殺連本部の前を再び通り過ぎ、十数分。到着したのは十二階建てのマンションだった。神々廻の所有するセーフハウスのひとつらしい。
二つ程度の所有ならまだしも、いくつもというのは一般殺し屋には中々できることではない。さすがORDERだなんて考えていたら、「いうて、ここはそこまで大きくないで」と神々廻が付け足すものだから、ナマエはさらに驚いてしまった。
マンションは一階部分がコンビニ、地下は機械式駐車場となっている。車を降り、慣れた様子で専用パネルを操作し終えた神々廻は、ナマエが降りると同時に、荷物を当たり前のようにさらっていき。そうして代わりとばかりに空いた手を握ると、「こっちやで」と歩き出した。
繋がれ、少しだけ強く引かれた手。──逃げられないようにされたのだと気付いたのは、神々廻がエレベーターの最上階ボタンを押したときになってようやくだった。
「ちょお、そこで待っとき」
上り框を上がるや否や、神々廻はそう言って玄関から一番近い一室へ入って行った。開いたドアの先ですぐに電気がつけられる。しばし、ごそごそと音が聞こえ。すぐになにかを抱え帰ってきた。
「これ、タオルと着替え。大きいやろうけどそれ着てや。あと、風呂ん中に前買ったクレンジングの残りあるから、化粧落とすのはそれ使い」
柔らかいバスタオルに、それより少し小さめのタオル、綺麗に畳まれたネイビーのスウェットの上下がナマエの腕に乗せられる。
「え、クレンジングあるんですか」
「傷隠すのに化粧することもあんねん。たまにやけどな」
神々廻は笑いながら、自身の傷痕をとんとんと叩く。
たしかに以前、傷のない神々廻を本部で見かけたことがある。その際にも同じような返しをされたことを思い出した。なるほどそれ用のものが残っているらしい。
「ありがとうございます…ありがたく使わせてもらいます」
「ん、どーぞ。……あ、そうや忘れとった」
あまりの至れり尽くせりにナマエが感動を覚えていると、神々廻がふと、思い出したようにこぼし。再び先ほどの部屋へと戻っていった。
今度は目当てのものはすぐに見つかったのか、一分と経たず戻ってくる。そうして持ってきたものを「ん」と、スウェットの上に置いた。
「…え、」
渡されたものがなにか認めた瞬間、ナマエは間抜けな声を漏らしていた。
それは下着だった。神々廻の自宅にあったのだから、当然のごとく男性物。色はグレー、ウエストのゴム部分が黒の、アパレルショップでもよく見るデザイン。綺麗に袋に入ったままなところを見るに、新品なのだろう。ちなみに、ボクサータイプ。
何故これを自分に渡したのか。理解できず固まるナマエに、神々廻はなんてことない顔で、
「さすがに女モンはないから、とりあえずそれで我慢してな」
と言い放った。一瞬、理解が遅れるも、はっと気づき。ナマエは「いやいや!」とようやく声を上げる。
「なに、どしたん」
「どうしたじゃないでしょう!え、な、なんで下着…?」
「シャワー入るんやし、今日と同じの着たないやろ。あとちゃんとサラのやし、汚くはないで」
「さら…?」
「新品ゆう意味」
「ああ…、や、違くて……」
どこがおかしいのか、といった様子の神々廻に「ああ気にしてくれていたのか」と一瞬納得しかけるも、それでもさすがに恋人の前で男物を履くのは、とナマエの羞恥が待ったをかける。
ナマエは下着と、ついでにバスタオル諸々を一度まとめて神々廻に突き返す。
「下にコンビニあったでしょう…そこで今から買ってきます」
「え、あかんよ」
「なんでですか……別に逃げたりしませんよ」
「ちゃうちゃう、そうやなくて。普通に見たいから」
「見たいって、なにを…」
「ナマエが俺のパンツ履いとんの」
「は…、」
見たい?自分が、神々廻の下着を履いている姿を?まさかの返しに、ナマエはいよいよ言葉を失ってしまった。
たしかに、世の中には男性用の下着を履いている女性もいると、雑誌で紹介されているのを読んだことがある。女性用ショーツと違い男性のものは鼠径部が締め付けられないから、リラックスするのに向いているのだそう。
ただそれはあくまで、誰もいないとき、部屋着のひとつとして着るのであって。これから、"セックスをします"という雰囲気の中で着るのは、なんというか、少し違うのではないか。
なにより、こう言っては身も蓋もないが、神々廻はそれで興奮できるのだろうか。
けれど提案してきた、どころか「視たい」とまではっきり言い放つところをみるに、自分の下着を履かせることが性癖、なんだろう。誰って、神々廻の。
他の女が置いていった物を渡されたわけではないと安堵するべきなのか、それとも予期せぬ癖の開示に戸惑うべきなのか。もはやナマエには分からなかった。
「せやから大人しく入ってき」と神々廻に文字通り背中を押され。ナマエは呆気に取られたまま、風呂場へと押し込まれたのだった。
結局言われるまま、ナマエは用意された下着を履いていた。
だって、仕方がないだろう。神々廻の言う通り、一日身に着けた下着をもう一度というのは、男物どうこうを抜きにしても嫌だったのだ。
──なんて、心中言い訳をしつつ。悔しいかな、ボクサーパンツは思っていたよりずっと快適だった。サイズがゆったりと大きいおかげで、一分丈程度のショートパンツのようになり。噂通り鼠径部も締め付けられず、仕事でむくんだ足も労われるのだ。
ただ当然男性用なのだから用を足すときのための、いわゆる前開きがあるわけで。布の余裕がある分そこのわずかな違和感は拭えないが。逆を言えば問題はそこだけなので、恥ずかしささえ払拭できればいいのかもしれない。とはいえナマエは今後着ることはないだろうが。
そんな中でもさすがにブラジャーだけは同じものを着けている。今日はそこまで汗もかいていない。ショーツよりはまだ許容範囲だし、なによりノーブラというわけにはいかないから。
黒いブラジャーに、グレーのボクサーパンツ。サニタリールームの大きな鏡に映る、なんともちぐはぐな自分から目を逸らしながら、ナマエは大きなスウェットをすっぽり被り。最後に軽く髪を整えると、静かにその場を後にした。
