ」
という女の人の声。
そう彼はなんとパンツ一丁で立っていた。
その言葉に男は、はっ!しまった!?と言いながらも服を着ようとはしない。
「これだから品のないここの男どもは……イヤだわ」
ゴクゴクゴクゴク
そう言って、その女の人は大きな樽に入った酒を傾けて、そのまま飲み始める。
もう開いた口が塞がらない。
その後も漢(おとこ)と叫んでいた男や「彼氏にしたい魔道士」というランキングの上位の男を目撃する。
「な、何コレ…。まともな人が一人もいないじゃ…」
あれ?思ってたのとは違うなーと思いながら、そう言ってはぁとため息をつくルーシィ。
「あら、新入りさん?」
「!!」
すると、可愛らしい声が聞こえてルーシィは1度閉じた目をパチっと開けた。
目の前にいたのは驚きの人物だ。
「ミ…ミラジェーン!!」
ニコニコと微笑んでいる彼女に向けて思わず声を上げた。
「キャー!本物〜!!……はっ、あ、アレ止めなくていいんですか?」
一瞬浮かれたルーシィだが、先程よりも酷くなったギルドの騒動の方がどうしても気になり、そう尋ねる。
机やイス、所によっては床までボロボロだ。
中には下敷きの人もいるし…。
あ、ナツが机を持って振り回してる。
あの体のどこからあんな力が出てくるのだろう、と遠い目をしながらルーシィは考える。
「いつもの事だから、放っておけばいいのよ」
「あららら」
すると、全く気にしたそぶりを見せずそう言い切るミラジェーン。それを聞いてルーシィは苦笑する。
あ、いいんだ。と思いながら。
「それに……」
とミラジェーンが言いかけた時、
ガン!
とお酒のボトルが何処からともなく飛んできて、彼女の頭に直撃する。
彼女はニコッと微笑んだままパタッと倒れてしまった。
「キャーー!!ミラジェーンさんっ!」
「それに……」
それに驚きルーシィは慌てて駆け寄る。
しかし、ミラジェーンはこちらの心配をよそに先ほどの言葉を言い直す。
そして、むくっと立ち上がると先程よりももっといい笑顔で、
「楽しいでしょ?」
とルーシィに笑いかけた。
ミラジェーンの頭からはダラリと赤い血が出ている。
楽しいというより、怖いですっ!と心の中で叫ぶルーシィ。
本当に大丈夫か、ここの人達。などと思っていれば、何かが飛んできて慌てて避けた。
ズシャッ!
という大きな音が聞こえて、そちらを見れば先ほどのグレイと呼ばれていた青年がいた。
彼の飛んできた先を見れば、
「へっへーん」
とパンツを持っているナツ。
ま、まさか…!?
「あーー!オレのパンツ!!」
という声が聞こえてる。
て、てか!
「こっち向くなーっ!!」
とルーシィは慌てて目を隠した。
すると、そのまま近づいてきた彼は、
「お嬢さん、良かったらパンツを貸して……」
「貸すかーー!」
パンツを貸せと言ってきたので、ルーシィは目を覆っていた手で彼の顔面を殴る。
そして、出来るだけ見ないようにと違う方向に視線を向けた瞬間、ふわっと体が浮く。
「やれやれ、デリカシーのない奴は困るよね。ところで君、どこのモデル?」
「何コレ!?」
何故か週刊ソーサラーの彼氏にしたい魔道士の上位ランカー、ロキにお姫様抱っこをされている。
どうにか降ろしてもらい、周りを見回す。
何が何だかさっぱりだ。、全く頭がついていかない。
「漢は拳でーっ!」
「邪魔っ!」
漢と叫んでいた男はナツに吹っ飛ばされた。
「あー!うるさい。落ち着いて酒も呑めないじゃないの。あんたらいい加減に…しなさいよ」
という先程、大きな樽で酒を飲んでいた女性が言うのに続いて、
「アッタマきた!!」
「ぬおおおお!」
「困った奴らだ」
「かかってこい!!」
という風にみんなが魔法を使おうとするのが分かる。
「魔法っ!!?」
と、みんなの行動に冷や汗をダラダラと浮かべながらルーシィは声を上げた。
「これはちょっとまずいわね」
ルーシィのすぐ近くにいたミラジェーンも、先程とはうって変わり困ったような顔をしていた。
今にもみんなが魔法を使おうとしたその瞬間。
「そこまでじゃ」
という声がギルド内に響いた。
ズシャッ
という足音が聞こえたと思ったら、
「やめんかバカタレ!!!」
という大きな声。
視線を上へと動かせば、大きな人が一人。
「でかーーっ」
というルーシィの声だけがギルドに響いた。
(非日常…?)
(いや、日常のはじまり)