「ふんふんふーん」
ITOKANでいつもどおりテッツとダンさんと話していると麗依さんの鼻歌が聞こえてきた。テッツ曰くノボルさんの計略により麗依さんと日向は無事付き合うことができたらしい。そのためこの最近の麗依さんの機嫌はとても良くて、俺とテッツは度々奢ってもらった。前から奢ってもらうことはあったけれどここ最近はほぼ毎日奢ってもらっている。申し訳なくなるけどありがたい。
俺とテッツだけが奢られてダンさんが文句言ってたけど麗依さんが黙らせてて、かっこよかった。
「麗依の機嫌めっちゃええな」
「そっすねー」
「とうとうLINEのID教えてもらったみたいですよ?でも送ろうにも何を送るか迷ってまだみたいですけど」
「日向も送るようには見えへんからなあ……麗依が送らなやり取りとかないやろ」
「まず日向はスマホを携帯しないみたいです」
「テッツなんでお前がそんなこと知ってんねん?」
「ノボルさんから聞いたんすよ」
「ノボルさんって何でも知ってますよね……」
山王連合会一の情報担当であるノボルさんは色んな所から情報を得ている。俺たちの知らないことを知ってるし、正直言って俺の知られたくないような秘密まで知ってるんじゃないかとも思う。あの人なら知っててもおかしくない…。
「ノボルなら何でも知っててもおかしくないなあ…違和感ないわ」
うんうんと頷くダンさんのこういう楽観的というか空気読めないところというかちょっとずれてるところは本当に尊敬する。見習いたくはないけど。
「あんた達そうやってノボルのこと言ってるけどそれすらノボルにバレてたりして〜」
「や、やめてくださいよっ?!」
「本当にありそうだから怖いんすけどっ?!」
「というか聞いてたんかいっ!」
「この距離で聞こえないわけないでしょ、ねえ?」
「丸聞こえだったな」
麗依さんだけでなくナオミさんにも聞こえていたらしく、呆れた目で見られた。ちょっと恥ずかしい。
というか、本当にノボルさんが出てきそうでこわい。あの人、ひょっこり現れそうだからなあ。
「呼んだ?」
「「「うわぁぁぁぁっ?!?!」」」
「そんなに驚かなくてもいいじゃないか 」
いつの間に来ていたのかニコニコとしているノボルさんが俺たちの背後にいた。正面にいたダンさんも気づかなったらしく椅子から転げ落ちている。
「ど、どどどどうやって入ってきたんやっ?!」
「どうって、普通にドアからだけど?」
「全然気づかなかった…」
「ノボルさんって本当は忍者なんじゃあ…」
「やだなあ〜、そんなわけないじゃないか」
「ノボルならあり得そうだな」
「それじゃあ、殿は盾ちゃんで侍はヤマトかな?ナオちゃんはお姫様」
「はあ?あたしはそんな柄じゃないだろ」
たしかにコブラさんは殿様でヤマトさんは侍っぽい。ナオミさんはこのITOKANの店長だし、コブラさん達が守ろうとしているものだからお姫様ってるのは合っていると思う。でもナオミさん本人はそういのはあまり好きそうではない、実際嫌がってるし。そう考えていると麗依さんがニヤリと笑った。
「あ、そっかあ、ナオちゃんはヤマトのだもんねぇ〜」
「なっ?!」
「ははっ、たしかにそうだね」
「くっ、悔しいがそこは認めるしかないなっ!」
「っ、お前ら出禁にするぞっ!あと麗依はアイスティー禁止っ!」
「えっ?!ご、ごめんナオちゃんっ!それはそれだけはっ!」
「ごめん、ごめん」
慌てて麗依さんはナオミさんに謝っているがノボルさんは朗らかに笑ってる。ダンさんはボソッと本当のことやんかと言ってるがそれ聞かれたら俺たちまで巻き添えくらうんでやめてください。
「腹減ったぁ…オムライスくれ」
「うるせぇハゲ!」
「ンだとブス!」
運がいいんだか悪いんだかちょうどヤマトさんがやってきて、いつもの二人の言い争いが始まった。夫婦喧嘩は犬も食わない…下手に入るとこっちに飛び火するからこういうときは静観するのが一番。
「……またか」
ヤマトさんの後ろからコブラさんがやってきて二人を見てから近くのソファーに座った。するとすぐに麗依さんがすすすと寄ってきてコブラさんの隣に座る。
「どうした?」
「んーん、ただ盾ちゃんは優しいなあって」
「……」
首を傾げるコブラさんだったが、それには俺も同意したい。騒ぎを起こしたうえに騙してた俺を見捨てることなく助けてくれてそのうえこうして居場所まで作ってくれたコブラさんは優しいと思う。
「直接は聞いてないけど、発破をかけたの盾ちゃんでしょ」
「……」
「無言は肯定と受け取るよ」
発破?なんのことだろ?テッツを見てみるがテッツもわからないらしく二人で顔を見合せて首を傾げた。
「心配かけてごめんね」
「……気にしてない」
「でーも!言いたかったの!」
「そうか」
とにかく麗依さんと日向が付き合う過程にコブラさんも関わっていたらしい。山王でコブラさんに助けられなかった人いないんじゃないかな。
「あとお礼なんだけど……」
すっ、と麗依さんが取り出したのは何かのチケット数枚。
「スイパラの割引券、1枚につき最大3人まででここには3枚あります」
「!」
コブラさんがピクリと反応し、麗依さんは満面の笑みを浮かべる。
「一緒にどう?みんなでさ」
後日、ナオミさんも含めてスイパラに行きめちゃくちゃ食べた。ヤマトさんの食べる量は相変わらず凄かったけど、負けず劣らずコブラさんも、スイーツ食べててビビった。そのときの写真をテッツがインスタにあげたせいで色々あったけどとても楽しかった。
余談だが、俺とテッツはノボルさんの驕りだった。ありがとうございます!!
「なんでお前らだけ奢りなん…」
「二人は最年少だからね」
「かわいいから奢りたくなる」
「俺だって可愛いやろうがっ!」
「鏡見てから言ってくれる?」
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