「化粧水とかなんや、そういうのここにまとめとるから。好きに使うてもろて構へんよ」
神々廻はそう言って、ボトルやクリームがいくつか入ったワイヤーバスケットをナマエに手渡すと、入れ替わるようにシャワーへと向かった。
ナマエはリビングの中央に置かれた大きいソファに腰掛けると、バスケットの中を見る。──化粧水、乳液、美容液に、ナイトクリーム。その他にも色々と入っている。しかもすべて同じブランドのもの。
そのあまりの豊富さに、前の女が置いていったものかとまた邪推してしまう。が、よく見ればほとんどがまったくの新品、もしくは使い始めたであろうばかりのもので。それなりに値段のするスキンケア用品をライン使い。これはここの製品を愛用している証拠だろうと、そんな考えは瞬く間に消え去った。思い返してみればクレンジングも、ここのブランドのものだった気がする。
確かに神々廻さん、肌綺麗だもんな。あそこまで髪を伸ばしてるんだから、そりゃこういう手入れを面倒臭がるタイプじゃないよな。
ケア用品はプチプラだったりブランドだったりと気分によって使い分けるタイプのナマエは、その美意識の高さを見習わなければと思いながら、ありがたくもその一式を使って普段より幾分か丁寧にケアをしていく。
最後にナイトクリームを塗り終えたところでひと息つく。ようやく少しばかり落ち着いてきた気持ちに促され、ナマエは何気なく部屋を見回す。
先ほど玄関で待っていた際、このリビングに続く廊下の道中には三つ扉があった。ひとつはナマエが押し込まれたサニタリールームで、残りは寝室と、なにか趣味用の部屋といったところか。神々廻が下着をその部屋から持ってきたところを見るに、クローゼットなのかもしれない。
2LDK、オートロックのマンション。一人で住むには充分すぎる広さ。それを象徴するように、リビングには今ナマエが座っている三人は余裕で座れそうな大きいソファに、ローテーブル、先ほどまでケア用品のバスケットが入っていた棚と、壁付けのテレビだけしかない。
あまりの物の少なさに、一見するとその広さも相まって寂しさを覚える様相をしている。けれど細部をよく見れば、カウンターキッチンには冷蔵庫と電子レンジといった最低限の家電だけでなく、シンプルなカップがいくつかと、コーヒー缶に、コーヒーメーカーらしきものも見える。コーヒーに一家言を持つ神々廻らしい品揃えだ。
それに今座っているソファだって、座り心地も良ければ、肌触りだって良い。ここでテレビを見たり本を読んだり、何時間でものんびりしたいと思わせる造りをしている。
ここに来るまでの車内で神々廻は、「セーフハウスん中でも、一番長く使てるんよ」と言っていた。このシンプルな部屋を気に入っているのだろう。物は少ないが、手を入れているのが分かる、そんな部屋だった。
ここが、神々廻の家。神々廻が心を落ち着かせることのできる空間。そんな場所に招き入れてもらえた。──それがひどく、嬉しい。
落ち着けたおかげでそう実感でき。今さらじわじわとわいてきた気恥ずかしさに、ナマエは思わずソファの上で膝を抱える。すると途端に、スウェットから神々廻の香りがして。普段いい香りだと密かに感じていた匂いが、実は香水でなく柔軟剤だったのかと、新たに気付いてしまい。ますます頭を抱えることになってしまった。
「ん」
なんて、ごちゃごちゃと考えてたら、突然目の前にドライヤーが差し出された。
現れたそれにナマエの肩が跳ねる。驚いて振り返れば、ソファの背もたれの向こう側、いつの間にかシャワーを終えていたらしい神々廻がドライヤー片手に立っていた。
ナマエと同じ、けれど色は薄いグレーのスウェットを着ている。いつもかっちりしたスーツで、しかも色の濃いものが多いから、ラフで少し明るい色合いのものを身に纏う姿はなんだか新鮮だった。
「髪、乾かさんでええの?はよ乾かさんと傷むやろ」
言われて、そういえばと気付き。ナマエは「すみません、ありがとうございます」とドライヤーを受け取る。
「オイルとミルクは化粧水とかと一緒んとこ。あとコンセントは、テーブル横に延長のんあるから」
棚とテーブルの下を順番に指差しながら、神々廻はそのままキッチンへと入って行った。
タオルを二枚準備から始まり、クレンジング、化粧水、果てにはヘアミルクにオイルまで。どこまでも至れり尽くせり、すべて先回りで欲しいものをくれる。さすが、普段大佛の世話を焼いているだけある。その面倒見の良さに、ナマエはいっそ尊敬の念さえ抱いてしまった。
ヘアミルクを梳かし、タップに繋いだドライヤーをつける。耳元でゴーと大きな音が響き、ナマエは目を閉じる。乾かすときの癖だった。
ふと、身体がわずかに横へ傾き、神々廻が隣に座ったのだと気配で気付く。おそらく、こぶし一つ分程度の距離。
ソファは一人暮らしにしてはかなりの大きさだ。にもかかわらず神々廻は広々使うことなく、ナマエのすぐ隣に腰掛けている。
じわりと、妙な生々しさが漂った気がして。ナマエはわずかに跳ねた心臓を誤魔化すようにドライヤーの風量をひとつ上げる。
そうして風量を上げたおかげで、髪はあっという間に乾いてくれた。ドライヤーを止め、オイルを使い手櫛で整えれば、ナマエの入浴後のケアはひとまず終わりだ。
すると、それを待っていたとばかりに、神々廻はナマエに「ん」と、今度は水の入ったグラスを差し出してくる。
「飲んどき」
「ありがとうございます…」
ナマエはお礼を言って、代わりにドライヤーを神々廻に渡す。代わるように、今度は神々廻が髪を乾かし始める。
冷たい水が温かい身体を通る感覚に、思わずほうと息をつく。半分ほど飲んだところで、ドライヤーの音が止まった。テレビもつけていないせいで一気に部屋が静まり返る。
「はー、ほんま、髪乾かすんは毎回あっつくてかなわんわ」
神々廻はくるくると雑にコードをまとめると、そのままローテーブルに放り投げるように置いた。壊れますよと思いながらそれを横目で見ていると、「なに、ぼーっとしとるん」と、遮るように、ソファの背もたれに腕を掛けた神々廻が距離を詰めてきた。
