隙だらけな僕らの攻防戦


(本編とはちょっと違います。もう既に刀剣達は夢主をちゃんと認めています)


あれから何やかんやあって、刀剣達と和解することが出来た。(別に喧嘩していたわけではないけど…。)
怯えられたり、睨まれたり、斬られそうになったりすることは随分と少なくなったというかもう殆どないが、逆に何もなさすぎて不安というか妙に気が張るというか、不思議な気持ちで日々を過ごしている。
ボロボロだった本丸もみんなで綺麗にしたし、澱んでいた空気も綺麗になったためか、ほんの少し前までの姿はどこへやら立派な本丸へと様変わりした。
うん、満足。満足。と1人腕を組み満面の笑みで頷いた日から少し経った。


「主様ー!遊んでください!」
「今日は鬼ごっこ!」
「いや、隠れんぼ」
「えっと、けいどろ?どろけい?なるものをやってみたいです」

本日はお日柄も良く…、ってなんか違うな。これじゃあ硬っ苦しすぎる。今日は雲1つない晴天である。陽射しは暑すぎず、むしろ丁度良い。縁側でぼんやりと、遊んでいる短刀ちゃん達の楽しげな声を聴きながら、うとうとと微睡みに沈みかけていた。はっとみんなのその声で意識が浮上する。いつの間にか私を取り囲んでいる短刀達は、各々が自分の好きなように喋りながらもこちらに語り掛けてくる。みんな元気があってよろしい。なんて笑っていれば、何がしたいかとも問われる。

何がしたいか、ね。うーん。正直何でも良いんだよねぇ。

「えっと、じゃあ今日は鬼ごっこしよう」

これで何でもいいと言うと収拾がつかなくなってしまうのでちゃんと意見を言う。昨日は隠れんぼしたから鬼ごっこにしておいた。そして今度他のもやろうねと笑った。


「じゃぁ俺が鬼する!」
「じゃあ僕も!」


厚くんと乱ちゃんが立候補。二人とも足速そうだなと思いながら、他の短刀ちゃん達と一緒に距離をとる。


「___8、9、10!よし、さっさと捕まえるぜ!」

二人が数え終えたと同時にぎゃーとみんな一斉に散らばる。自分も例の如く走り出し、久しぶりの鬼ごっこを全力で楽しむ。


「大将ー!」
「うわっ、危なっ」
「ちぇ、待てよ!」
「待たない!」


厚くんは速い。後ろから追いかけてくる彼の表情を盗み見るがまだまだ余裕そう。反対に自分はあまり余裕ではない。時々不意に方向転換したりしてどうにか撒く。しかし、段々と距離は縮まり遂にはぽんと肩を叩かれる感覚。


「よっしゃ」
「あー、仕方ないかあ。よし、私も頑張ろ」


タッチした途端私から距離をとる彼は早速博多くんに追いかけられている。私もこちらを窺う秋田くんをロックオン。追いかけ始めて気づく。この子も速い。途中小夜くんに標的を変え、走る走る。

よし、タッチ。鬼の交代だ。

そんな感じでわあわあと代わる代わる鬼が代わりながら鬼ごっこを続ける。しばらくの間みんなで忙しなく駆け回っていた。流石にそんなに沢山体力は無いから疲れて途中で抜けた。
また縁側のところで駆け回るみんなをしばらくの間見つめる。こんなに笑顔が溢れているんだ。きっといい本丸になるはずだ。そうなって欲しいなんて思いながら。



「さてと…」

そろそろ仕事をしようと重い腰をあげる。しかし、これからが勝負である。短刀達と別れて廊下を歩きながら一人心の中で意気込む。周りに刀がいないのは確認済みだ。そして1度自室により例のものをとる。

「……よし」

忍び足でゆっくりと廊下を進む。
音を立てないように慎重にということを意識し、周りの気配を一生懸命探りながら人気(刀気?)のない廊下を歩く。片手には先程自室から持ってきたペンやらマーカーやらの文房具が入った落ち着いた深緑色のペンケース、もう片手には少し分厚めの茶色い封筒。周りをキョロキョロと確認しながら歩く自分の姿は、傍から見れば不審者のようにしか見えないだろう。しかし、この行動をしているのにはしっかりと理由があるわけで…。
廊下を曲がり、とある部屋の前まで来るとまた周りを見回す。


「…誰もいない、よね」

声を殺してそう呟くとその部屋の襖を開けてサッと中へと入り、音を立てないように戸を閉めた。
そしてその部屋を進みその先の障子を開けてもう1つ奥の部屋へと入った。
ふう、と安堵して息を吐くとその場に座る。
他の部屋より少しだけ狭いこの部屋は、隠れるのに打って付けの場所である。壁際に置かれている木の机に手に持っていたそれらを置くと正座をした。
茶色い封筒の中に入っていた書類を取り出し机に広げ、ペンケースからボールペンを出した。


