「うぅ……」
ITOKANにあるソファーで膝を抱えて座る麗依の表情は暗い。
「麗依どうしたの?珍しく落ち込んでるけど?」
麗依の落ち込み様にノボルは知っているであろうナオミに尋ねた。今の本人に聞いたところでまともな返答があるとは思えない。
「この間、コブラと話してやっと決心はついたみたいでさ」
「やっとかあ、それは良かった」
でも何で落ち込んでるの?まさか日向が?と笑顔で少し不穏な雰囲気を出し始めたノボルにその場にたまたまいたテッツは震えた。ナオミは麗依を呆れた目で見て一言。
「どうやって話しかければいいのかわからないんだと」
「今まで話しかけてたのに?」
「最初は一方からだけで、その後は逃げてたから向き合うとなるとどうしたらいいのかわからない、ってさ」
なるほど、とノボルは頷いて麗依に近づいき頭を撫でた。
「麗依」
「うぅ…なに……」
「恥ずかしいんだね?」
「っっ???!!!」
ガバッと顔をあげた麗依は目を見開いてノボルを見た。
「そ、それはっ!」
「今までは見ないふり気づかないふりをしてたけど直面したら急に恥ずかしくなったんだろ?」
「う…」
「逃げ道になってたコブラから後押しされたら逃げられないしなあ……困ったね」
「う、うぅ……」
半泣きの麗依に笑顔で事実を突きつけるノボルにテッツは恐怖を覚えた。
ノボルさんこえぇぇ……
「だ、だってぇ……目の前にしたら何話せばいいのかわかんないし…」
「告白すれば?」
「ハードル高すぎるっ!!」
「いや、目の前で好きだなあって言ってたじゃないですか」
「うるさいテッツ!今となると何であんなこと言えてたのかさっぱりだよ! 」
「恥ずかしいこと言ってるなあ、とは思ってた」
「わぁぁぁっ!!過去の私を殴りたい…というか代わりたい…どうやって会話してたかもわかんない…」
ぐしぐしとまた膝に顔を埋めてすすり泣きを始めた麗依。麗依のこんな所を見たことがなかったテッツはコブラさん呼んだ方がいいかな、とスマホで連絡しようとするとノボルがそれをとめた。
「え、でも…」
「今こいつに必要なのはコブラじゃないよ、というかコブラが来たらいつまでも進まないし」
「コブラは何だかんだ言って麗依に甘いから突き放せないしな」
「それってどういう……」
ことか、続くはずだった言葉は外から聞こえてきた排気音に遮られた。よく山王街で聞こえるものではないが聞き覚えのある排気音にテッツはまさか、とノボルを見た。ノボルはニコリと笑う。
「こういうときは荒療治が一番」
ITOKANのドアを蹴破る勢いで入ってきた赤い羽織は店内を見回すと、音に驚いて顔を上げた麗依に目線を固定した。
「え」
「お礼はいらないよ。でも泣かしたら取り返すから」
「え」
「ハッ…覚えといてやるよ」
「え」
ゆらりと麗依に近寄ると麗依を抱き上げて二人はITOKANをあとにした。混乱した頭の中にはニコニコしていたノボルの笑顔が残り、ようやく気づいた。
あ、はめられた。
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