まるで、食堂でキスされたときのような近距離。見えた翡翠の瞳に、ナマエの身体が固まる。思わずグラスを両手で掴んでいた。
「………」
「………」
「…スッピン、初めて見たわ」
「それは………そうでしょうね…、」
「ふ…せやなあ。あんま変わらへんねんな」
「…そうですか?」
「うん。どっちも可愛え」
あ、ぶなかった。変な声が出そうになった。
声を押し殺す代わりに、ナマエはきゅっと唇を噛み締める。けれど動揺はしっかり伝わってしまったようで。神々廻は「なんやねんその顔」とくつくつ笑っていた。その度かすかに息が唇を撫でていく。距離が、近い。
「神々廻さ、」
「このソファなあ、俺が寝てもちょい余裕あんねん」
「え…あ…、確かに大きいですもんね…」
「せやねん。くつろぐには最高なんよ」
言いながら、神々廻はさらに距離を詰める。ついに太もも同士が触れ合う。同時に、こつんと膝が当たり。ナマエの肩が大きく跳ねた。
「そんなビビらんと」
「や…びびってるわけでは…」
「うん、分かっとる。緊張しとるだけやんな」
神々廻はまた小さく笑い。そうして、ナマエが持ったままのグラスを見やる。
「半分しか飲んでへんやん」
つい、と。神々廻の指先が、グラスを持つナマエの手の甲を撫でる。
「これから汗かくんやから、しっかり水分取らな」
言った瞬間、翡翠の三白眼がすうと細まる。
神々廻の纏う雰囲気が変わる。熱と色を帯びたその空気に、ナマエは背中が粟立つのを感じた。
神々廻はナマエの手からグラスを取り上げると、静かにローテーブルの上に置く。そうして、その手をそのままナマエの後頭部に回し、
「ししばさ、」
戸惑ったように呼ばれかけた名前を遮り、唇を重ねた。
「ん…、っ」
「ほら、口開けえ」
「え、ぁ…」
神々廻は空いた手をナマエの頬に滑らせ、親指でやや乱暴にナマエの口を開かせると、無理やり舌を差し入れる。
歯列を割り開いた舌は、逃げようとする小さな舌を追いかけ。絡まり溢れる唾液を混ぜ合わせながら、口内を蹂躙せんと蠢く。
「ふ…んん、ッ」
弄ぶようなそれに、互いの口内にはナマエの苦し気な声が響く。けれど神々廻は聴かず。むしろ徐々に力の抜けていく身体が好都合とばかりに、伸し掛かるように体重をかけていき。あっさりとナマエをソファに押し倒してしまった。
「ふ、ぁ…はあ、は…っ」
細い喉が上下するのを認め神々廻はようやく唇を離す。
互いの唇を繋ぐ糸がぷつりと切れ、ナマエの顎を汚している。それを親指で拭ってやりながら、神々廻はたった数時間前、初めてそこに触れたときのように、濡れるあわいを辿りなぞる。
酸欠で涙が滲み、とろりと蕩けた目が、神々廻を見上げた。
「…ベッド行こか」
返事を聞く前に、神々廻はナマエの腕を引く。おぼつかない足でふらりと立ち上がったナマエはその言葉に、ただ頷き返すことしかできなかった。
「あの、私、したことなくて…」
蚊の鳴くような声で呟かれたそれに、神々廻はスウェットの中に突っ込んでいた手をぴたりと止め。寝転ぶナマエにゆるりと視線を向けた。
知ってます。心の中でひっそり呟く。
というのも初めて会ったあの日から、神々廻はナマエの生い立ちを可能な限りすべて調べていたから。これはあくまで、秩序を守るORDERとして素性のまだ分からぬ新人を知るため、なんて。今思うとかなり気持ちの悪い言い訳をしながら。
だから、ナマエがこれまで誰とも交際したことがないというのは把握していた。一夜だけの相手、なんてものがいなかったことも。
別に、神々廻は処女信仰があるわけでもない。まして他の男を知っていたとて、特に不満に思うことはない。
ただ、それはそれとして。好いた女の初めてが自分というのは、まあ普通に嬉しいわけで。しかも本人からそれを教えてもらったとあって、神々廻の心臓は分かりやすく踊っていた。
神々廻は「そうか」と、なるたけ平静を装いながら言い。気だるげな眦を薄く弧に歪める。
「ほな、優しくできるよう頑張るわ」
それはナマエに対してというより、もはや自分自身の決意表明と言った方が正しかった。
薄く開かれた唇にキスをする。差し込んだ舌を絡ませながら、神々廻はナマエの背に手を回しブラジャーのホックを外す。そのままスウェットと共に取り去れば、ナマエの上半身はあっという間に裸にされてしまった。
寝室は、ほんの少し目を凝らせば互いの顔が分かる程度の仄暗さに保たれている。ということは神々廻の目には、なにも身に纏わないナマエの身体がはっきりと見えているわけで。
羞恥心と、温まった身体を撫でる冷たさに肌が粟立ち、ナマエは咄嗟に自身を隠すように抱き締める。けれどそれより神々廻の方が一瞬早く。大きな手がさらけ出された双丘をすっぽり覆っていた。
ナマエの身体がわずかに震える。神々廻は一度、伺うようにその反応を見やり。けれどそこに拒絶が含まれていないことを見て取ると、手の動きを止めることなく、やわらかく揺れる丘の先端でまだ少し縮こまる突起をきゅむっと摘まみ上げた。
「ぅあ…、ッ!」
今度は身体全体が大きく跳ねる。けれどやはり痛がっている様子も、まして怖がっている様子もない。
そのまま乳輪の周囲をなぞり。撫でて、軽く潰して、またやわく摘んで。すると突起はこりこりと硬く芯を持ち、淡く色付きながらぴんと勃ち上がっていく。
「や、あっ…、ぅあ、ぁ…、ッ」
あまやかに声を上げる唇を塞ぎたい衝動に駆られるも、それ以上に、鼓膜に残したいとも思う。だから神々廻はキスの代わりに、やわらかな身体に口付けた。
胸を揉む手はそのままに、神々廻は首や鎖骨、肩口に吸い付く。その撫でるようなキスがくすぐったいのか、甘い声に「ふ、っ、んぅ」と押し殺したような音が混ざり始める。
「や、あぁ…っ!」
ゆっくり顔を下ろしていき、そうして、ぷっくりと勃っている突起を口に含む。強く吸い上げ、唾液を絡ませながら全体をぐるりと舐め回し。時折軽く噛んだり、押し潰したりしながら、まるで口付けでもするように好き勝手に弄んでいく。
