あぐらをかく日向の膝に横向きで座る麗依の顔は真っ赤で目には涙が浮かんでいた。恥ずかしいから下ろして欲しいと頼んでも聞き入れてもらえず耐えるしかなかった。
「〜〜〜っ」
耐えている麗依の髪を弄る日向は口角があがっており、達磨一家の面々が見れば目を見開くぐらいには機嫌が良かった。
「なあ……あんな日向見たことねぇんだけど」
「安心しろ、俺らも見たことねぇよ」
「日向でもあんな顔するんだな」
心配になりそっと覗きこんだ加藤と饕餮兄弟は今世紀最大レベルの衝撃を受けた。正直いって焦れていた日向が襲わないという保証は無く、もしそんな雰囲気があったら去ろうと決めていた三人だったがいつまで経ってもそんな雰囲気は訪れない。むしろ穏やかで何となく甘い雰囲気が漂い、見たことないほど日向の機嫌は良かった。
「これなら安心だな」
「だな、っておい右京だれに連絡してんだよ」
「山王のノボル」
「だれだ?」
「あー、元九龍のひょろいやつか」
「ああ…どうなったか教えて欲しいって言われたからな」
日向が麗依を問題なく浚えるようにセッティングしたノボルには詳細を教えるべきだろうと右京は現在の状況を送る。
コンテナ街の一件からトップだけでなく他の面々も連絡ぐらいは取り合うようになっていたため連絡先は知っていた。
「これで日向の機嫌しばらくは良いな」
「わかんねぇぞ、あいつ結構独占欲強そうだからなあ……」
「このままここにいるんなら俺らも安心なんだが…無理だな」
「違いねぇ」
あの山王大好き、コブラ大好き人間が日向と付き合ったからといって山王を捨てるはずがないと小声で笑っていると、ゾクッと背筋が震えた。おそるおそる中を見ると、鋭い眼光がこちらを見ていてすぐに襖を閉めた。
「やべぇな、バレた」
「あー……麗依がいるうちはいいけど帰ったあとがなあ」
「まあ帰るまでにはなんとかなってるだろ」
見ていた三人に日向は最初から気づいていた。特に気にはしていなかったがあまりにも長く覗いていたため追い払った。三人が想像していたことは日向の頭にちらりと過ったがすでにいっぱいいっぱいな麗依にこれ以上何かを強要することはない。時間はたくさんある。
泣かしたら取り返す、ノボルの言葉を思いだし日向は口角をあげた。
「――――」
「ぅぅ……ん?日向何か言った…?」
「なんもねぇよ」
「そっか………で、あの、そろそろ」
「うるせぇ」
日向は麗依の腰を抱えなおし目を閉じて寝る態勢に入る。
「えっ?ちょ、このまま寝るのっ?」
「……」
「ちょ、日向っ?」
そのまま意識を落とした日向にどうするべきか悩んだ麗依はうろうろと視線を泳がせ、最終的に日向の肩に顔預けた。
達磨ベイビーズの風太と雷太は加藤に駆け寄った。
「加藤さん!」
「どうした」
「さっき頭のとこ行ってきたんすけど」
「いま、客来てるから近寄んなっつったろうが」
詳しくは話してないがさすがに近寄ることは無いだろうと思っていた加藤は呆れ顔で二人を見る。が、特に何のケガもしていないことに首をかしげた。
「ケガ、はねぇな」
「その…頭が寝てて…」
「毛布とか持ってった方がいいかと思ったんすけど…」
「日向ならだいじょ…あー、あいつもいんのか」
日向はどこでも寝るうえに毛布などが無くても滅多に体調を崩すことはない。そのため心配はしないが麗依は別である。もし、ここで風邪をひこうものならあとで山王から苦情が届く可能性がある。それは避けたい。
「あとで持ってくわ、わりぃな」
「いえ!」
毛布を持っていたさきで珍しいものを見た加藤が思わず写真をとり、グループラインに載せ、それが広まることになるまであと…………
→