「よし!始めるか!」
「…何をだ」
「もちろん、仕事!……へ?」
「……」


この部屋には誰もいないはずだった。そう、誰も。
しかし、誰かの声が後から聞こえてきた。
ギギギ、とロボットのような動きでゆっくりと後ろを振り返る。そこにいたのは………いや、何もいないよ。うんうん。全然山姥切さんがいたとかないよ、ないない。幻覚、幻聴とかそんな類のものだよ絶対。と、若干現実逃避気味に考えながら前を向いた。
背中に突き刺さる鋭利な視線を無視して、思考を一生懸命巡らす。まだこの場所を探し当てて3日しか経ってないはずである。何故バレだ…?いや、いずれはバレるとは思ったけど早すぎる。てか、この人いつから居たのそこに…。確かに彼のいるところは死角ではあるけど、流石に気づけよ。私のバカっ!なんて今更思っても遅いわけで。


「あまり無理はするな」
「いや、してないです。はい!本当に!だからそんな疑いの目で見ないで!大丈夫だから!」


最近やっと打ち解けてタメ口でしゃべれるようになったが、思わずポロリと出たのは敬語。


「この前倒れたのを忘れたのか?」
「いや、忘れてないけどね。仕事はしないと…」
「……」
「……」


そう、私は先日倒れてしまったのだ。別に自分の中ではそこまで疲れているつもりは無かったのだけれど、慣れない日課の報告やら本丸の管理やらでおもったよりも体は疲れていたらしい。お風呂に入ったあとまた書類仕事を再開しようとか何とか考えながら、歩いていれば目の前が真っ白になり突然体の力が抜けた。そしてそのまま廊下でバタンと倒れたのだ。

そのためか薬研くんにはお説教されるし、その他短刀ちゃんには泣きつかれるし、仕事をしようとしたら目敏いことにすぐ気付かれてまだ休んでいろと布団に縫い付けられるのだ。しかし、休んだ分だけ書類は溜まる溜まる。少し体調不良だと報告して軽減して貰ったが、しなければいけないものは、しなければいけない。
だから、暫くは少し外の空気を吸ってくるだとか何とか適当に理由をつけたり合間を縫って片付けていた。
体調も随分と良くなった。短刀達と遊べるくらいには元気になった。

しかし、この対応。さては君たち過保護か!?なんて叫んでやりたい。


「本当に本当に大丈夫だか_」
「主はここか!!」
「__ら?………え?」

バンッ

ぎゃあああ!何で分かるの!?怖すぎ、怖すぎるよ。
入ってきたのはへし切長谷部さん。この人めっちゃ命令しろと言ってくるんだよね。いや、良いんだけどね。「この前仕事するのを止めてくれるな」って命令みたいにして言ったら「それだけは出来ません。まだ安静にすべきです」なんて言いやがるんだぜ?いや、大丈夫だから。そのため最近は毎日短刀ちゃん達と遊んで「私、元気だから!」って云う主張を繰り返してはみるが効いているのだろうか?

短刀ちゃん達と遊ぶのは止められないのに、何で書類仕事は止められるの?この本丸ある意味怖いよ。
これじゃあ書類の消化が追いつかなくてさ、いつか「私の仕事の量がブラックな本丸」になってしまうじゃん!!通称ブラック本丸じゃん…!?

もうやだ。そう呟いてため息を聞こえない程度にする。この先のことを考えると軽く頭痛がした。

「大将はここかっ!」
「主様ー、鬼ごっこの次は隠れんぼですか?」
「……」

またまたバタンと音がしてそちらを見れば、先程まで遊んでいた短刀ちゃん達が…。なるほど、この場所はバレバレだった訳ね。なんて思いながら苦笑を零した。

前よりは幾分かマシ、…いや全然良いんだけどね、これはなあ。……仕事をさせてくれ!なんてまるでワーカホリックのように心のなかで全力で叫んでおいた。


(主、茶を淹れたがどうだ?)
(主!今日の夕餉はどうしようか!)
(………はぁ)



◇◆◇◆◇◆◇
リクエストありがとうございました!まだまだ先の展開なのでどう書いていくか迷いましたが、半分は少し未来の話、残り半分はifを書いているつもりで書きました。長編の方はどうなって行くのかは楽しみにしていてくださいね!今回は本当にありがとうございました!

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星の唄聲が聴こえない