「はっぁ、あ…!んうぅ…、っ」
あたたかくぬめる舌から与えられる快楽は、やはり手と質が異なるようで。ぢゅうっと音を立て吸い上げれば、ナマエの声はわずかな掠れと共にオクターブを上げた。
ずいぶんといい反応をしてくれる。胸だけでこの反応ができるのなら、確信に触れれば、いったいどうなってしまうのだろう。
期待と興奮が神々廻の脳みそを蕩けさせていく。すっかり硬くなった突起を夢中でしゃぶりながら、神々廻は手を滑らせ、器用にスウェットのズボンだけを脱がしていく。
「あ、まって…、」
舐められている間、わずかに足を擦り合わせただけで、そこがどうしようもないほど濡れてしまっていると分かっていた。だからズボンから片脚が抜かれた瞬間、ナマエは咄嗟に脚を閉じようとする。
「閉じたらあかんよ」
けれどそれを神々廻が許すはずもなく。膝裏を掴まれ、ぐいっと外側に大きく広げられてしまった。
神々廻の眼前に、一部だけ色の濃くなったボクサーパンツが現れる。
あー、えろすぎ。頭の中はなんとも馬鹿みたいな思考でいっぱいだというのに。躊躇いなく言葉にするほど切望していた光景を目に焼き付けたいと、神々廻は黙したまま、じっと濡れるそこを見つめていた。
そのあまりの熱視線に、ナマエは勘弁してとばかりに、汗の滲むこめかみを枕に擦り付け懇願する。
「っ、せめて電気消してくださいよぉ…」
「嫌や。見たい」
「ええぇ…」
「ほら、力抜き」
わがままな子供みたいなその返しに、呆れながらも少しだけきゅんとして。そうして素直に脚の力を抜いてしまうのだから、自分はなんて単純なのだろうとナマエは思った。
ゆっくり開かれた脚に、神々廻は「ええ子」と呟き。褒めるように膝の辺りにキスを落とす。
「はは、すっご」
色の濃いそこへ、神々廻は形を確認するように指を軽く這わせる。響いた粘着質な音に誘われ指を押し込めば、じわりと濃い部分が広がっていった。
「は…ぁう…あ、んん…ッ!」
かくん、とまるをで腰を押し付けるような動きは無意識なのだろう。知らないながらも快楽を追う身体の素直さに、神々廻は笑みが浮かぶのを抑えられなかった。
たまらなくなり、神々廻はすっかり意味を為さなくなった布越しにぬるぬると筋を辿り、濡れてぴたりと張り付く前開き、その合わせの下でゆるく主張し始めている突起を探り当て、少し強めに押し潰す。
「いっ、あ゙…ッ、!?」
これまでとは少し違う、喉の奥から押し出したような声。布越しとはいえやはりここは格段に快感の質が違うらしい。
今度はもう少し強めにそこを圧迫しながら、左右に弾くようにぐちぐちと指を動かす。
「ああ、っあ…!ひ、ッあ…!」
かりかり引っかいたり、こねたりしてやれば、みるみるうちに突起は硬くなり。ぬるつくボクサーパンツの上からでもすっかり摘まめるまでになっていた。
「や、やだぁ…ぁあッ、あ…!」
「やだちゃうやろ」
必至の訴えもあっさり跳ね除けられてしまう。それどころか、むしろ神々廻はそんな拒絶の言葉を少し叱るように手の動きを早める。その乱暴な動きでさえ、溢れる蜜のおかげで滑らかになってくれていた。
ボクサーパンツの下で、ぴちゃぴゃと蜜が飛び散る音がする。上がる声も掠れ高くなっていき、ナマエの限界が近いことを示していた。
神々廻はその姿を瞬きも忘れ見つめ。そうして、硬くなった突起を根元からぎゅうと押し潰した。
「ひ、ぁっ──、!?」
強く閉じられていた瞳がぱっと大きく見開かれた。ナマエの身体は大きく跳ね、腰はがくんっ!と浮き上がる。そのせいで、神々廻の手に達したばかりの突起押し付けてしまい。ナマエの喉からは絞り出すように「あ゙、っ…!」と掠れた声が上がった。
余韻に震えていた細腰がベッドに落ちる。弄り倒したそこから手を離せば、神々廻の指先とボクサーパンツをわずかな糸が繋いでいた。
「脱がすで。腰上げ」
ぺちんと軽く腰を撫でて促せば、ナマエは少し反応を遅らせながらも素直に腰を上げた。ただ、力が入らないのか掌一枚分すら上がっておらず、けれど本人的にはそれが精いっぱいなようで。神々廻は少し笑いながら、結局片腕でほとんど支えるようにナマエを支えると、もう片手で器用に脱がせていく。
自分のパンツをナマエが履いているところを見たい、という夢はひとまず叶えられたので、今回はとりあえず満足だ。神々廻は上機嫌のまま、脱がせたボクサーパンツをあっさりベッドの下へ投げ捨て。そうしてそのまま膝裏に手を添え、大きく脚を開かせた。
しなやかな両脚が左右に動き、なにも身につけていない秘部があらわになる。引っ張られたことで開かれた入口の奥では、サーモンピンクのひだが蠢き、どろどろと蜜にまみれている。その秘裂の上には、まだ半分ほど皮を被ったままの突起が健気に勃ち震えていた。
「…えっろ」
こぼすような吐息と共に呟かれたその言葉に、達した余韻でわずかに飛んでいたナマエの意識が呼び戻される。
途端、ぐじゅぐじゅの秘部に感じる、熱を帯びた視線。羞恥に思わずぎゅうと下腹に力がこもれば、空気にさらされたそこが蠢き、またくちゅりと音が響く。それがいっそう羞恥を煽った。
「や、そんな見ないで、っ…」
声を上げ隠そうと手をかざす。けれどそれより、神々廻が身を屈める方が早かった。
「あ、──っ!?」
神々廻は震える突起を躊躇うことなく咥え込んだ。悲鳴じみた嬌声が上がり、ナマエの背がたわみ。隠すことの叶わなかった手は、代わりに金色をぐしゃりと乱す。
「あぁ、んっ!あッ…!あっ、ああぁ…っ!」
わざとらしくじゅるじゅると音を立てながら溢れた蜜を啜り、同時にすっかり充血して張り詰めた突起を、また指の腹でこねてやる。
そうすれば、押さえつけたやわらかい太ももが、神々廻の顔の横でぎくぎくと震え。つられて浮いた足先も宙を蹴り上げ、丸まったり、ピンッと伸びたりを繰り返していた。一度達したせいで限界がすぐにきたらしい。
「ああ、ぁ…、ぁッ…!」
神々廻は顎にまで伝うほど溢れた蜜を大きく啜ると、舌で虐めていたそこに、かり…と小さく歯を立てた。
