広い体育館に大好きな音が響いている。
 差し込む陽の光に少しだけ目を細めていると、ちょうど監督からカーテンを閉めるように指示を受けた。 「今日は眩しいですよね」なんて世間話を振ると監督が小さく笑って「そうだな」と優しく返してくれたのが嬉しくて、にこにこと笑ってしまった。 部誌を隅っこに置いてから梯子を上ってギャラリーのカーテンを閉めていく。 端っこまで閉め終えて、今度は反対側のギャラリーへ行こうと方向転換する。 そうして一瞬だけ視界が体育館でいっぱいになると自然と視線は下へ向いた。
 キュッキュッとシューズが擦れる音。 ボールが床にぶつかる音。 きれいにレシーブできたときの音。 部員たちの掛け声が響き、監督が檄を飛ばす声が響き渡る。
 そっと瞳を閉じても目に浮かぶ光景に、柵を握っていた手に力が入った。


鏡の向こう側へは行けない prologue

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