「ああっ…!?だめ、イッ、あッ!あッぁ…んあっ、あ、あ、〜〜〜ッ!」
もはや悲鳴のような嬌声と共にナマエの背が仰け反り、ベッドから軽く浮き上がる。たいらな腹がぐうとへこみ、同時に、奥からごぷりと粘度のある蜜が溢れてきた。
神々廻は口内に流れ込んできたそれを躊躇いなく飲んでいく。数度喉を上下させすべてを飲み込むころには、髪を乱していたナマエの手は、むしろもっととばかりに絡められていた。
最後にもう一度、突起に吸い付き。神々廻はようやく顔を離す。
「ぁ…はぁ…っ…、は、あ、ぁ…ッ」
解放された秘部は、くぱくぱと閉じたり開いたりしながら、長引く絶頂の余韻に浸っている。けれど散々突起だけを舐めて中には触らなかったからから、肉壁はなにかを欲するように蠢めていた。
しとどに濡れ男を誘う、けれどまだ何も知らないあどけないこの場所を、自らの欲望が割り開いていく。──そう考えただけで、神々廻の脳内には得も言われぬ感覚があふれ出す。まるで薬でもやっているかのような興奮だった。
「ぅ…ん…、っあ…ぁ…、」
自然と荒くなる息をなんとか整えながら神々廻がじっとそこを見ていると、ナマエがふいに、ぶるりと身を震わせた。
にゅぐりと肉壁がわななく。そうして、「あ、…っ!」と小さく鳴き声を上げると同時に、秘部からびゅくっと液体が噴き出した。
「あ、っあ…、ああ、あ……、ッ」
それを皮切りに、秘部からはぴゅくぴゅくと潮が噴き出し。ようやくその勢いをなくすときには、まるで漏らしたかのようにシーツに水溜まりができていた。
「おー…えらいぎょうさん噴いたなぁ」
「あ、ご、ごめんなさ…っ」
「怒とるわけちゃうから、謝らんでええよ」
泣きそうになっているナマエの頭を優しく撫でながら、神々廻は蜜と潮にまみれた入口を撫で上げると、そのまま泥濘へぷちゅりと指を差し込んだ。ぬかるむそこは二本の指を、抵抗なく飲み込んでいく。
「あ、ああッ…ん、ぁ、あ…っ、」
「でも、初めてでこないに出してまうほど気持ちよかったん?」
「あぅ…っあ、んあ…ぁ、」
「なあ、教えてや」
「あ…っ!」
まとめた指で、促すように、ぐりゅと少し強めに壁を抉る。
「っん、あ…!きもち、ぁ、かった、からぁ…ッ!」
イかされて、初めてなのに潮まで噴いて、あげくそれを気持ちいいのかと訊かれて。いよいよ羞恥に耐えられなくなったのか、答えた瞬間、ナマエの眦から涙がこぼれた。雫は湿った肌を、火照る頬の赤をより強調するように流れ落ちていく。
首を、頬を、額に、耳に至るまで。いっそ可哀そうになるほど真っ赤に染め上げるナマエのその様は、神々廻のひどく加虐心を煽った。
神々廻は翡翠の瞳をきゅうと細める。それからナマエに覆い被さると、その耳にぴたりと唇をくっつけたまま、甘やかすように囁く。
「素直に言えて、ナマエはええ子やな」
熱っぽいハスキーな声が、濡れた柔らかな唇が、ぬめる舌先が、耳の縁をなぞる。瞬間、ナマエの肌がぞわぞわと粟立ち、背骨が震える。腹の中にじくじくと痺れが広がっていき、そうして生まれた熱が、切なく胎をわななかせた。
「あ、っあ…、っ?んあ…あっ、ぁ、あッ──っ…!!」
目の前が光り、ちかちかと白く明滅している。
自身の身になにが起きたのか理解できず狼狽するナマエに、神々廻は「ふは…」とこぼすように笑う。
「なんや、声だけでイッてもうたん?」
「っあ、ぇ…?は、はぁ、っあ、ぁ…?」
言われるも、それでも理解が追い付かないようで。ナマエは涙の膜が張った瞳を、困惑と共に神々廻に向ける。
「ほんま、かいらしいなぁ…なに食うたらそないになれるん?」
「た、べ…?あ、わかん、な、ぁ、ッ!あ、んん…っ!」
指をわずかに曲げ、空気を含ませるように動かせば、あ、あ、と高い声が細い喉から押し出される。
「あぅ、ァ、っし、しばさ、ぁ、…ッ」
呼びながら、ナマエが神々廻に腕を伸ばす。縋るように伸ばされたそれに神々廻は身を屈め、細い両腕が首へ巻き付くに身を任せる。
「んー…?どしたん」
「あ、っ、く、くち…ッ」
「口ィ?」
「くち、っ、ちゅーしたい…」
「…ほんま可愛えな」
言われたそれに、神々廻は一瞬わずかに目を丸くする。けれどすぐにゆるりと細めると、応えるように顔を寄せた。
重ねた瞬間すぐに舌を差し入れる。そうして、止めていた指の動きを、今度は素直になれたことを褒めるように、やわく撫でるものへと変える。
腹側のざらついた場所に指の腹を押し付け、くすぐるように揺り動かす。強くはない、けれど的確に感じる場所を揺らすその刺激に、ナマエからは「ん…っ、んん、」と甘い声が漏れている。解れた中は少し窮屈そうにしながらも、既に三本目の指も飲み込んでいて。ばらけさせれば、くぷ、と空気を含む音が聞こえた。
これならもう充分だろうと指を引き抜く。名残惜しさを感じながらも唇を離し濡れた手を拭いながら、神々廻はスウェットを脱ぎ捨てる。そうして、ベッド横のチェストの一番上の引き出しから避妊具をひとつ取り出し。勃ち上がる熱を軽く扱きながら、慣れた手付きでくるくると被せていく。
「初めてやからなあ…俺の全部入るやろか」
ぼんやりと遠くを見ているナマエに再び覆い被さり、力なく投げ出された脚を抱えると、蜜を溢れさせるそこにぐっと腰を押し付けた。
「あ、…?」
その感覚に、ようやく意識が回復してきたらしいナマエがぴくりと反応を示し。とろけた瞳をそこに向ける。
それから、目を見開いた。
──ナマエは処女だ。これまで男性の裸など見たことはないし、仮に子供の頃あったとしても、それはほとんど記憶にないほど幼い頃。もはや"ない"にカウントしても許されるくらいのことだ。
だから、分からない。たった今押し付けられている神々廻のものが平均なのか、それとも平均より大きいのかが、なにも分からないのだ。ただひとつだけ言えることは、へたをすれば自身の掌くらいはあるのではないか、ということだけ。
「どないしたん」
「てのひら…、」
「あ?掌?」
困惑を滲ませた呟きに、いったいどういうことだと神々廻は思うも、その目が自身の屹立に向けられていることに気付き。「ああ、」と思い至る。
「嬉しいお言葉やけど、さすがに掌まで大きくはないなァ」
笑いながら神々廻はナマエの手首を掴むと、そのまま自身の下腹部へと引き寄せ。押し付けている屹立と比べるように横に添えさせる。
「あ、ぇ、え…、」
細い指先が動揺を示すようにぴくりと折れる。そのとき、爪先がわずかに屹立の根元を擦り。神々廻は思わず「ん…、」と声を漏らす。
この行為が始まって初めて聞いた、神々廻の甘い声。ナマエが驚いて顔を上げれば、まるで蜜でも煮詰めたかのようにとろけた瞳と視線が交わった。ひく、とナマエの喉が震える。
「…俺の大きさと形、よぉく覚えてな」
言いながら、神々廻はナマエの手ごと屹立を握り込むと、ゆっくりと上下に扱き始める。ナマエの痴態にすっかり反応していた屹立は、ようやく与えられた刺激に歓喜するかのように先走りをこぼし。擦り上げる度、にちゅにちゅと卑屈な音を立てていく。
「…は、ん…、ぁ」
見たことも、触れたこともないものへの恐怖。それは確かにナマエの中に存在している──はずなのに。
動かしているのはナマエでなく神々廻本人とはいえ、あの神々廻が、自身の手で乱れている。眉間にはしわを寄せ、頬はわずかに赤らみ。吐き出される吐息は感じ入って、ひどく熱を帯びている。ナマエがそこをひどく濡らしたのと同じように、神々廻もまた、ナマエの痴態に、あさましくもそこを、痛いほどに勃ち上げている。
「っ、う…、」
それを見ただけで、そう考えただけで駄目だった。きゅうと腹の奥が疼く。痛いほどのその感覚に、ナマエは思わず屹立から目を逸らしてしまう。
「……ごめんごめん、怖かったな」
枕に擦り付けられた横顔、その頬を涙がぽろぽろと落ちていくのを見て。神々廻は、少し虐めすぎてしまったと、ゆっくりとナマエの手を離した。
「ごめんな」
「ん…、」
濡れた手をシーツで拭ってやりながら、もう一度謝るように、神々廻は涙の滲む眦に小さく唇を落とす。そのまま、つるりとした額、ほてり色付く頬、小さな鼻先。顔中に小さなキスを落としていけば、ナマエの身体からは徐々に強張りが解けていった。
そうして最後に、淡い色の唇を睦言のように軽く触れ合わせると、ナマエが「ししばさん…」と呟くように神々廻の名を呼んだ。なにか言いたげに見上げてくる瞳に、「どしたん」と訊けば、ナマエは少し迷いながらも、「違うんです…」と続ける。
「なにが違うん?」
「…怖いんじゃなくて……、」
「ん…?」
「神々廻さんのが、その…怖いとかじゃなくて…、」
「……」
辿々しくも続く言葉に、ああさっきの気にしてたのか、と神々廻は気付く。あんなのは流れで言ったようなものだから、別に気にしなくてもいいのだが。
けれどたぶん、ナマエはこれまで神々廻と向き合うことを避けてきたという負い目があって。だからこそ、どんなことでもなるべく言葉にしなければと思っているのだろう。それこそ、気にするようなことではないというのに。
というより、むしろそれは悪手とさえ神々廻は思う。
誤解を生まぬよう言葉を選ぼうとしてくれているのだろうが、なんというか、その辿々しい様子が、かえって神々廻を煽っているのだ。
「怖い、とかやなくて……なに?」
思わず悶えて妙な声が出そうになるのを耐えながら訊ねる。けれどそうして吐き出した音はいやに吐息交じりだったし、なんならうっとりとした声でもあった。
けれど必死なナマエはそんなことに気付いていない。なんなら改めて訊かると思っていなかったのか、「え、あ…、」とさらに動揺していた。
「聴きたい。言うて」
神々廻は汗ばむこめかみに、ぴたりと唇を付け、囁く。併せて細い腰にも触れ。しっとりと手に吸い付くやわ肌の感触を楽しみながら、続きを促すように、するすると手を下ろしていく。
くすぐるようなそれに小さく身体を跳ねさせながら、ナマエは必死に言葉を紡ぐ。
「ぁ…これが、は、入ったら…、」
「うん」
「……っ、」
「…ナマエ」
「っどう、なるんだろうって、お、思って…、」
あまりに大粒の涙をこぼすものだから、ほんの少しだけ、虐めているかのような気分になった。いやたぶんほとんど同義だ。
けれど会話の最中、人差し指と薬指で器用にあわいを割り開き、中指で筋を下から上へひと撫でした途端、奥から蜜が溢れ、肉壁は指を飲み込もうと縋ってくる。戸惑う気持ちとは裏腹に、ナマエの身体は神々廻のものを欲している。期待しているのだ。泣きながら触れたそれで、貫かれることを。
ぞく、と神々廻の背中が粟立つ。甘さに重たくなる腰に、はあ、と鼻がかった吐息が意図せず漏れていた。
「…気持ちようなるだけやから。なんも心配せんで平気やで」
言いながら神々廻はぬかるむそこへ先端をあてがう。ぷちゅりと湿った音がして、入口が待ち侘びたとばかりにひくついた。
「あ、ぁ…ッ」
「大丈夫やから。力まんと、深呼吸し」
「んぅ、う…、」
先端部を吞み込んだ秘部は一瞬、張った雁首に抵抗をみせる。それでも少し強引に進めればすぐにそこも呑み込み。あとはやわらかな肉壁が、屹立をぬぐぬぐと喰むように奥へと導いてくれる。
そうして、こつんっと先端が押し当たったの感じ。神々廻はようやく腰を止めた。
「は…あ゙ー…きっつ……、」
「ふ、あ…っ、ぅ」
「平気か?痛ない?」
「んん…へ、ぃき…」
顔が苦痛に歪んでいないことから、平気だというその言葉は嘘ではなさそうだ。ただ眉間にしわを寄せながら短い呼吸を繰り返しているところを見るに、痛みよりも圧迫感の方が酷いといったところか。
痛みがないのは良いが、かといって圧迫感ならば良いというわけではない。どうせなら少しでも、いや溺れるくらい気持ちよくなる方がいいだろう。
とはいえ処女は相手にしたことがないからか、どうしたものか。神々廻は少し考えた後、おもむろに手を伸ばし。繋がる少し上で、まだわずかに皮を被ったままの突起を、きゅむっと摘まみ上げた。
「あぁあ゙、…っ!」
「ん…っ、」
ナマエの身体が大げさなほど跳ね上がり、同時に悲鳴じみた鳴き声が響く。きゅうっと締まった中に神々廻も思わず声を漏らしてしまう。
やはりまだこちらの方が得られる快楽が強いらしい。少しでも痛みを和らげてやりたいと、神々廻はそのまま突起を弄り始める。
「や、っ!ししばさ、ッそれやだ、あぁ…ッ!」
「は…なんで?気持ちええんやろ」
ならええやん、と神々廻は弄る手を止めない。だめとかぶりを振りながら伸ばされたナマエの手が、神々廻の手首を掴む。けれどそこにほとんど力は入っておらず。ただどうしようもなさげに、むしろ縋るように神々廻の手を引っかくだけだった。
「っあ、ん、っ…ぁああっ、あ、ひっ、…!?」
蜜を指先に絡ませながらこねくり弾いたりをしていると、ふいにナマエの目が大きく見開かれる。
なにかに驚いたようなその反応に神々廻が手元を見れば、突起の先端が、先程より見えるようになっていた。濃く色付いたそれに、ああ皮が剥けたのだと気付く。
これは今までの刺激と大きく変わるだろう。ナマエにはもしかしたら辛いかもしれないが、神々廻にとっては好都合でもあった。
とはいえナマエも、これまでと明らかに異なる快感の質に、なんだかおかしいとさすがに察したようで。動揺と不安を滲ませた目を何度も瞬かせている。
「…ナマエ。大丈夫やから、こっち向き」
神々廻は一度突起を撫でる手を止め。ナマエの頬に手を添えると、落とした声で名を呼ぶ。その声に小さく身体をびくつかせたナマエが顔を上げた。その瞬間、奪うように口付け。戸惑う口内にすぐに舌を差し入れ絡ませる。
「んんっ…!ふ、ん、んぅ…ッ」
先端を触れ合わせ、そこから、縮こまる舌を絡め取り、表面を擦り合わせ。溢れる唾液もまとめて吸い上げてやれば、ナマエの鼻から苦しそうに、けれどあまやかな息が漏れ出る。息もまともに吸わせぬままキスをしたせいでうまく呼吸ができないらしい。
「はぁ…っ…ん、し、しばさ、んぅ、…ッ」
すっかりキスに意識を奪われ、ナマエの身体からは徐々に力が抜けていく。それに伴い幾分か締め付けも緩まり。神々廻は気付かれぬよう、頬を撫でる手とは反対の手をゆるりと忍ばせ、健気に震え勃ち上がる突起の先端を、かりっと弾き引っかいた。
「──ッ、!」
甲高い声が神々廻の喉奥へと消える。びくんと身体が跳ねると同時に繋がるそこから、ぶしゃりと勢いよく潮が噴き出た。
「ん…もう噴くの癖になってもうとるなぁ」
唇を離し覗き込む。噴き出た潮は神々廻の腹筋を伝い、下生えを濡らし、そうして再び結合部で蜜と混ざり。互いの股をぐっしょりと濡らしていく。
その様を嬉しそうに見つめながら、神々廻はさらに突起を弄る。かりかりと引っかく度、中は物欲しげに顫動し、まるでおもらしでもするように弱く潮を噴き出していた。
「っ、あ゙…あッ、ひ、ぁ、ああ…ッ!」
ナマエは後頭部を枕に擦り付けながら、細い喉から引き攣った声を漏らしている。かわいそうに、もう声を抑えることも、まして神々廻を止めることもできないようだ。
屹立をしゃぶる肉壁に促されるように、神々廻は止めていた腰を動かし始める。にちゃりと粘度の高い音、肌の間ではあらゆる液が混ざり、ぱちゅぱちゅと弾け打ち付け合う音が響く。
「あ゙、ししばさ、ぁあ…ッ!あ、あ…っ!」
「もう痛ない?」
「んあ、あぅ、あァ…ん、あ、んんッ!」
揺さぶりながら訊くも返事はない。とはいえ反応を見れば、もう応えなんて分かり切っているのだけれど。
ざらつく場所を先端で突き、雁首で擦り。時折突き上げ、触れた奥をぐるりと掻き回す。そうやって、口よりずっと雄弁な中を、屹立すべてで愛撫してやる。
「…初めてやのに俺のちゃんと呑み込めて、中でも気持ちよおなれて」
「んぅ、うっ!あぁ、っあ゙、あ…あん…ッ!」
「ナマエはええ子やなあ」
「あ、ぁッ…!んんっ、ぁ、んッ」
ひどくうっとりとした声が耳元で聞こえると同時に、突起を撫でていた神々廻の手がおもむろに離れていき。ナマエの腹を、そっと撫でた。まるで、ここに入っているのだと自覚させるような、そんな動きで。
あれが、入っているのだ。この手で確かに触れた、硬くて、生き物のように血管を浮かせ、ナマエの痴態に興奮してその身を勃ち上げていた、神々廻のものが──。
「っあ、ああぁ…あッ!い、く…ッいぁ、ああ…、ァっ」
「ええよ」
「やッ、らめ、っ!いっ、ぅあッ!あ、ぁっ…あ、──ッ!!」
「ん゙…っ、」
腹の奥がずくりと疼く。なにかを欲すようにわななき、瞬間、ナマエの視界に強い光が走る。まるで目眩を起こしたかのようだった。
痛いくらいに締め付ける中に腰が震えるけれど、神々廻は歯を食いしばりそれを耐え。代わりに、跳ねる肢体を抑え付けるように上体を倒し、ナマエの顔の横に手をつく。
「っあ、…──!」
そうすれば、繋がったままのナマエの下半身もつられてわずかに浮き上がり。神々廻はベッドとナマエの間にできた隙間に枕を滑り込ませると、そこにナマエの腰を下ろさせた。
「ひ、ぐ、ッ…は、ぁう…、あ、あ…ッ」
自然と上を向いた秘部の中で、挿入されたままの屹立がより深く奥へと入り込んだのか、ナマエの声に苦しげな音が混ざる。
喉から押し出したようなそれに、やはりまだ奥は辛いかと一瞬思うも、ナマエの顔に苦痛の色は浮かんでいない。それどころか、顔はぽわぽわと熱に浮かされたように火照っていて。涙の膜が張り、絶頂の余韻にとろけた瞳が、物欲しげに神々廻を見上げていた。
その顔に、杞憂だったかと神々廻はすぐに改め。ならばとナマエの両脚の膝裏に手を回し抱えると、いっそう押し付けるように腰を進めていく。
「は…ふ、ァっ…!、あ、はあ、あぁ、んうう、ぅ…ッ!」
「奥もよさそうやな」
「んう、おく、っ?ああッ…や、あっ…あ、あん…!」
ナマエは神々廻の言葉を繰り返すだけで、その意味などほとんど理解できていない。ただ分かるのは、自身の腹の奥底が神々廻のものを吞み込もうと蠢いていること。そして神々廻もそれを感じ取っていて。そこに入り込もうと、割り開くように腰を叩きつけてきている。それだけだ。
「ぁ、あ、あっ、あんッ…あ、ああ…!」
神々廻は先端をはめ込むように奥を押し潰し、優しく揺らしながら、円を描くように腰を回す。
そうすれば奥からは、粘度の高い、白く濁った蜜が溢れてきて。ぐちゅぐちゅとやらしい音を立てながら泡立つ。その度、ナマエの視界にはちかちかと白い星が散らばり。涙と混ざりながらこぼれ落ちていく。
「ぁっ、あ…!ししばさ、あッ…きもちぃ…ッ!」
あまやかな声と共にナマエの細い腕が神々廻の背に回される。そのまま縋るように引き寄せられ、汗ばむ肌同士が重なった。
どちらのものか分からぬ心臓の音が、間でどくどくと響く。いっそそこから溶けて、そうして混ざり合っていくような、そんな心地よささえ覚える音。神々廻はゆるりと目を細める。
「せやなあ…きもちええなあ」
「んっ、ぅん…あ、きもちい、っ…!あ、あ…ッ!」
「奥、もっと突いたろうな」
「や、ぁあ…──っ!あ、あああッ…!」
「嫌なん?」
「ちが、っあ、きもち、くて、ぇ…ッうぅ、あああ、ん…っ」
「やったら、なんも問題ないやん…」
なんとも可愛らしい叫びに喉の奥で小さく笑いながら、神々廻はナマエの腰を掴み直すと、一度、屹立が抜ける直前まで大きく腰を引いていく。
わずかに残した先端に、いかないでとばかりに内壁がきゅうきゅうと吸い付いている。突如無くなった刺激に、ナマエが「なんで」とこぼし神々廻を見上げるのと、神々廻が勢いよく腰を叩きつけるのは、ほとんど同時だった。
「ひ、ッ…!?あ、あああ…ッ!」
ぐぷん、と奥にはまる音が、嬌声の間に聞こえる。すっかり開かれた子宮口に先端をはめたまま、神々廻は小さな身体を潰すようにぐっと伸し掛かる。
あまりに強い快楽に抵抗したくとも、神々廻の手が膝裏に添えられているため脚を閉じることは叶わず。かといって這って逃げようにも、そもそも体重を掛けて伸し掛かられているため土台無理な話で。逃げ場なんて、ナマエにはどこにも残されていなかった。
「んっ、あ゙ッ…!ああ、ぁ、ぃく、いくっ…ぃ、ああ、あ、〜〜──っ!」
「は…ええ顔やな」
眉間にはしわがより、けれど眉尻はひしゃげ下がり。汗で髪がやらしく張り付く肌を、こぼれた涙がさらに濡らしている。
いや、むり、いく、とうわ言を繰り返し、中が蠢き締まる。蜜なのか潮なのか、もはやどちらかも分からぬ液が、まるで漏らしたようにシーツに染みを作っていた。
「し、しばさっ、や、…ッ!も、あ゙、イってる…!いってるから、ぁ……ッ!」
いっそ可哀想になるくらいの叫びに神々廻は小さく「うん」とだけ返し。逃げを打つ身体を押さえ付け、自らが達するためだけに動き続ける。気遣いなんてものはもはやかなぐり捨てていた。
「はぁ…、あ゙ーあかん、出る…、ッ」
神々廻は低く掠れた声でそう呟くと同時に、ぶるりと腰を震わせ。我慢に我慢を重ねた熱を、ようやく吐き出した。
「や、あ…っあ、ああ……ッ、ァあ……、」
どくどくと腹の中が熱で満たされていくような感覚がナマエを襲う。避妊具に阻まれ、それはあり得ないということは分かっている。だけど、もし、これが中に出されていたら──そう考えただけで、ナマエは腹の奥がまた、切なくわななくのを感じた。
「ん、ぅ…っ」
最後まで出し切るよう振っていた律動が徐々に収まり。すっかり硬さのなくなった屹立が、ずるりと引き抜かれた。
散々好き勝手していたものが無くなり、腹の中がぽっかりと開いたような、妙なもの悲しさ。それにナマエが、はふ、と思わず鼻がかった吐息を漏らせば、呼応するように頭のてっぺんからつま先まで、甘い痺れがぴりぴりと走る。それにまた腰が震え、吐息が漏れ出る。ナマエは目を閉じ、とにかく落ち着きたいと深く息をする。
そうしていると、神々廻がおもむろに、ナマエの背とベッドの間に片腕を差し入れてきた。起こしてくれるのかとナマエはそのまま気怠い身体を委ねる。
けれどなにを思ったか、神々廻は浅く上下する胸に顔を寄せると、突起にちゅうっと吸い付いたのだ。
「ぅあ…ッ!あ、なにっ、ぁ、んんっ…!」
舌先で乳輪をなぞるように円を描き、唾液を絡めながら吸い付き、飴玉のように弾き転がす。
そうして吸われていないもう片方の胸も、いつの間にか添えられていた手に揉まれながら、突起を少し痛いくらいの力加減できゅっきゅっと摘ままれている。何度も達した身体には強すぎる刺激だった。
「あ、や、あぁ、あっ…ぁんっ…!」
「…最初んときも思たけど、自分、えらい胸敏感やんな。ここだけでもイけるんとちゃう?」
神々廻の視界の端で、ピンッと伸びた足先が、丸まっては開きを繰り返しながら宙を泳いでいる。
さっき見つけた、ナマエが達するときの癖。
冗談半分のように発した言葉がもはや冗談で済まないことを、神々廻はとうに察していた。
「やぁ、あ、あぁ、アっ、あっああ、〜〜〜…──ッ!」
口内に溜めた唾液を突起に絡ませ、じゅっとわざとらしく大きな音を立て吸い上げる。瞬間、ナマエの全身が小刻みに震えた。
「えっろい身体やで…ほんま、堪らんなあ」
顔を上げた神々廻は、みっともなく開いたまま「あ、あ…」と余韻をこぼす口を塞ぐ。すぐさま舌を差し入れれば、ナマエはとろんとした目のまま、自ら舌を絡めてきた。
ほとんど力の入っていない小さな舌を掬い上げ、くちくちと舐る。最中、すっかり熱を取り戻していた屹立を柔らかい内ももに擦り付ければ、「んう、っ」とナマエの鼻から甘ったるい息が抜けていった。
「……ナマエはええ子やから、まだ気張れるよな」
神々廻は手元を見ぬまま着けっぱなしにしていた避妊具を外し、引き出しから今度は数個まとめて新しいものを取り出す。
顔の横に散らばった未開封の避妊具たちに、ナマエは無意識のうちに喉を上下させる。想像しただけで全身がとろけていくようだった。
「ししばさん…、」
返事の代わりに、ナマエは投げ出していた四肢を神々廻の分厚い身体にするりと絡ませる。甘えるように寄せられ重なった唇に、翡翠の瞳がゆるりと弧を描いた。
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